フードリンクレポート


<サポーターレポート>
2008年ビール4社の業務用販売戦略

ザ・プレミアム・モルツ1本。店での「飲用品質」を高めたい。
サントリー株式会社

2008.1.11
飲食店に、商品を供給するだけでなく情報・資金面でも多大な支援を行っているビール会社。大手4社に今年の業務用の販売戦略を取材する4回シリーズ。第1回はザ・プレミアム・モルツの好調に燃えるサントリー。酒類カンパニー ビール事業営業部 課長の久保哲氏を取材した。



業態を問わないザ・プレミアム・モルツ

 ビール市場では、発泡酒、第3のビールと低価格を売り物にするビール系飲料が伸びてきたが、反面、プレミアムビール市場が拡大を続けている。プレミアム市場をリードするのは、サッポロビールのエビスとサントリーのザ・プレミアム・モルツの2ブランド。2007年販売量はザ・ホップなども含めたエビスグループ合計で1198万ケース、18%増。ザ・プレミアム・モルツは951万ケース、73%増。ビール系を含めた総市場は1%程度の減少と推定され、年々縮小傾向にある。その中でプレミアムビールの動きは突出している訳だ。価値ある商品に対しては、消費者は金を払ってくれることを示している。

 ザ・プレミアム・モルツは1989年誕生のモルツ・スーパープレミアムをベースに、03年にザ・プレミアム・モルツとして誕生。業務用を中心に数量を大幅に伸ばしてきた。07年末時点での同樽生扱い店は2万5〜6千店と急増。サントリーの全樽生店内でのザ・プレミアム・モルツ扱い店の比率も急拡大している。

 メニュー価格が高くなりお客から嫌われるという不安から、通常のビールと併売でザ・プレミアム・モルツの扱いを始める店もある。しかし、時間と共に飲酒量が減るのではという心配は杞憂に終わり、ザ・プレミアム・モルツ1種にしてしまう店が多いそうだ。「サントリーはビール全体では4位の位置ながら、ザ・プレミアム・モルツは非常に高い評価で認めていただけた」(久保氏)と同社には明るいムードが広がっている。


「ザプレミアムモルツ」TVCMお寿司屋篇


付加価値はモンドセレクション最高金賞

 サントリーはモルツを1986年に発売した後、87年に武蔵野ブルワリーにミニブルワリーを建設し、小ロットでのビール醸造を始めた。そして、醸造技術者達の夢を集めたモルツ・スーパープレミアムが誕生する。樽生だけの商品で多摩地区限定で販売がスタート。好評を得て2000年には缶、01年には瓶を発売。その間、樽生の販売エリアが拡大し、酒にこだわるオーセンティックバーでも扱われ、酒通のお客の間でも話題となって行った。

 そして、03年にザ・プレミアム・モルツにリニューアルされる。05年にはモンドセレクションに出展し、ビール部門で日本初の最高金賞を受賞。醸造技術者達は品質に自信を持ち、第三者機関の評価を求めていた。その際に、見つけたのがモンドセレクション。
「モンドセレクション」http://www.monde-selection.com/jp/default.asp


モンドセレクション授賞式

 モンドセレクションとは独立系国際機関としてベルギー政府の主導により1961年に設立され、食品の品質向上を目的として始まった品評会。カテゴリー毎に品評され、ビール部門では日本で受賞した商品が無かった。そこでサントリーは申請し、05年に最高金賞を受賞する。この受賞が世界に認められた品質の証として広がりブレーク。その後最高金賞を、06年、07年と3年連続で受賞、評価は確固たるものとなった。

 プレミアムモルツ販売の当初は高級旅館等、各業態の頂点の取り扱いが中心であったが、この受賞により他ビールとの差別化が明確になり、業態を問わず幅広く販路が拡大していった。


ビール工場でのプレミアムモルツ講座


お客のチェックで「飲用品質」アップ

 消費者調査でプレミアムビールを飲む場所を聞くと、4割の方が飲食店で飲みたいと答えたそうだ。飲食店でのプレミアムビールはお客にとってもニーズがある。飲食店というハレの舞台では価値あるものを飲みたいと考えるお客が多いということ。

 現在、ザ・プレミアム・モルツ販路の業務用と家庭用との比率はほぼ5:5。通常のビールが3:7であることに比べて、業務用の比率が高い。


飲食店向けポスター

 まず飲食店で美味しさを体感いただくためにも「飲用品質」の訴求は重要で、泡まで美味しいとお客に言わせることだ。そのためにも飲食店向けに講習会を実施、優秀店には「樽生達人の店」の認定を与え、サントリーのホームページで店舗紹介も行っている。
「樽生達人の店」http://gourmet.suntory.co.jp/zenkoku/tatujin/index.html

 08年は「飲用品質」をさらに一歩進める計画だ。お客の側からプレミアムモルツ扱い店での「飲用品質」の評価を集めることも検討している。美味しいビールを提供すればそれがお客に伝わる。逆もそうだ。ウェッブを使って、レストラン評価サイトのようにお客から評価の声が集まる仕組みも考えているそうだ。

 美味しいビールを提供すれば、お客の方から「美味しいね」と声を掛けてもらえる。お客とのコミュニケーションのきっかけになるビールを目指している。

「飲み飽きないビール」としてお客の評価が高い。「『とりあえずビール』から『私は、ザ・プレミアム・モルツを飲みます』と積極的にお客に言っていただけるようになりたい」(久保氏)。08年もサントリーはザ・プレミアム・モルツに全力投球する。




久保哲氏(酒類カンパニー ビール事業営業部 課長)
サントリー株式会社

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2007年12月27日取材