フードリンクレポート


<サポーターレポート>
女性客にウケる、“粘り”ご飯をマイクロ波で炊飯。
株式会社タテノコーポレーション

2008.8.15
創業1884年、植物油の普及に大きく貢献してきたタテノコーポレーションが、炊飯器の販売に2007年から進出。それも、マイクロ波を使い、歩留まりを20%以上高めた画期的な商品。酢飯も炊けると好評だが、女性客好みの粘り気のあるご飯が炊けることに注目したい。


マイクロ波炊飯器を紹介する、高橋聡氏(タテノコーポレーション 業務用マイクロ波炊飯器販売プロジェクトチーム リーダー)

水分をよく吸った大粒のコメで、歩留まり改善

 炊飯器には、ガス、IHが一般的だが、タテノコーポレーションが提案するのは、電子レンジと同じくマイクロ波を使って炊き上げるマイクロ波炊飯器。信頼性の高いシャープ製の業務用マイクロ波炊飯器を使い、タテノ独自に店の好みの炊き具合に合わせてプログラミングしたものを納品してくれる。

 マイクロ波の特徴は、焦げ目はできないが、ガスやIHに比べて、ご飯の黄ばみの進行が遅く、7時間経過しても黄ばみを感じない点。ガスやIHでは3時間で黄ばみを感じる。従って、ご飯の出数が少ない店舗でも、常に美味しいご飯を提供できる。

 さらに、歩留まりが20%以上アップし、食材の仕入れコストダウンにつながる。コメの一粒一粒を均一に直接加熱するため、ガスやIHのように釜の場所によって焦げやこびりつきがない。しかも、コメの吸水力を高めることができ、炊きあがったコメ粒は通常より大きめで、ご飯1杯あたりのコメの量を減らすことが可能。一見、水気が多いように感じるが、食べてみると、さらさらしている。


約50分で炊き上がったご飯


水分を十分に吸った大きなコメ粒

 店舗によって使用するコメや、好みの炊き加減も異なるが、タテノでは店で使用するコメを預かって、このみの炊き加減がボタン1つでできるよう、店独自にプログラミングし直したものを納めてくれる。途中で何度か試食会を開き、好みの味まで調整していく。コメの炊飯過程を6つのステージに分解し、そのステージ毎に温度を管理することにより、ねばり気や硬さを調節していく。これにより、新人のアルバイトでも炊飯ができる。

 しかも、炊飯の前にコメを水に1時間ほど漬け置くことも不要。軽いポリプロピレン製の釜にコメとその1.6倍の水を入れ、電子レンジのような炊飯器に入れるだけ。女性でも軽々と作業ができる。炊飯時間はむらしも含めて約50分。釜を洗う際も、軽くてしかも焦げ付きがないため負担が軽い。

 価格は、コメ1.0〜2.5キロが炊けるもので希望小売価格42万円(税込)。約14合のご飯が炊ける。やや高価なのが気になるが、歩留まりが高まり、原価率の高いコメの使用量が減ることを考慮すれば、早期の回収が期待できる。


軽いポリプロピレン製の釜


釜をマイクロ波炊飯器に入れる。炊飯器は2台重ねて置ける。


酢飯、炊き込みご飯、そして“粘り”ご飯

 タテノのマイクロ波炊飯器が話題になったのは、2007年3月のホテレスショー。酢飯が簡単に炊けることで展示ブースは人だかりができた。通常、酢飯は白米を炊いてから、酢を混ぜてつくるが、このマイクロ波炊飯器は、釜にコメと水を一部減らして酢を加えることにより酢飯が炊けてしまう。

 最初は、回転寿司チェーンなどから多くの問い合わせがあったが、1度に炊ける量が少ないのが難点となっている。ちなみに、このマイクロ波炊飯器は2台重ねて使用できる。

 現在の主な販売先は、コンビニ、ファミレス、そば店など。ご飯がメインではなく、お客の入りもバラけて集中しないような業態だ。手軽に炊飯できるので、少量を何度も炊くような業態に向いている。

 白飯や酢飯だけでなく、赤飯、玄米、粥、中華粥、おこわ、ピラフ、チャーハン、雑穀ごはん、ケチャップライス、炊き込みごはん、おにぎり用白飯などとバラエティーに富んだメニューが炊ける。しかも、タテノはいっしょに混ぜて炊ける具材の販売も手掛けている。

 このマイクロ波炊飯器で注目したいのが、やはり白飯。中高年男性は、ガスで炊いた堅い立ったコメ粒が好み。しかし、外食市場をリードしてくれる女性客は、柔らかい粘り気のあるご飯の方が好み。このマイクロ波炊飯器では水分を多めに使って炊くため、粘り気のあるご飯が得意。女性客の多い飲食店に向いている炊飯器だ。



株式会社タテノコーポレーション http://www.tatenocorp.co.jp/

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2008年8月7日取材