フードリンクレポート


<サポーターレポート>
ご注文は「美味しい空気」ですか?
吸う人も吸わない人も共存できる環境を作る。
株式会社トルネックス

2008.6.7
タバコを吸うお客と吸わないお客が隣り合って共存できる「楽しい分煙」店を目指す動きが目立ち始めた。技術面から「楽しい分煙」をサポートするトルネックス社長、松井周生氏を取材した。1989年からオフィスや公共施設の分煙を手掛け、昨年より「オイシイクウキ計画」として外食産業向けの提案をスタートさせている。


人工竜巻で煙を吸い込む(トルネックス特許)

人工竜巻を発明、分煙のパイオニア

 トルネックスは人工竜巻を作る技術特許を持つ企業だ。元は、1968年にエアカーテンの製造販売会社としてスタート。お客が入りやすくて、しかも空調を逃がさず、虫も除けられる商店のゲートから、臭いをシャットアウトするゴミ処理場のゲートまで様々な産業にエアカーテンを提供してきた。

 初代社長、松井茂夫氏は発明家。松井周生氏の父親だ。「気流制御」というコンセプトにたどり着き、1984年に人工竜巻の研究をスタートさせた。86年には人工竜巻を利用してピンポイントで排気できるシステムを販売。そして、松井茂夫氏は88年には国際発明協会で最高位の天才賞を受賞した。


松井周生氏(トルネックス、2代目社長)

 この人工竜巻技術を喫煙所に活用した製品「トルネックス・エリア」を87年に発売した。しかし、販売価格は1台598万円。当時はタバコが悪いという感覚がなかった。人に迷惑をかけるという意識もないし、吸わない人も我慢して当たり前。タバコに文句を言う環境になかったので、売るのに苦労したという。

 エアカーテンの販売先であるクリーンルームのあるコンピューターや製薬会社の工場で喫煙室を提案。粉じん対策を行っている場所で理解され設置が進み、工場から本社へ、そして官公庁へと広がった。


「オイシイクウキ」で集客を

 外食業界へ本格的に進出を始めたのは、昨年の2007年。カフェを中心に分煙製品の販売を行っている。

 人気なのは、「エアカーテン付天井空気清浄機」。禁煙席と喫煙席を得意のエアカーテンで仕切るタイプ。タバコの煙を吸い込み、それを浄化したきれいな空気でエアカーテンを作るとともに、禁煙席にもきれいな空気を送り込む。工事費別途で1台約50万円。


エアカーテン付天井空気清浄機


喫煙席側の煙を吸い込み、浄化空気でエアカーテンを作るとともに禁煙席にも浄化空気を送り込む

 そして、「トルネックスポラリスシリーズ」。天井に埋め込み型で、低騒音、省エネ設計の製品。室内の粉じんを吸い込み、浄化するとともに除菌イオンも放出させる。工事費別途で1台約30万円。


トルネックスポラリスシリーズ


室内の粉じんを吸い込み、浄化するとともに除菌イオンも放出

「オイシイクウキ」をキャッチフレーズに飲食店で美味しい空気を売り物にして欲しいと松井氏は外食産業に訴えている。店側がお客に導入していることをアピールできるよう「エアカーテンでタバコの煙の漏れを遮断しています」という張り紙も用意している。

張り紙

「どこでも吸える時代は煙害が分散していました。しかし、喫煙できる場所が少なくなった今、1ヶ所あたりの煙害は増えています。1ヶ所あたりの設備が重装備にならざるを得ません。これを行政だけで負担すると、なぜ税金でという話になります。民間とうまく連動できないでしょうか」

「200円のコーヒー代を払っても良いと考える喫煙者がいるのでは。タバコを吸うことが生理現象に近い方もいます。とにかく吸いたい、金を払ってもいいと思う方です。店側からすれば、タバコが吸えることが集客につながることになります」

「吸う人と吸わない人が同席しても気にならない仕組みを飲食店に提案していきたい。レストランでも喫煙者が席で吸えるようなワゴン型の空気清浄機も考えています。それがサービスとしてお客様にびっくりしてもらえるようなものにしたいです」と松井氏は言う。

 松井氏は発明家である父親譲りの才能で、吸う人も吸わない人も共存できる「楽しい分煙」に向かって製品開発に励んでいる。



株式会社トルネックス http://www.tornex.co.jp/index.html

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2008年5月14日取材