2002.6.7  
チャイニーズと、欧州料理と次々に
お店を当てている男がいる
「紅虎餃子房」「胡同四合坊」 をヒットさせ
「リ・スコーピオン」、「ギーニョ・ギーニョ」
などのフレンチやスペイン料理にまで進出
中島武はレストラン界の
ヒットメーカーとして君臨している
● プロフィール
中島 武(なかじま たけし)
1948年生まれ。拓殖大学商学部貿易科卒。
60年東急航空(株)入社。その後、東洋ファクタリングを経て82年に独立。 東京都福生市においてアンティークテラーと店舗を営む。 90年に際コーポレーション(株)を設立し、翌年福生に「韮菜万頭」をオープン。
これをきっかけに次々となど独自の店舗づくりと漢字名を冠した中国料理店を矢継ぎ早に展開し、鉄鍋餃子や韮菜万頭を商品開発する。リーズナブルプライスからアッパープライスまでのチャイニーズ業態を積極的に展開する一方、「らーめん専門店萬力屋」のFC化を始め、イタリアン、カフェ、ダイナー、和食ダ イニングバー、 アジアンキッチン、おばんざいの店なども展開。加えて、うどん店、鶏専門店、カ レー専門店なども企画中。さらにフードビジネスのみにとどまることなく、衣料、アンティーク、レコード、雑 貨などの分野にも進出している。

新店舗を成功させ、レストラン業界のヒットメーカーとして活躍中。
同社はレストラン業のほか軽衣料、雑貨小売業も手掛けている。

 
マニュアルやマーケティングでは
絶対出てこないもの。
それがヒット作りの条件!!


 今、東京で人気のレストランといえば、中島武の名が出てくる。
 レストラン界のヒットメーカーとして、次々にユニークで人気のお店を出店させている際コーポレーション社長の事だ。
 広尾に北京ダック売上日本一の「胡同四合坊」、銀座に「紅虎餃子房」など、
独特のネーミングと店内装飾の店舗を出店し次々に人気店にしているのである。
 業態は和食から中華、欧風料理を経て、スペイン料理まで多岐にわたる。

「たぶんマーケットに合わせてモノをつくっていったら、今の時代はヒットさせるこ とは難しいでしょう。
 いわゆるマーケットリサーチやターゲット設定といったものに頼っていては難しいと いう意味です。
 バブルの時代を経験してしまった日本では、少しばかりのコケおどしなど誰も驚かなくなってしまっています。
 特に海外経験も豊富な女性たちはなおさらです。
 たぶん彼女たちを振り向かせるのは、彼女たちが見たこともないもの、経験したことのないものを持ってくるしかないと思います。それはいわゆるマーケティングではなくクリエイティブ仕事なのです」と中島氏は断言した。
 恵比寿の「胡同四合坊」は、中華風でもなし、無国籍ともいえない。なんとも不思議 な空間だ。
 でしゃばりすぎず、でもけっして普通でない。人の興味を引きつけずにはいられない中島ワールドが展開している。

 「私はできあがったものには興味はありません。料理の内容も店内装飾も、そのとき のひらめきやアイデアを大切にしたいからです。
 だから1ヶ月後に開店するお店のレシピもまだ考えてはいないのです。アメリカ流の マニュアルなど我が社には無用です。
 いってみれば私たちはクリエイティブな集団。店内装飾を担当するデザイナーも社内 で10人も抱えていますし、 私は一から教育をするつもりもありません。自分のセンスや能力をここで発揮したい という人だけを、私は受け入れます。
 社員の一人ひとりがクリエイターでありプロデューサー、そうした自覚がないと我が社ではダメです。
 既存の権威や流行に左右されない、そうした個性がないと新しいものなど生まれてこ ないと思うんです」

中島氏の言葉は、不況の中で新たな冒険を避けて無難な選択をしがちな経営者たちへ の強烈なアンチテーゼに聞こえる。
 失敗を恐れていてはヒットなど生まれない。
 時代の気分自体がちょっと保守的になっている今だからこそ、中島氏のキラリと光る 個性に人は魅了されるのだろう。
 「ヒットを生み出すには、ヒットを生み出せるような個性を集めること。
その個性を見出す目をもつこと。その個性が発揮できるような環境をつくること。
社員に規律やルールばかり押しつける会社、上司の顔色ばかり見る社員。
そうした旧態依然の体質を持った企業は、これからの時代に生き残れないと思いますよ」


ヒトマネで売れる店はできない

 「以前、経営の傾きかけたラーメン屋を1軒借りて、その保証金と、新しい厨房とクーラーの設置費用とをあわせ、全部で460万円という低予算で店を持ったことがあります。
 そしたらすぐに500万円の売上がありました。その店が、毎月1500万円ほど売れて、毎月の純利益が500万円くらいになっています。
 いとも簡単なことでした」 中島はすべて実践したことをもとに話をする。
「そこで分かったことは、人間のどういう嗜好が流行るかを徹底的に考えて、見つけ 出すということが一番大切だということ。
 海外情報が氾濫し、いろいろなレストランや料理を知るようになった現在、たぶん日 本人が一番味にうるさい。
 それなのに経営者が、システムだとかコストだとか、見当違いな勉強を一生懸命して いるんです。
 そんなことより皿の上をもう少し何とかしたほうがいい」

「どうしたらその店が当たるか、流行るかは、人のマネをしないことです。
 自分で商売をやりながら何かを開発していく。どうしたら人が喜ぶかを考えていくと、本当は大体分かるんです。
 僕たちがやっていることは、基本的に他店とそんなに変わらない。
 
うちの中華も中華という普遍なものは変わらないんです」 でもよその目から見ると違うのである。この辺を中嶋はこう分析する。 「そこは、トラディショナルにどうやって衣装を着せてあげるかということです。
 これからは、店のテイストがかなり良くて、値段は安いというのが流行る時代に入ります。
 うちの店のように、質感のある土壁を使ったり、古いアンティークのものを使ったり。
 そういう料理が美味しそうに感じる雰囲気づくりというのがあるんです。 そういうお店をつくって、料理も美味しくする。 どうしたら成功できるか考えるんです。
 世の中に何であんなに憎たらしいぐらい流行っているのかって店がありますね。
 僕はそれをずっと研究している。そこには必ず共通点があるんです」 スタイルと料理、そしてそれを提供する方法論が一貫しているからこそ、繁盛店は作 れるというのである。

普通は皆さん必ず、お客さんが来たら笑顔で迎えろって言いいます。
 何で笑顔で迎えなくちゃいけないのでしょう。いい商品をつくれば、笑顔はいらな い。
 うちの店でも、笑顔の分、売れる商品、味がしっかりした商品をつくれという指示しかしません。
 行列ができる繁盛店は、笑顔をつくる余裕はないんです」

際コーポレーション株式会社

代表取締役社長 中島武
【住所】 (東京本社) 東京都目黒区大橋2-22-8 千歳ビル
【電話】 03-3485-8157
【FAX】 03-3465-8145
【主な系列件】
『大連紅虎餃子楼』(中国家常菜)
【住所】 東京都港区新橋2-8-14
【電話】 03-5251-4390
【メニュー】 鉄鍋棒餃子・・・600円
『上海バール』
(レストラン&バール)
【住所】 東京都港区六本木6-2-31
     東京日産ビル1階
【電話】 03-5772-7655
『万豚記(ワンツーチー)三軒茶屋店』
(麺飯専家)
【住所】 東京都世田谷区三軒茶屋2-13-22
【電話】 03-3487-4551
『マンリキヤ 御徒町店』(麺飯専家)
【住所】 東京都台東区上野5-20-13 高架下
【電話】 03-3834-3666
【メニュー】 牛功天麺(カンフーメン)激辛牛肉めん・・・880円
『スコルピオーネ祇園』(イタリア料理)
2002年2月9日オープン
【住所】 京都府京都市東山区清本町381
【電話】 075-525-5054
【メニュー】 オードブル4品盛り 本マグロのトロの瞬間くん製 九条葱のムースと共に・・・1,800円 ぐじの炭火焼き 自家製ドライトマトのソース・・・2,200円
『パラダイスマカオ』(マカオ料理)
2002年2月15日オープン
【住所】 東京都渋谷区宇田川町39-5 1階
【電話】 03-3780-5231
『デモデ・クイーン』
(アメリカンダイナー)
【住所】 東京都渋谷区宇田川町39-5 3階
【電話】 03-3780-5232
【FAX】 03-3780-5232
平日 11:30〜5:00 日曜日 11:30〜23:00
『ギーニョ・ギーニョ』
【住所】 東京都千代田区有楽町2-9-1
【電話】 03-5219-2299
 ビジネスというのは、お金がないとか、銀行の反応を気にするよりも、まず自分がやっているその1軒の店を本気で繁盛させることだというのである。
 それにはやはり、トレンドをよく見極めることだという。

「それさえ抑えられれば、宣伝しなくても、ある日、行列をなすんです。
 日本のトレンドは、お茶の文化で箸を使う和食の文化、アジアの文化になります。
 その波に乗ろうと思えば、その文化を全部勉強しないとダメです。
 自分がわかる範疇で運営方針やメニューを決めてしまえば、まず店は流行りません。
 お金を払ってでもコンサルタント会社に頼んだ方がいいんです。
 そして、飲食店で一番大事なのは、値段の上げ込みと落とし込み。
 しかも、こなしのうまさがなくてはいけない。味のひとひねりもこなしの一つなんですよ。うちの杏仁豆腐は、ブランマンジェのレシピと、それに杏仁酢をいれて美味しいのをつくってます」 この工夫が更なる客を呼ぶ秘訣なのである。

「まずは、よりはっきりした味を提供することが必要です。ベストセラー商品はずっと売れています。
 味が強いのが特徴なんですね。そのくらいビビットなものでないと、人は食べた後に 忘れちゃう。
 忘れさせない味、美味しいと思う味をつくることです。それともう一つ、他人に言ってくれる味というのがあります。
 うちのタンタン麺が大好きで、人を連れてきては「食べてみろ、すごいだろ」って人 に勧めてくれるお客様がいらっしゃいます。
 一個でいいから、そういう目玉商品を造ることが大切なんです。
 それは必ず街でうわさになります。フードビジネスの勉強をするのと併行してそれを やるといいですね。
 誰かの言葉ですが、金を追いかけるヤツより、ものをつくろう、考えていこうとする 方が、人間のレベルが高い。
 だから僕たちは、食文化という中で、高いグレードのものにもチャレンジしていく。
 そして日本の皆さんにこよなく愛されるレストランを出店していきたいんです」。
 中島の商機はこの日本でまだまだ続くようである。