2004.4.18  
 サラダやバケット、ショートケーキなど デリやスイーツそっくりにアレンジした花束が人気を集めている。 見ているだけでも、甘い香りが漂いそうな 楽しいフラワーアレンジが女性客の心を掴み、カフェやレストランのテーブルフラワー としても注目を集めそうだ。
第一園芸株式会社 佐久間裕子さん(左)と可児 英人氏(右)
デリショップがコンセプトのお花屋さん
第一園芸の「フラワーノート」


 Deli Cafe"Daily Essence Livin'In Flower" 「日々の暮らしに花習慣を」 女性に人気のデリスタイルのカフェを コンセプトにしたフラワーショップ 「フラワーノート」が4/24(土)、自由が丘にオープンする。
 運営しているのは、生花ビジネス老舗の 第一園芸株式会社。
 青山を始めとしたショップ展開や、 ホテルなどの装花ビジネスをメインとしてきた同社であるが、より気軽に花を身近に楽しんでもらう店舗をプロデュースした。


自由が丘にオープン予定の
フラワーノート概観予定図
 「野菜や果物を買って頂く感覚でふらりと立ち寄って、自分のためにあるいは、ちょっとしたプレゼントに買って頂けるショップをオープンします。
 従来、第一園芸のお店は、ガーデニングを楽しんだり、贈答用に高価な生花を購入していくような、ゆとりのある中年層のお客様が中心だったのですがマーケットを20〜30代といったやや若い年齢層まで拡大するために、フラワーノートをオープンします。季節の移り変わりをビジュアルで表現したり、デリやスイーツの味わいをイメージして頂けるフラワーアレンジを揃えたお店です」と紹介して頂いたのは、第一園芸社営業推進セクション販売促進チームの佐久間裕子さん。


パリのバケットをイメージした
フルールバケット
 一年間の中でお花が売れるのは、 母の日やクリスマスといった4つのメインイベントがある。
 フラワーノートでは、1年を24シーンに区切り "歓送迎会とワイン""お花見とランチボックス"といった 食もからめながら、より身近な生活スタイルに密着した商品を構成した。
 販売予定の商品は、ケーキやカフェの飲み物をイメージした "フルールスイーツ(1050円〜3150円)"。
 サラダバー感覚で好きなお花5本をチョイスする "フルールサラダ(5本 368円)"
 細長くてお洒落なパリのバケットをイメージした "フルールバケット(525円〜1050円)"。
フラワーデザイナーの
新井 光史氏
 パリで最も人気のあるラウンド型のブーケ "ブーケロン(840円〜1680円)"など。
 若い女性にも手が届きやすい価格帯と、気分に応じた色を選びやすいようにカラー別に並べるなど手に取りやすい商品を取り揃えた。


 こちらのフラワーノートの商品開発を行ったのは、第一園芸を代表するフラワーデザイナーの新井光史氏。
 一流ホテルの装花デザイナーを務め、海外でも活躍した人物。

 まさに一流シェフがメニューをつくった味を、自宅で気軽に持ち帰って楽しむ趣向だ。


 
 
ケーキボックスのテイクアウトスタイル
カフェ巡りをした
女性スタッフのアイデアを形に


 「弊社には女性スタッフが数多くいます。
 彼女たちはカフェやインテリア雑貨店などの情報には敏感で非常に感度が高いですね。
 そういった女性スタッフが、コンセプトを決めていきました。」
と語るのは、営業第一本部 本部統括担当リーダーの可児英人氏。

 女性スタッフからは、ケーキのショーケースのような見せ方や、 ケーキボックスと同じテイクアウトスタイル、 カフェスタッフのようなエプロンとベレー帽といったユニフォームのアイデアなどが飛び出した。


パリで一番人気のラウンド型ブーケ 
ブーケ・ロン
 「フランスでは、l'Art De Vivre(暮らしのアート)という言葉があって、毎日の生活を美しく楽しみ、積み重ねていくことを大切にしていく文化があります。
 日本の女性も、忙しい毎日の中で、心地よい暮らしを楽しむために、ガーデニングほど手がかからず、ちょっとした自然のエッセンスを取り入れることを楽しんで頂けるとよいですね。
 1号店がオープンする自由が丘には、自宅のリビングにいるような感覚で楽しめるカフェやレストランもたくさんあります。今後はこういったお店でもスイーツ&カフェスタイルのフラワーノートの商品を取り入れて店舗演出をして頂ければ嬉しいです」
と語る佐久間さん。

 第一園芸では、フラワーノートの1号店となる 自由が丘店をスタートとし、 新たなショップコンセプトの店舗を展開していく。

 
 
日比谷花壇 フラワーデザイナー 
西澤 真実子さん
箱を開けると驚きのプレゼント
"フラワーパティシエ"


 フラワービジネス最大手の日比谷花壇が プロデュースするのは、ケーキをイメージして作ったお花でできたアレンジメント「フラワーパティシエ」。
 ショートケーキをイメージしたスイートベリーは、 カーネーションとスプレーバラを使用し、ラズベリーとブルーベリーのオーナメントをのせたもの。
 白と赤のコントラストが何とも可愛らしい商品だ。

 フラワーパティシエを開発したデザイナー、日比谷花壇 BtoC事業部 販売企画部商品企画開発グループの西澤真実子さんにお話をうかがった。

フラワーパティシエ「スイートベリー&ピーチシュガー」
 
「日比谷花壇のお花を購入するお客様は、やはり誕生日や記念日などアニバサーリー需要で買う方が多かったのです。
 お誕生日といえば、ケーキを囲んでお祝いしますよね。
 そこで、お皿の上にホールケーキを盛り付けてサーバーでみんなでひとつづつ頂けるようなケーキそっくりの商品を開発できないかと考えました。
 日本人が一番大好きなショートケーキを見ながら、試行錯誤して商品開発を行い、花材は、花びらのフリルが生クリームを思わせるカーネーションとスプレーバラを選びました。
 この花材は、色も豊富に揃っているのでいろいろな種類のケーキを作ることができます」


フラワーパティシエ
「フロマージュブラン」
 ショートケーキから、季節に応じた商品も展開。 ここのところ人気が続いているスパイス入りのチョコレートを意識して開発された「ブラウンシュガー」はアニスを載せたり、流行色として話題のピンクやオレンジを使用した商品など、ファッション性をかなり意識したラインアップとなっている。

  「今、パティシエさんが造るケーキが  すごくお洒落になっていると思います。デザイナーズケーキと言われているように芸術的な色や形のスイーツがどんどん市場にでてきていますよね。雑誌などスイーツ特集は、随分読んで参考にしました。フラワーパティシエに限らす、他の商品を開発するときにもスイーツを参考にしたり、影響されることもあるんです」 と笑う西澤さん。

 フラワーパティシエを購入する年齢層は 若い女性から、子供の誕生日パーティに 使用する主婦、年配の方までと多岐に渡っている。意外なところでは、男性客が購入しているケースが多いそうだ。


「aosis records」とのコンピレーション・アルバム フラワーパティシエ
 「日本では、男性が女性に花束を贈るのはまだまだ照れがあるようですね。女性から見ると、電車の中などで花束を抱えている男性は、恋人にプレゼントするのかしらと思って素敵だなと感じるのですが、男性の立場では恥ずかしいみたいですね。フラワーパティシエシリーズは、持ち帰るときにケーキボックスに入れるので、一見するとお花を抱えているようには見えないんです。  開けると、ケーキそっくりのお花が出てくるのでプレゼントされた女性にとっては2重の喜びになるのではないでしょうか」

 日比谷花壇では、花と音楽とのコラボレーションも提案し、ビクターエンタテイメントのレコードレーベル "aosis recordes"から「フラワーパティシエ」シリーズのCDを発売。現在までに春夏秋冬の季節に合わせた4枚のCDをリリースしている。

 
 
フラワーノートの商品は、テーブルをよりおいしく演出
女性客のセルフプロデュースが
モノ選びのカギに


 かつて女性客に向けた商品やサービスを提供している企業は、自社の製品をより魅力的にみせる店舗を造ればよかった。
 ところが、現在ではお客様の5感に訴えるようなトータルな演出が必要となってきている。 例えば、カフェやレストランが店舗で使用している食器やエプロンなどを販売したり、カフェや雑貨店発の音楽が注目されるなど、より情緒的に訴える販売手法に変えてきているようだ。

 こういった背景のひとつには、女性客が自分を魅力的に見せるセルフプロデュースを始めたことと関係があるのではないだろうか。
 若年層の間では、かつてアムラーやアユラーなどが発生した通り、安室奈美恵や浜崎あゆみといったカリスマファッションリーダーが君臨していた。
 一世を風靡したファッションリーダー不在の今、コギャルファッションを卒業した女性は "ギャル系""オネェ系"などに代表されるイメージによるファッションを選択し始めている。

 いわゆるアイドルやタレントのファッションには 注目しなかったやや上の世代でも、かつては女優やスーパーモデルがファッションのお手本となっていた。
 現在、流行を作り出すと言われるF1世代の女性の間では、誰かのスタイルをそっくりそのまま真似するのではなく、手本となるような要素を少しずつ取り入れながら、自分の顔立ちや職業に合わせて"よりセクシーに" "洗練された大人の女性"というように目指すイメージに近づけて、自分らしさを演出している。
 なりたい女性像に近づくには、ヘアスタイルやメイクを含むファッションのみならず、食べるものや、飲むもの、聞く音楽や住む部屋とインテリアまでイメージに合うモノが必要になってくる。


日比谷花壇では、フラワー&スイーツの組み合わせも提案
 彼女達が選択するモノ選びの基準は、セルフプロデュースを助けてくれるモノ。
 カフェやレストランに行くにも、味はもちろんインテリアやテーブルフラワーに至るまで、自分好みの演出がされていたり、取り入れたい要素があることが重要だ。

 お洒落なカフェやレストランで、ゆったりと過ごす時間と、楽しむ自分自身が大好きな女性客。
 テーブルフラワーは、彼女達の目にも止まりやすく「花と過ごす潤いのある生活」をイメージできる。
 このお花はどこで買えるんですか? そんな質問が女性客から出てきたら、彼女達のアンテナにひっかかる店舗のイメージづくりの第一歩が成功するのではないだろうか。
 

<取材協力>
Flower note  
  東京都目黒区自由が丘2-8-15
第一園芸株式会社HP  http://www.daiichi-engei.jp/
日比谷花壇 日比谷公園店  
  東京都千代田区日比谷公園1-1  
TEL:03-3501-8783

株式会社日比谷花壇HP http://www.hibiyakadan.com/
 
 
取材・執筆 本誌編集長 石田 千代 2004年4月18日