・お好み焼はお客に焼かすな
お好み焼店は全国に2万店舗近くあり、その市場規模は約1900億円。外食市場は約24兆円であり、シェアはわずか1%にも満たない。
1店舗あたりの年商はわずか1千万円。零細店が大半を占める。しかも店舗数は減少傾向にあり、10年前と比較して3千店も減ったと推定される。
しかし、人気のお好み焼き店の話題は多い。「お好み焼なら自分でも出来るか」と安易に考えて開業する人が多く、特徴のある店が目立ちやすい訳だ。
東京・丸の内TOKIA地下にある「きじ」は大阪から初出店し開店2周年を迎えて、今も行列の絶えない店だ。鶏ガラスープで溶いた生地が特徴で牛スジとネギたっぷりのスジ焼きが人気。また、昭和30年代の街並みを再現した「ぼちぼち」は30店舗近くに増加している。
最近はお好み焼以外の料理を充実させた鉄板居酒屋や、鉄板ダイニングも増えている。老舗「千房」のダイニング版「千房エレガンス」は商業施設への出店し、老若男女の幅広いお客を集めている。
人気店に共通するのは、お客に焼かせず店側で焼く点。お客に焼かせると味が統一されず、店の評価がバラバラになる。集客には大きな助けとなるメディアも寄り付かない。仮に美味しくても、お客が「俺の腕がよかったから」になり、店はどうでもよくなってしまう。
目の前でプロが焼くライヴ感は、お客に美味しさや楽しさを伝えてくれる。お客の思い出に残り、再来店に繋がる。
・オタフクソース「お好み焼課」
お好み焼きに無くてはならないオタフクソースには、お好み焼き文化を広めることを任務とする「お好み焼課」がある。そして、「お好み焼士」という社内資格を設けている。
12/18の講座(東京)に参加した方々
お好み焼き店の経営学も教えてくれる
この「お好み焼課」が月に1度、東京・大阪・福岡で、開業希望者向けの研修会を開催している。広島お好み焼きと関西お好み焼きの2コースがあり、各3日間で、参加費2万円。大阪では、たこ焼き研修も開講している。
関西流コースのカリキュラムは、
1日目 受講生の現状把握
素材と備品説明
鉄板の説明・焼付け
関西焼・広島焼の試食
だしの取り方説明
実習(生地、キャベツ、盛りつけ、焼き、ヘラ使い)
2日目 もんじゃ焼(東京のみ)
鉄板焼実演
生地作り(山芋と大和芋の配合、各種ソースの味見)
焼きそば実演
片付け&鉄板掃除説明
3日目 経営学
各自で実習
希望メニューの練習
片付け&鉄板掃除
修了証書授与
3日目にはオタフクソースの地域担当営業を紹介してくれ、実際の開業までマンツーマンで相談に乗ってくれる仕組み。
この研修が始まったのは、同社が東京進出した1987年。東京にはお好み焼文化が無いので広めようと始まった。既に20年続いており、卒業生は数えきれない。東京のお好み焼文化を築いた方々だ。
講義室内に設けられたカウンター
キャベツの切り方で食感が変わる
スタンダードな豚玉
お客の前ではヘラ使いも鮮やかに。
・お好み焼を安易に考えるな
実際には、お好み焼なら自分でもできるだろうと安易に考えるが、開業前に現実の厳しさに去って行った方々も多い。また、開業後も経営戦略がなく閉店してしまう店舗も多い。
お好み焼業態を選んだから成功しやすいとは限らない。他の業態でも同じ。経営できなければ潰れる。他店との差別化が出来ているのか、自店のウリは何なのか。特に、個店の場合はどんぶり勘定で日々の利益が分からず、金が回らなくなってしまうケースが大半。
また、家庭で作って食べる方々も多く、飲食店では付加価値の付け方が難しい商材だ。安くない金を払ってわざわざ外で食べたいという気にさせることができた店が生き残る。
しかし、分かりやすく親しみやすい商材なので、評判になると爆発する力も持っている。ワタミの渡邉美樹社長の前身はお好み焼だ。ビックチャンスはある。
オタフクソース 業務用の商品群