・燃焼排熱とふく射熱を防ぐ「涼厨(すずちゅう)」
最近、外食業界でも電化厨房の話題を聞くようになった。モツ鍋やカレー鍋など鍋ブームとともにテーブル席にIHヒーターを組み込んだ店舗も増えてきた。
電気の良さは、燃焼に伴う排熱や裸火によるふく射熱が少ないため、周りが熱くならないこと。温度や時間の調節が容易で調理をマニュアル化しやすいこと。さらに、ごとくなどがなく掃除しやすい。効率を求めるチェーンオペレーションに向いている。
ガスの良さは何と言っても調理性。「60点の料理なら電気で十分だが、100点を目指すならガス」と料理人の間で言われている。美味しい料理はガスという訳だ。しかし、燃焼に伴う排熱や、裸火によるふく射熱により、厨房の中が熱くなってしまう。
ガスの美味しい料理を作れるという利点を生かして、しかも涼しい厨房を作ろうという提案がガス会社からなされている。それが「涼厨(すずちゅう)」。元々、大阪ガスで4年前から始まり現在は全国のガス会社が加わり機器のラインナップ整備も進んでいる。
「涼厨」とは、これまでは空調に頼っていた暑さ対策を、厨房機器本体に熱の発生や拡散を抑える機能を持たせることで涼しくする、新しい概念の厨房機器。
ガスなのに涼しい理由は、まず、集中排気により厨房機器の燃焼排気が厨房内に広がるのを防ぐから。そして、裸火が露出しない構造のため、炎によるふく射熱が低いから。さらに、機器本体が空気断熱構造で覆われていて、機器表面の温度が低くふく射熱の発生が少ない上に、やけどの心配も無用。また、煮こぼれても焦げ付かず、掃除が簡単になる。
「涼厨」は様々な調理機器メーカーで製品化されている。これらを体験できるのが、東京ガスの業務用厨房ショールーム「Task新宿」だ。
沸騰しているが、周りを触っても熱くないガス回転釜
炎が外に出ないガスコンロ
小窓から炎がかすかに覗ける
・東京ガス、業務用厨房ショールーム「Task新宿」
東京ガスは、2年前から業務用厨房のPRに力を入れ始めた。今までは、ガスが当たり前だったが、電化厨房の攻勢を受け、ガス厨房のPR活動をスタートしたという経緯。
そして掲げるスローガンは「最適厨房」。外食企業のニーズに合わせて最適な厨房を提案していくこと。東京ガスの桑名朝子氏は「お客様のニーズに合うなら、IH機器も提案します」と言う。自社の利益になるガスだけを勧めるのではなく、外食企業にとってメリットを追求しようというスタンス。
東京ガスの桑名朝子氏
「業務用厨房でのガス使用量は伸びています。外食分野におけるオール電化厨房は全体で見ればまだ少なく、電気に適した機器は電気で、ガスに適した機器はガスでと、併用されているようです」と桑名氏。
「最適厨房」に必要な要素を、「涼厨」など人にも地球にもやさしい環境性、コストパフォーマンスを良くする経済性、ガスならではの美味しくて便利な調理性、そして、掃除のしやすい衛生性に分類している。環境性、経済性、調理性、衛生性の4つを組み合わせて、外食企業のニーズに合う「最適厨房」を設計する。実際に、具体的な厨房設計のサービスも行っている。
厨房情報のポータルサイト「最適厨房オンライン」を作り、東京ガスが考える「最適厨房」コンセプトを具体的に紹介している。メーカーからの情報発信だけではなく、平松宏之氏、三國清三氏、片岡護氏など有名シェフによる「厨房談義」など読み物としてのコンテンツも充実。
それらを実体感できるのが、東京・西新宿に設けられた業務用厨房ショールーム「Task新宿」だ。最新のガス機器が体験できるだけでなく、ガスと電化の厨房比較も可能。
業務用厨房ショールーム「Task新宿」
「Task新宿」内のダイニングスペース
さらに東京ガスはパリ市商工会議所とともに1990年に「フランス料理文化センター」開設。フランス料理、サービスのプロ教育、フランスへの留学制度を行っている。その講義会場も「Task新宿」だ。また、東京ガス独自に「グランシェフこだわりのシンプル・レシピセミナー」と題して定期的に同ショールームで開催している。本年5/13には第11回として、「ラ・ブランシェ」の田代和久氏が登場した。
「涼厨」、「最適厨房」、「Task新宿」、「フランス料理文化センター」、「グランシェフこだわりのシンプル・レシピセミナー」など業務用厨房の現場をサポートする東京ガス。美味しい料理を追及する料理人は東京ガスから目を離さない方が良さそうだ。