2000.8.26
 繁盛するには理由がある
  温故知新、京の川床「がんこ高瀬川二条苑」
 人気廉価チェーン「がんこ」が伝統の川床に挑戦!懐石・ゆば豆富料理をリーズナブルに提供し大人気!
京の夏の風物詩「川床(かわゆか)」
鴨川沿いに並ぶ川床。手前が「がんこ高瀬川二条苑」
 京都の夏の蒸し暑さは有名である。三方を山に囲まれた地形が生み出す盆地特有の暑さは、「いけず」この上ない。その「いけず」な暑さからしばし解放され、心地よく過ごすために、京都人が考え出した空間が「川床(かわゆか)」だ。
 川の上にやぐらを組んだオープンスペースで、食事と水が醸し出す涼感を楽しむ粋な企画なのである。
夜の川床。舞妓の姿も見られる
 京都の川床は、鴨川と貴船が有名だが、鴨川の上にやぐらを組むのではない。鴨川に並行に走る禊川(みそぎがわ)の上に、鴨川西岸沿いの二条から五条の店が並ぶのだ。
 期間は、5月1日から9月30日まで。ただ、5月は昼のみで、夜の床は6月からの営業。
 さて、床の料理は高いというイメージが、京都人ばかりか、観光客にも根強くある。そこに価格ビッグバンを実行し、川床の顧客拡大に一役かっているのが「がんこ高瀬川二条苑」なのである。


夜の高瀬川源流庭苑














歴史ある高瀬川源流庭苑
 京の人々に古くから親しまれ愛されてきた高瀬川は、およそ380年前、京の豪商、角倉了以(すみくらりょうい)によって開削された水路。現在では木屋町二条に設けられた「一之船入(いちのふないり)」が国の史跡となっている。その高瀬川の源流になっているのが、了以の別邸跡、現在の「がんこ高瀬川二条苑」だ。
破格の値段で舞妓と遊べる宴会プランは主婦にも大人気
 


京料亭の起爆剤になるか!?「がんこ」商法
 「がんこ」は関西を地盤とする外食企業で、一般に「がんこ寿司」とか「居酒屋のがんこ」といった大衆的なイメージが強い。実際、店名に「がんこ」がついているだけで、イメージがグレードダウンするので、高級感にこだわる旅行会社からは、「がんこ」をとって「高瀬川二条苑」にしてほしいという要望もあるという。
 しかし、「『がんこ』が何か新しいことをやるらしい」と印象づけることもチェーン展開をしている企業には大切なことだ。「うるさい京都」では、意外や「がんこ」という看板が武器になることさえある。
 川床では、一人最低12000円かかるところを、飲み放題・税込で、8000円〜1200円(夜)という価格に設定したことも、「一般大衆」をコンセプトにした「がんこ」の看板があったればこそ。それが、若干2年目という川床を成功に導いた要因の一つなのだから。
 では、ここで、川床料理に舌鼓を打とう。

 
お話を伺った佐野店長
自家製豆富(とうふ)と鮎
 夜の納涼川床料理は三種類。6000円、8000円、10000円(税・お席料別)がある。2000円プラスで、飲み放題、税・お席料込とかなりお得になる。
 ここでは、10000円コースの「ゆうすずみ」を紹介しよう。
 吹き寄せは、くらげ白酢・鱧笹寿司・鶏肝村雨・押し豆富味噌漬・紫陽花海老・赤甘露梅水仙・串(花茗荷黄味寿司・一寸豆)・かますチーズ焼・鱚ゆば巻が彩りよく盛り合わされている。豆乳豆富と千石豆の清汁仕立ての吸い物。造りは、鯛・車海老・鮪とろ・いか。氷鉢は活け鱧おとし。中千代口は、自家製おぼろ豆富と生ゆば。冬瓜と新じゃがの冷製スープ。鮎の塩焼き、上寿司が並ぶ。そしてデザートは人気の豆乳杏仁豆富。
 豆富=豆腐は、自家製手造り。無農薬丸大豆のみを使い、豆乳度14・5度の高濃度の豆乳と伊豆大島の天然にがりで造られている。また、お土産用も販売されている。
 座敷で頂く御膳では豆乳ゆば鍋が供される。温かいゆばを先に頂き、にがりを入れてかきまぜる。3分間待つと温豆腐のでき上がりである。豆腐造りを楽しめる趣向になっている。
 もちろん、お昼の川床膳は、3500円(税・お席料別)と格安だ。
 
高瀬川御膳「いろどり」はお座敷料理として人気
「舞妓さんと懐石料理」の企画が大ヒット!
 今、人気を集めているのが、「舞妓さんと京懐石」と題した宴会プランだ。個室で懐石料理を食べながら、京都・祇園や宮川町の舞妓の踊りやお酌を楽しめる。本物のお茶屋では一人数万円かかるところを、5000円から10000円程度にしたのが売り物だ。この金額の差は一人一律の金額設定ではなく、人数割によって金額が変わることを示している。宴会の人数が多くなると、それだけ安くなるのだ。
 もちろん川床にも舞妓さんを呼べるが、川床では「舞」が禁止されているので、同席のみとなる。昼には主婦層に人気があるという。夜は、接待で使われることが多い。気軽に舞妓さんと話せることが魅力なのであろう。来店客の夢を壊さないためにも一流の舞妓を呼んでいるという。取材した舞妓さんは、ふく彩さんで16才。宴席の襖が開いて、舞妓が姿を見せると、「わあ、かわいい!」と歓声が上がった。現在、舞妓の質が落ちたと嘆かれているなかで、確かに彼女は「京の夢」を現実化していた。

お納涼川床料理「ゆうすずみ」
「食のディズニーランド」を目指して……
 同店ではこの他、坂本龍馬に詳しい霊山歴史館の木村幸比古氏の講演「龍馬京都恋めぐり」と宴会とのセットプラン(20人から一人6800円)や、同店で一次会を済ませた後、ニューハーフショーで二次会を楽しむ宴会プランが好評だ。

 平成7年の開店当時、庭園の存在に過信していたこともあるという。しかし、「食」も楽しませることが基本であり、庭園はその一つの素材に過ぎないと気づいた時、来店客に食を舞台に夢とロマンを与えたいと実感したというのだ。そして、川床をはじめ、斬新なプランが次々と生まれた。「高瀬川二条苑に行けば何かワクワクすることがありそうだ」というお客の言葉に励まされながら、今、「食のディズニーランド」を目指して、新しいアイディアが京都の地に育とうとしている。

「がんこ高瀬川二条苑」
京都市中京区木屋町二条下ル
電話:075(223)3456
営業:11時〜22時