・ナチュラルチーズの風味とプロセスチーズの機能性を合体
ナチュラルチーズ相場の高騰には複数の原因がからみあっている。まず、2006年7月から2007年6月に起きたオーストラリアのかんばつ。100年に1度とも言われている大型のかんばつで大陸が干上がった。また米国も熱波が襲っている。いわゆる地球温暖化の影響により、両国で乳量生産が減っている。
さらに欧州では世界市場で乳製品の需要が増え、相場上昇の兆しがあったため、輸出を促進するために政府がメーカーに支払っていた補助金が無くなった。供給側では生産が減り、国内需要に回され、輸出分が減っている構造。
消費側ではロシア、中国など新興発展国で乳製品の需要が急増。そして、国際相場は数年前から上昇し出し、特にここ一年間では過去の2倍にまで達している。
この厳しい環境の中で、宝幸が生み出したのが「フォマーゼ」。宝幸は「ロルフ」ブランドで1964年からチーズを販売してきた。業務市場では約10%のシェアを持つリーディングカンパニー。飲食店からの様々なオーダーに細めに対応してきた技術力、営業力が生み出した商品と言える。
「フォマーゼ」はナチュラルチーズを溶かして油脂などを加えて延ばしたもの。ナチュラルチーズを溶かして成型したプロセスチーズと製法は近い。特徴的な商品が、冷蔵や常温でも柔らかいままの「とろけるチーズソフト」と、スライスチーズのような固形の「チーズフォマーゼ」。
比較してみた。「とろけるチーズソフト」は通常のシュレッドチーズを使ったものとピザで食べ比べた。見た目は変わらないが、シュレッドに比べ糸引きが弱い。しかし、冷めても柔らかいので時間が経っても美味しく食べられた。スライス状の「チーズフォマーゼ」は、通常のプロセスタイプのものと見た目、味ともに違いは分からなかった。
左)シュレッドチーズ、右)チーズフォマーゼ
チーズフォマーゼはシュレッドに比べ糸引きが弱い
共にナチュラルチーズの含有率は20〜30%に過ぎず、完成度の高さに驚かされる。しかも、飲食店への納入価格は約2割も安くなるという。
・チーズの用途を拡大する
「安いからと言って既存のピザのシュレッドチーズを『とろけるチーズソフト』に変えて欲しくないです。既存のお客様が逃げてしまう恐れがあります。そうではなく、『とろけるチーズソフト』を使って新しいメニューを作っていただきたい。ホワイトソースの代わりやホワイトソースとミックスして、リゾットやグラタンを作ってはいかがでしょう」とロルフ事業部 次長の合田誠氏は飲食店の良き理解者だ。
柔らかさを考えると、チーズソースにも適している。ホワイトソースの代替品として使用できる。また、固まらないためチーズ・フォンデュにも向いている。そして、今流行りのバーニャカウダのソース、定番のシーザーサラダのドレッシングにも使える。
特徴である、冷めても柔らかいという点を利用すれば、どんどん用途が広がりそうだ。
「フォマーゼ」とナチュラルチーズは、マーガリンとバターの関係に似ている。マーガリンはバターの代用だがヘルシーで冷蔵しても柔らかい。「フォマーゼ」は定番のマーガリンのようになる可能性を秘めている。
柔らかいままに「とろけるチーズソフト」。表示から原材料の中ではチーズを最も多く使っていることが分かる。
キューブ状の「Dチーズフォマーゼ」
スライス状の「Sチーズフォマーゼ」