・2001年の取扱開始後、5年間で2倍に増加
モルトウイスキーは、地酒として焼酎ブームとオーバーラップするように伸びてきた。そして、同じく2007年に踊り場を迎えたようだ。モルトブームの始めは、モルトマニアが飛びついたが、彼らはどんどん深いところへ入り込み、彼らの収集欲は、人の知らないブランドを追い続ける結果となり、蒸溜釜の形にうんちくを傾けたり、一般人には理解しづらい敷居の高い酒になってしまった。
ワインブームの時代も、マニアの収集欲に振り回され、一時、踊り場を迎えたが、ポリフェルールという「神風」が吹いて一般人がどっと流れ込み、ワイン市場が一気に広がったのを覚えている方も多いだろう。ウイスキーは、アルコール度数の高さから、市場規模は小さく、「神風」は吹きにくいのでブームと言っても市場は小さい。
その中で、前述の様なモルトウイスキーマーケットの「成熟化」を避けるかのように、ザ・グレンリベットは、モルトという個性豊かな酒というイメージは継続して、「モルトの出発点であり、原点」としてモルトファンを守りつつ、「飲みやすいモルト」として新しいファンをも取り込もうとしている。
・1千人以上のバーテンダーが薦める、ザ・グレンリベット
蒸溜所や歴史、製造方法などのブランド知識をもったバーテンダーを囲い込む活動「ザ・グレンリベット・ブランド・アンバサダー」を2004年から行っている。蒸溜最高責任者(マスター・ディスティラー)、ジム・クライル氏が来日時に希望者を募り、研修を受けたバーテンダーだけが認定証をもらえる。昨年からはWEBでのエントリーも受け付けているが、試験を設け合格者だけがアンバサダーになれる。別途、テイスティングの機会が提供される。
蒸溜最高責任者(マスター・ディスティラー)、ジム・クライル氏
研修で熱く語るジム・クライル氏
現在、「ザ・グレンリベット・ブランド・アンバサダー」というバーテンダーは全国に1千人も育っている。
さらに、「ベスト・アンバサダー・チャレンジ」という年間表彰プログラムも用意。「ザ・グレンリベット」を年間でいかに自店で販促・PRを行ったかということを12月末に報告してもらい、1月にはベスト・アンバサダー2名を選考している。彼らは、英スコットランドのザ・グレンリベット蒸溜所に招待され、表彰される。本年も4/2に開催された。
<2007年ベスト・アンバサダー2名>
・Bar Alco-Hall 梨本 康雄氏
神戸市中央区北長狭通1-2-13シマダ゛ビルB1F 電話 078-331-1846
・BAR DION 大畠 隆幸氏
大阪市中央区東高麗橋2-28コジマビル103 電話06-6949-6555
・消費者の「コニサークラブ」、モルトディナー開催
2007年10月に消費者対象の会員組織をスタート。08年1月にはアペタイザーからメインまでザ・グレンリベットだけで料理を楽しむというユニークなモルトディナーを東京・大阪で開催し、会員を抽選で招待した。年間で2千人の入会者をめざしている。ロンドンで流行っているモルトディナーをいち早くとりいれた。
コニサークラブ モルトディナー
コニサークラブ モルトディナー
ベスト・アンバサダーを蒸溜所で表彰するツアーを組み、コニサークラブの消費者の方々に参加を呼びかけ、2008年は18名の方が参加したという。
モルトならではのうんちくの部分は維持しながら、おしゃれさ、ラグジュアリー感も追及しようとしている。
・モルトはラグジュアリー
現在、欧米の都市マーケットでモルトが伸びている。シャンパン、スーパープレミアムウォッカなどと同じくラグジュアリー商品となっている。日本ではマニア向け商品というイメージが強く、現状では欧米とは異なる。
「今、モルトを飲んでいる消費者は、いくつかの壁を乗り越えている。誰かに勧められて興味を持つ。誰かが飲んでてカッコイイと思う。そして、実際に飲んでみて美味しいと思う。さらに、それを飲む自分をカッコイイと思う。このステップを乗り越えた方がモルトドリンカー。このステップは一気に上りつめさせようとすることは難しい。あくまでザ・グレンリベットの直接の消費者ターゲットは30代半ばから40代。だから、20代の消費者には間接的な影響を与えていきたい。」と渡辺氏は戦略を語る。
渡辺一人氏(ペルノ・リカール・ジャパン株式会社 マーケティング部 シニアプロダクトマネージャー)
ザ・グレンリベットは、個性的なアイラモルトなどと異なり、飲みやすいスペイサイドモルト。モルトは飲みやすい味からエントリーし、個性的な味に移っていくが、本当にモルトが分かってくると、飲みやすい味に戻ってくる。やはり、飲みやすい方が美味しいということだ。
ペルノ・リカール社は、世界第2位の巨大酒類企業。酒類ブランドの買収で世界を驚かせている。本年3月にも、プレミアムウォッカ「アブソリュート」を8千億円以上も投じて買収した。ラグジュアリー・ブランドを育てるのが得意なフランス。国際化する日本市場の中で、どのように「ザ・グレンリベット」がラグジュアリー・ブランドとしての地位を高めていくのか注目したい。