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第14回 2003年1月24日
 1996年、三軒茶屋の地下1階に小さな焼肉屋がオープンした。牛角の歴史はここに始まる。たった8年でおよそ800店。ここまでお客様に受け入れられるのはどうしてだろうか。「安くておいしい」「心地よいサービス」その秘密を探るべく、「牛角」本店を取材した。
愛嬌あるミニチュアたち
バブル後を勝ち抜いた「牛角」イズム

 90年代、「牛角」の存在は飲食業界にとってかなりインパクトのあるものだった。デザインを真似た居酒屋が急増し、木がふんだんに使われた内装、おもちゃを配した内装が溢れかえった。そのような中で「牛角」が勝ち残れたのは、戦略とソフト(商品とサービス)がしっかりしていたからだ。02年に本店は移転し、およそ倍の54席となった。相変わらず週末には行列ができている。

 確実に勝ち残る飲食店のソフト(商品とサービス)とはどのようなものなのだろうか。

「牛角」本店の上は「とりでん」(左) カジュアルな内装(右)
 
「こだわります」ポスター
3杯目の正直!!
ビール好きへ捧げる「究極の生ビール」


 「究極の生ビール」の話を聞いたことはあるだろうか? 「牛角」にはビール好きしか飲むことができない「究極の生ビール」があるのだ。なにより、「牛角」の店長は全員「キリン・ドラフト・マスターズ・スクール」を卒業しているので期待は膨らむ。練達のドラフト・マスター(生ビールの達人)が注ぐ「究極の1杯」を実際に見せていただいた。


喉越しが爽やかな「キリッと生タイプ」(左)
喉が潤う「マイルド生タイプ」(中央)
企業秘密「究極の生ビール」(右)
 「究極の生ビール」を見て違いが分かっていただけるだろうか? 具体的に何が違うかというと、泡と液体の間に、霧状の泡が発生しているのである。これが発生するビールというのは口当たりが滑らかで、液体の表面は泡が発生しやすい状態になっている。そうすると飲んでいる途中でも再び泡が発生し、常に液体を蓋して、酸化を防いでくれるのだ。どのような注ぎ方をしているのかは秘密だが、普段飲む樽生ビールと明らかに違うので、1度は飲んでみていただきたい。



低温管理されるジョッキ
 「究極の生ビール」はビールを2杯注文したお客様にすすめられている。「キリッと生タイプ」と「マイルド生タイプ」のどちらか一方を2杯でも、両方を1杯ずつでもかまわない。ビールを2杯楽しんだお客様が、一味違うビールとして口にすることができるのだ。値段はかわらずおいしいビールが飲める・・・これが口コミで評判となり、「究極の生ビール」を1杯目から注文しようとするお客様もいるようだ。「注ぐのに手間がかかってしまう為、本当にビールが好きな人にこそ飲んでもらいたい」ということで、やはり3杯目からを原則としているそうだ。


※店舗により「究極の生ビール」を扱っていないお店もあるので、事前に確認した方がいい


 
 
 
夏は発泡酒 冬はホットドリンク
「空くまで待とう」
ウエイティング・ドリンクの秘密


 三軒茶屋は住宅地で、週末は地元のファミリー層がたくさん来客する。夕方はどうしてもお客様を待たせてしまうことになるそうだが、「楽しく待っていただく」為の工夫をしている。「電話番号を伺って、席が空いたら連絡」というのは多くの飲食店が実行しているが、「牛角」はそれ以外に、メーカーに協賛してもらい、店内で待たれるお客様にはミニ・ドリンクをサービスしているそうだ。夏は発泡酒、冬はホット・ドリンク。このご時世にお客様のためにここまでサービスするお店はあまりない。根強い人気を保っている理由のひとつだ。
 
 
<差込メニュー>

・鴨ねぎロース
・炙りベーコン
・牡蠣の味噌焼き
・ねぎ味噌チャック
・ぺペロンチーノチャック
・白黒ごま味噌チャック
・てりマヨチャック
・ハラミ盛り(塩ダレ 黒味噌 タレ)
<定番メニュー>

・ぼたんロース
・チャック(塩ダレ 黒味噌 タレ)
・激辛チャック
・ガーリックバターチャック
※チャック・・・旨みが多い、牛の肩周辺の部位
・鶏ハラミ(塩ダレ 黒味噌 タレ)
・てりマヨチキン
・2色ホルモン(塩ダレ 黒味噌 激辛)
・にんにく豚カルビ
・豚カルビの生姜焼き
・ピートロ わさび醤油
・月見ねぎ味噌ピートロ
・豚ハラミ(塩ダレ 黒味噌 タレ)
・豚ホルモン(塩ダレ 黒味噌 激辛)
・牛角チゲ
<デザート>

・いちごロールケーキ
・フレッシュいちごミルク
・いちごミルクアイス
・いちごと練乳の絶品パフェ
・タピオカココナッツミルク あずき
開発者の眠れぬ日々・・・
新メニュー27品勢ぞろい!!


 「牛角」が繁盛する理由はポーションを小さくして色々な肉・多彩な料理をたくさん選べるメニューを用意した点にもある。レインズインターナショナルは多種の飲食店を経営する中で共通の定番メニューを確立し、その上で業態ごとにオリジナルメニューを開発している。「牛角」では年4回のメニュー変更を行っており、2月5日(木)に新たに27種類の新メニューを取り入れるということだ。いのししやベーコン、鴨といった焼肉屋としては珍しい食材が並んでいる。

 豚のメニューを中心にバラエティに富んだメニューだ。週末にはどうしてもウエイティングがかかってしまう為、待っている間はよそのお店で軽く飲んでいるお客様もいる。そういったお客様の「メインの焼肉はもちろん〆の麺類・デザートも牛角で」という要望もあり、サイドメニューは人気があるのだ。
 
 
ニュートレンドは三茶から

 三軒茶屋はレインズインターナショナルの実験場だ。「牛角」が初出店したのはもちろん、レインズの主要な業態がこの街で展開されている。ここで「てんぷら家 揚好人」「麺屋 一幸」など実験的な店舗が出店されてきた(「てんぷら家 揚好人」は02年に「牛角」本店に入れ替わり、「麺屋 一幸」は横浜に移転した)。三軒茶屋というキャンパスに、レインズは様々な絵を描き出している。その中で、核となるのはやはり「牛角」。新メニューが投入される2月5日(木)が楽しみである。

「牛角」本店

東京都世田谷区三軒茶屋1-33-19
 ケイオーハロービル1F
03-5712-3319

http://www.gyukaku.ne.jp/
 
 
 
 2004年1月25日 取材 執筆 山越 龍二
 

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