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 今月の特集 繁盛を呼ぶ!お店づくりの心理学(2/3)面
-お客様の行動を先取り、繁盛に役立てる-
今月の特集キーワード  
  空間的広がりと距離が人に与える心理的影響とは 1面
  テーブルの形、座る位置にもワケがある 1面
  色で左右される?人間の食欲や体感温度 2面
  おいしい比率は5:3 2面
  ボディランゲージが送る心へのメッセージ 2面
  メニュー提示は「クライマックス法」か? 「アンチクライマックス法」か? 2面
  キーワードは、1,好意 2,希少性 3,権威 2面
  同調行動 2面
  ポジティブな心理状態は注文意欲を湧かせる 3面
  「誉めて育てよ」はこどもに限らない 3面
  スタッフの心にそっと踏み入れる説得の仕方とは 3面


赤が基調のエントランス。食欲をわかせる工夫だ
色で左右される?人間の食欲や体感温度
 色も心理に働きかける重要なファクターである。闘牛士は赤い布で牛を興奮させるし、最近では赤い下着を付けると、元気パワーがみなぎるという話も聞く。周囲の異性の視線の温度が違うというサイド効果もあるとか。少なくとも色は人間の心や身体に何らかの働きかけをするらしいことは、心理学者でなくとも分かる。
 カラーアドバイザーの鹿毛三津子さんは 「同じ室温・湿度の部屋でも赤やオレンジを配した部屋は体感温度が3度高く感じられ、逆に青系のインテリアの部屋は3度低く感じられるのです。また、赤やオレンジには食欲を増進させる効果があるんですよ」とおっしゃる。実際、赤やオレンジは暖色、青や青緑は寒色という言い方をする。
 看板に赤や黄色を使ってあるファーストフード店や、赤提灯についつい立ち寄ってしまうのは、こんな暖色効果によるものだ。 「明るさ」、「色」という観点からみて、照明も、人の行動に影響を与える重要な要素。
 どちらかと言えば、スナックやバーは、食事を大勢でにぎやかに楽しむというよりは、少人数で濃密な会話を楽しむ場所と考えられている。だとすると、「暗い照明」は心理学的に理にかなっているのである。
小物はピンクを浮き立たせるカラーにしている ピンク色の店内は猥雑感と温かみが融合、暖色系は体感温度もを上げるという
 ある行動心理学の実験で、男女半々のグループを狭い部屋に閉じこめ、照明の明るさとコミュニケーションの変化を調べたところ、明るい所では当たり障りのない会話をしていたのに、暗くなると会話が減り、場所を移動して身体を密着させたりするようになるという。この行動の変化は、心の働きから捉えると、暗さを察知した視覚が遠い昔の胎内での記憶を呼び覚まし、大人としての「取り繕った外見」を取り払ってしまったということになる。照度が「社会」と「自己」とのバランスに心理的に関係している顕著な例である。
  また、食卓の明かりは白熱灯を使った方が良いと言われるが、これにも理由がある。白熱灯はたいまつの光に近い自然な明かりだ。料理や食器の本来の色を生かし、光沢を与える光なのだ。
 逆に蛍光灯は、厨房など、作業する場に用いれば効果的。前出の鹿毛さんは「白熱灯はやすらぎの色、蛍光灯は活動の色と言われています」とおっしゃっている。
赤ちょうちんは暖色系の極み。郷愁もわき、人が引き寄せられる 赤い看板は人の気持ちを浮き立たせる
 案外、白熱灯どころか、たいまつの光のもとでステーキ……などという趣向に、人間の本能に訴えるアプローチがあるのかもしれない。意外な集客効果に期待したい。

おいしい比率は5:3
 料理の盛り付けや、かたちには、「おいしそう!」と思わせる型があることをご存知だろうか?
 人間が本来持っている美的感覚にピタッとくるのが、縦横5‥3の比率(黄金比)の長方形だという。名刺、国旗、ハガキなどの型がそれに当てはまる。なんとなく安定感を醸し出す型なのである。コロッケなども、この比率に限りなく近い楕円形だったりすると、人間の食欲にピピピッと訴えかけるのだそうだ。
 お客様に出す実際の料理はもちろんのこと、メニューの写真もコロッケやハンバーグ、豚カツ、お好み焼き、ピザ、などなどを5‥3の比率で載せてみたら、お客様の食欲をそそり、注文率アップにつながるかもしれない。


ボディランゲージが送る心へのメッセージ
 深層心理学の世界ではボディランゲージが心理に与える影響は大きいと言われる。接客時の態度はお客様の快感や不快感を作用する。ここではポイントをいくつか挙げてみる。
 目を見て話すのは大切だというのは小学生でも良く知っている。相手に視線を合わせると自分の関心を伝える効果と相手の関心を引き付ける効果があるからだ。だが、10秒以上見つめるとそれは「支配」、「威圧」を意味することになる。すると、相手は怯え、不快感を露にするので注意が必要だ。
 また、意外な感じがするかもしれないが、身体の前方で話に合わせて手を動かすのは相手に尊大な印象を与えるのだそうだ。何かを説明するときに、手で形や大きさをを示したりしがちだが、心理学的にはお客様にちょっとした恐怖感を与えることになりかねない。ただ、相手を説得させる必要があるときには話に力強さを与える効果もある。これらはうまく使いこなすことが大切だ。
 立つ位置も重要。お客様の正面に立って会話するのは礼儀正しいと思いがちだが、かえって相手は息苦しく感じるもの。心理学的には、はす向かいに立つのがいい。自然に視線をそらすこともでき、リラックスできるそうだ。


同じ料理でも
皿の色を替えることで
変化が生まれる
メニュー提示は「クライマックス法」か? 「アンチクライマックス法」か?
 お客様のタイプ別に効果的なメニュー説明をしてみよう。最近はソムリエが監修となっている通信講座もあり、ワインやチーズに「一家言」ある人も少なくない。飲食店にも「うんちく系」のお客様は増えてきているようだ。そういうお客様は飲食店のメニューを見て、魚や野菜の産地、また料理に合うワインやお酒を知りたがったり、こだわったりする。そんなお客様には「クライマックス法」でサイドメニューやオードブルなどから順番にお店の特色の説明を。伝えたいことは最後に持ってきて、細部から順番に説明するプレゼンテーションの方法だ。ここぞ、という頃合いを見計らってお店イチオシの特色あるオススメの高額なメニューを呈示すれば、案外素直に応じてくれるかもしれない。  反対に「とりあえず定食ものを」という、どちらかといえば、せっかちなお客様もいる。そんなお客様にはまず、大事な事を最初に説明してしまう「アンチクライマックス法」を。回り道せず、初めに薦めたいメニューを呈示してしまおう。  いずれにしても、お客様のタイプを見分けるのはスタッフの経験と直感次第といえる。そして、お客様が心地よくメニュー選びができればシメたもの。ここで大切なのは「自分が選んだ」と思わせることなのである。

お客様とのコミュニケーションで心をつかもう
接客態度は、リピーターをどれだけ獲得できるかの重要な鍵。また、プレゼンテーションはどんな仕事においても大事な要素だ。飲食店の場合、テーブルにつき、メニューをあれこれ選んでいるお客様へのスタッフの応対ひとつが、その後にお客様が、いかに心地よく店内で時間を過ごせるかを決めるのである。
「頼んでよかった!」と思わせるメニューのすすめかたに、ちょっとした心理学的な「コツ」がある。では、お客様と従業員を繋ぐ、接客のコミュニケーションを心理学的側面から検証してみよう。
店内宣伝は心理的効果を狙って
 世の中、広告とキャッチコピーにあふれている。テレビ・新聞・ラジオ・インターネットのバナー広告etc。これだけあふれていても、人の記憶に残る、また「買いたい」と思わせる広告宣伝というのはわずか。人の心をつかむ広告には理由がある。普段、やみくもにしていたかもしれない店内PR法も、心理学的アプローチをすると意外な効果が期待できるかも。
キーワードは、1,好意 2,希少性 3,権威
 人が説得されやすくなる要素はこの三つだという心理学の考え方がある。1の好意とは、簡単に言えば「好きな人に頼まれると嫌といえない」ということ。外見的魅力のあるホステスさんにお酒を勧められ、ついもう一杯注文という経験は男性ならあるだろう。これは「ハロー効果」とも呼ばれる。ある人に良い面があることが分かると他の面もよく見えてしまうという心の働きのことなのだ。
メニューは斜めから渡すと好印象を与える。立ち位置が肝心
 2についてはよくあるのがスーパーなどのタイムサービスの「限定○個○時までの特売」というヤツだ。ある商品に時間・空間・物理・数量などの規制があり、なかなか手に入らないという情報がある。すると、短絡的に「皆が欲しがっている魅力的な商品だ」と思いこんでしまうということで、限定商品に弱いという心理をついたものだ。飲食店でも「限定20皿」などとすれば、希少商品への飢餓感を煽ることができる。
シェフの自慢メニューと銘打ち「権威付け」。これが注文増に結びつく
 3の権威。たいてい人はこれに弱い。一国の首相や大統領などに払う敬意は持ち合わせていなくても、昼間の奥様向けワイドショーなどのテレビ番組で「○○大の○教授」がある食材について「△によく効く」と言うと、思わず信じ込んでしまうというのがそれ。実際、その食材がTV放映日にはスーパーの売り場からなくなってしまうということがよくあるのだ。
 飲食店だったら、「シェフのお薦め」メニューを作る、松阪牛を使用、××産有機栽培の△を使用などと謳う、単に赤ワイン、白ワインとメニューに載せるのではなく、産地や銘柄にこだわったりするのも立派な権威付けといえるだろう。それこそ、ヘルシーメニューを作って「TVで放映された」などと一言添えるのも効果的。また、現代では雑誌や新聞など、マスコミに紹介されたというのも大きな効果を生む「権威付け」だ。


店内を持ち回り販売している例。「同調行動」に訴えかける
同調行動
 赤信号みんなでわたれば怖くない……というのが昔流行ったが、人は「他人がやっていることを無意識になぞってしまう」もの。心理学ではそれを「同調行動」という。飲食店では他のお客が注文した料理が目の前を通って行くと、同じものを注文する客が多いと聞くが、その心理が働いたものである。例えば目玉商品やおすすめメニューのオーダーが入ったとする。その商品をうまく売りたいと考えたとき、オーダーを受けるタイミングにその心理を利用するのである。一本注文が入ったら、厨房に大声で伝える、また、客の多いテーブルの合間を縫って料理を運ぶなど、「同調」を促すアクションを店側が起こすのも宣伝方法の一つになるであろう。
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