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 2003.8.2  
 その芸術的センスが光るお菓子を求めて、熱狂的ファンが、関東圏はもちろん、 全国から足を運んでやって来るカリスマパティシエがいる ——辻口博啓氏。
 「モンサンクレール」をはじめ、都内に3店舗ある洋菓子店のオーナーシェフだ。
 数々の輝かしいコンクール受賞、相次ぐ話題の出店とマスコミにも引っ張りだこの彼。
 だがそれでも、周囲の目にプレッシャーを感じることはないという。
 インタビューが進むにつれ、むしろそれをバネにし、自分の信じる道を突き進んでいる様子が伺えた。
 辻口氏は、パティシエの枠に納まらない、向上心に満ちたチャレンジャーだった。


● プロフィール
辻口 博啓(つじぐち ひろのぶ)氏
 1967年、石川県で和菓子屋の長男に生まれる。18才の頃より、都内のフランス菓子店をはじめ、フランスのラングドック地方のMOF(フランス最優秀技術者)である「パティスリー ベルダン」で修業を重ねる。その間、4度の世界大会に日本代表として出場し、優勝経験を持つ。1998年、パティスリー「モンサンクレール」のシェフパティシエとなり、2002年、ロールケーキ専門店「自由が丘ロール屋」をオープン。今年4月には、話題の六本木ヒルズにショコラトリー「ル ショコラ ドゥ アッシュ」をオープンし、連日行列ができるほどの人気ぶりを見せている。また、各企業、流通向けのデザート、ドリンクなどの商品開発とプロデュースや、お菓子教室の講師、イベント、講演、テレビ番組出演と幅広く活躍中。
和菓子屋の長男が目指したのは、
洋菓子職人!


 石川県七尾市。辻口氏はこの自然あふれる土地で、老舗和菓子屋の3代目という恵まれた境遇に生まれた。小さい頃から毎日和菓子を作る祖父や父の背中を見て、将来は家業を継ぐものだと当たり前のように思っていた。
 ところが、そんな約束された将来を覆す出来事が起こる。
 小学校3年生の時に招待された、友達の誕生日会でのこと。
 初めて“ケーキ”というものを口にした瞬間、「こんな素晴らしい食べ物が世の中にあったのか」と驚いた。これまで、家業ゆえにおやつと言えば和菓子しか知らなかった少年に、甘いクリームやスポンジのやわらかな食感は、衝撃的だった。

 「これがきっかけですっかりケーキに魅せられ、パティシエを目指そうと決意しました」
 そう語る辻口氏の横顔に、少年時代の面影が重なった。
 

  取材・執筆 細田 淳子 2003年8月4日
 

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