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メディカル・レストラン

メディカル・レストラン

第1回「ヴィノ・ヒラタ」

01.25
現役の医師が、健康になれるグルメ情報をお伝えします

『健康×美食ラボ』所長
医学博士 岡野喜久夫

岡野内科診療所院長
東京都港区新橋1-18-14
三洋堂本館ビル8F
03-3502-8060

《略歴》
・昭和31年生。
・昭和56年 日本大学医学部卒。
・昭和60年 日本大学大学院卒。医学博士。
・昭和62年 富士岡記念病院副院長。
・平成2年  赤坂見付前田病院内科部長。
・平成6年  日本医師会認定内科医。
・平成9年  岡野内科診療所開設。同院長。
・平成9年  日本医師会認定産業医。
・「より良き医療を提供する医師の会」会員

このコラムは東京都港区にあります「健康×美食ラボ」から皆様に発信しております。

さて、『病は口から入り、禍は口から出る』という諺があります。
病原菌などが口から入り病気を引き起こし、軽い気持ちで言った事が取り返しのつかない事を引き起こしてしまう。両方注意すべし。なかなか含蓄のある諺です。

鳥インフルエンザが騒がれている今日ですが、ウイルスなど口から入る病原物質だけに注意をしていればそれで病気にならないのでしょうか?毎日毎日口から入る食べ物はどうでしょう?

油っこい物や甘いものばかり摂取しバランスの悪い食事をしておりますと生活習慣病に知らぬ間になってしまいます。人は55歳になる直前に生後2万日目を向かえます。という事はミルクの時代は抜いても一日3回食事を取りますと5万回以上している計算になります。チリも積もれば山となる。

現代社会では長期間で考えますと口から入る病原菌よりも食事に気をつけないといけない時代なんですね。

この企画は、「健康×美食ラボ」所長の岡野他スタッフが左手にフォーク右手にメスを握り巷のレストランをかたっぱしから料理して、皆様にとーーっても美味しいお店を紹介します。

そしてラボに於いてその日の食事内容を検証し、身体に良い食べ物、食べ方を皆様にお教えし、最終的に美味しさと健康とをコラボさせるものであります。

医学的知識だけでなく、時にはラボの名に違わず私およびラボスタッフを実験台にして食事した翌日の採血検査など医学的な実験も行います。毎回読んで頂ければ、美味しいお店の情報はもとより医学的な知識も勉強できて益々健康になれる・・まさに人生に何倍も役だつ読み物です。

読みやすくするために少々(?)オヤジギャグも入っておりますが内容は『最新のサイエンス情報』に基づく真面目な内容です。

さて「メディカルフードレポート」に登場しますレストランは、

  1. 本当は教えたくないお店ばかりです。味はラボ所長が保証いたします。
  2. 味を考えればコストパフォーマンスは大変よろしいですが全てお安いと言う訳ではありません(*1)
  3. 登場するお店はラボのあります東京が中心になります(*2)

(*1)安いジャンクフードやファーストフードには身体に優しいメニューはないと思われ、身体が気になる40歳ぐらいからの方には是非とも少々お金を出しても健康に良い食事を摂取して頂きたく思います(悪い油、古い油、安い酒は肝臓などの内臓を壊しまっせぇ)

(*2)読まれている方の中には東京から遠く離れている方もいらっしゃると思います。しかしこのコラムを読んで勉強して頂ければご自宅や家のお近くのお店でも必ずや似たヘルシーフードを組み立てれるはずです。

「健康×美食ラボ」の選んだ第一のお店『ヴィノ・ヒラタ』

「ヴィノ・ヒラタ」

1993年にオープンした同店は、石川シェフによる本格的なイタリア料理が楽しめる人気のワインバー。同じ建物の3階には、東京のイタリア料理店の老舗「クチーナ ヒラタ」がある。

(住所)東京都港区麻布十番2-13-10エンドーBLD.2F
(電話)03-3456-4744
(営業時間)6:00pm - 2:00am
(定休日)日曜、祝祭日

健康に良い食事をサイエンスするお店の第一号として和食店から開始する事はあまりにも安易であり、あえてイタリアンを選びました。

「ヴィノ・ヒラタ」は、東京都港区麻布十番にある食通には今更紹介するまでもない有名店です。

1度行けばもう迷う事はないのですが初めての方にはエントランスがちょっと判りづらく、エスコートする相手に、「へーこんな所に美味しいお店があるんだ〜」って思わせる所もオシャレと言えるかもしれません。
ヴィノの上の階にはヴィノの親分店の「クッチーナ・ヒラタ」があります。

さて、入り口の扉を開けますと、そこは「ヴィーノ」の名に違わずワイン&美味しそうなお料理の香りが立ち込め、ホールスタッフの威勢の良い声と今夜のお客様達の楽しそうな笑い声で満たされた空間が広がっておりました。

さあ、席に着きましょう。
今夜の所長の夕食は、

  1. 生牡蠣2個
  2. 手長海老のマリネ
  3. かすごのオーブン焼き
  4. 蛍烏賊のタリオリーニ(トマト系ソース) 二人でシェア
  5. ラビオリ(クリーム系ソース)黒トリュフ掛け 二人でシェア
  6. タルトタタン

さっそく「健康×美食ラボ」にて私とスタッフで検証をいたしました。

1と2もほとんどレアの食べ物。牡蠣は亜鉛が多く(亜鉛が欠乏するとひどい味覚障害をおこします)海のミルクと言われるほどバランスの良い食材です。

海老はコレステロールの含有がかなり多い事が知られていますが、実験的に烏賊や海老を沢山食べてもコレステロールはあまり上昇しません!理由はタウリンなどコレステロールを低下させる物質も多く含んでいるからと考えられています。

1と2もカロリーを考えレアに近い状態(2は油が多少入りますが)で食べている事は大変よろしい。

3「かすご」とは春子と書いて冬〜春に出る小鯛の事で寿司好きな方は皆ご存知のだと思います。

石川シェフは毎年この季節にカスゴを使った一品を出してくれます。今回のカスゴをチーズで巻いてオーブンで焼き上げた物は今年の新作です。さっぱりした春子とオーブンで焼き上げた香り高いチーズのマリアージュは完璧でした。高級な食材を使わずにこれだけ美味しい物をつくる腕前に感心いたしました。

もしも来店の際は是非とも注文してみてください(初春限定です)。
味は素晴らしいですが、スタッフからはチーズも入りカロリーが多すぎる事を指摘されました。

4と5はパスタです。一般にはパスタにはオイルが必ず入ります。カロリーとしては失格ですが、ここで強調したいのはオリーブオイルは身体によろしいという事です。

ラードは揚げ物をカラッと揚げるので巷の美味しいコロッケなんぞは皆これで揚げてあります。バターは料理の風味を濃くし美味しさを倍増します。しかし動脈硬化をどんどん促進してしまうのは皆様ご存知の通りです。

スタッフの意見としてはやはりイタリアンのためオイルの含まれた料理になりカロリーが心配。しかし二人でシェアした事と血をサラサラにする油を摂られた事は大変よろしいとの評価でした。

今回は最後のメインディッシュも涙を呑んで注文しませんでした。
所長としましては本当はメインにアンコウのトリッパを食べたかったしお店に失礼とも思ったのですが。。。

しかし同行スタッフの男性ともにお腹はほぼ満足できてたので・・。ソムリエの滝沢さん(サーファーなのでいつもオールドポルトのボトルみたいに真っ黒です、笑)は我々のわがままを嫌なそぶりをチラとも見せずに聞いてくれました。

6最後のタルト。これも本当に美味しい一品でした。リンゴの比率がとても多くカロリーの気になる方にもお薦めと思われます。スタッフの意見は「まー食事の最後に甘い物を食べる習慣は大昔のローマ時代から行われている事だし・・人間の本能に近いのかなぁ」だそうです(笑)  
ヴィーノではコーヒータイムに香り高い本物のフレッシュハーブティーも頂けます。

「健康×美食ラボ」から皆様へのアドバイス

生で美味しい食材はなるべく生で食べる事でカロリーをセーブいたしましょう。エビ、イカは申し上げた様にコレステロールが沢山入っているのに我々の血中コレステロールを上げません。素晴らしい「健康×美食」的食材です。お魚の油は血をサラサラにしますしぜひ悩んだ時は魚とエビ、イカで献立を組み立てると良いと思います。

フレンチやイタリアンなどはどうしてもカロリーの高い品が多いです。そのような場合はパスタとかメインは二人でシェアしましょう。一皿一皿出てくる間に時間も過ぎていきお腹も落ちついてくるはずです。

早食いは食べ過ぎてしまいます。ゆっくりと会話しながら楽しく笑顔で食べる事は食事の量を減らし、笑う事で免疫能を高めロングライフに繋がると覚えましょう。

涙を呑んで(唾液かも、笑)今回岡野所長はメインを注文しませんでした。

ここがポイント!

あとちょっと食べたいーーって所で止めるのが賢い人のレストランでのマナーです。
この点は本当に大事なことです。勇気がいります。大げさではありません。

美味しいお店に来て「今夜だけならいいだろう」と思わぬ人はいないはずです。そこを抑えるのがオシャレでもありオトナなのです!

そのためには最初から全部の品をオーダーしない方が良い事がわかります。

途中のお腹の具合で料理をどうするのか決めても遅くはありません。最初にすべてのオーダーを決める様に指示するお店がありますが、フォワグラみたいに無理やり食べさせられる義務はありません。金銭目的としか思えない悪行とラボは考えます。

そして今回所長は肉類を一切食しませんでした。
申し上げました様にフレンチやイタリアンはどうしてもソースがかかったり、油で揚げたりする物が多くカロリー的には抑えるのが難しいです。

そこでせめて油系は身体に良い魚やオリーブオイルで取る工夫が必要かと思われます

ちょっいと油に関するお勉強をいたしましょう。

健康ラボの調査によりますと、薦められるオイルはオリーブオイル、シソオイル、エゴマオイル(ゴマ油ではありません)、菜種オイル、魚の油。薦められない油は、肉の油、バター、ラード、マーガリン、ひまわりオイル、胡麻オイル。薦められるオイルにはα(アルファ)ーリノレン酸、オレイン酸、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸が入ってて、薦められないオイルには主としてリノール酸が入っています。

一時リノール酸は身体に良いといわれてかなり薦められてました。医師も患者さんに沢山摂取する様に言ってたはずです。ところがその後の研究ではかえって肺、乳腺、大腸、前立腺、膵臓などの癌を増やしアトピー性皮膚炎、花粉症を 悪化させる事がわかりました。

今日の日本にいて普通の生活をしている限り取り過ぎてしまうと言われていますので避けられた方がいいはずです。ゴマも身体に良いとずっと言われ続けてきておりますが今日ではリノール酸的には摂取しない方が良いです。

しかしゴマにはゴマリグナンといわれる強力な抗酸化作用を持ってる物質が入っておりますので、その成分はとっても身体に良いですし魅力的です。ゴマリグナンだけ抽出しているサプリメントもありその方がよろしいかもしれません。

今日の日本人のリノレン酸とリノール酸の平均的摂取比率は1:4ですが、理想は1:3と〜1:2と言われております。しかしわざわざ計算しながら食べる人もいないでしょうし、まずはリノール酸の多い物は避けて通ればよろしいと思います。

所長のコメント

さあ、どうでしょう。これだけ美味しい物をイタリアンで食べましたが食事内容は「ちゃーんと考えて」摂取してあります。身体に良い油だけで過ごせたとてもBvono な夜になりました。今後、ヴィノの親分店のクッチーナさんにも白トリュフの美味しい頃にでも登場して頂きたいと思っております。

皆様が身体に良くって且つ美味しい物を沢山食べられます様に、そして「医食足りて礼節知る」そんな医師を目指すために今後も頑張って美味しいお店を料理していきますのでお楽しみに〜♪

執筆 『健康×美食ラボ』所長:医学博士 岡野喜久夫 2005年1月25日

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