2004.5.30
 際コーポレーション、フードスコープ、BYO、スティルフーズ etc・・・
 今をときめく外食企業のオーナーが 指名する店舗デザイナーが、 エイジ 代表取締役の佐藤一郎氏。
 年間80軒を手掛ける売れっ子デザイナーである 佐藤氏に、現在の店舗デザインについて語って頂いた。
● プロフィール
佐藤 一郎(さとう いちろう)
1962年 東京生まれ
1984年 桑沢デザイン研究所卒業
1984年 スーパーポテト入社
1993年 インテリア素材を扱うスーパーポテトプロダクツ :(株)晴耕社代表
1996年 スーパーポテトを退社。同年9月にエイジ設立
2000年 事務所を富ヶ谷に移動すると同時に、自ら経営するカフェ「パパイヤ」を開店
桑沢デザインと、スーパーポテトの杉本氏との運命の出会い
  「そもそもは、普通の大学生でした。
その頃、サーフィンブームだったので、
夏は葉山、冬ばスキー場などで
住み込みのアルバイト三昧の日々でした。
その頃は、下北沢に住んでいたので友達の中には、
飲食店でアルバイトしている人も 多かったですね。
そんなことからも当時から飲食店に興味がありました。
また、父親が自営業だったので大学を卒業してから
普通の会社員になるという発想があまりなかったのです。
その当時付き合っている彼女が桑沢デザインに通っておりまして、
話を聞いてみると、内容にも興味がありましたし、
夜間であれば学費もアルバイトでまかなえる金額でした。
 そんなことから、大学に籍をおきながら昼間はアルバイト、
夜は桑沢に通うという生活でした。
 桑沢デザインでの授業は、講師も一流でしたし、
受講生も50歳を過ぎた方から、芸大受験に失敗した人が
専門学校代わりに通っている人。
非常に刺激的でしたね。
自分の生きる道はこれだ!と確信しましたね」
  
エイジ事務所の横にオープンしたカフェ
「パパイヤ」

とにこやかに語る佐藤一郎氏。
 その後大学は中退したが、桑沢デザインの方は きちんと通い、2年で無事卒業。
 卒業間近に桑沢の先生から、空間デザイナーの杉本貴志氏率いるスーパーポテトを紹介された。
 杉本氏と面接をした際、そのパワフルな熱意に圧倒され、入社を決意する。

 当時は、DCブランドブーム。
 スーパーポテトでは、様々なブランドの ブティックのデザインを メインに手掛けていた。
 一方、スーパーポテト代表の杉本氏は「春秋」に代表されるレストラン運営にも乗り出していた。
 杉本氏は、店舗デザインのみならず、業態、料理、サービスについて全てをプロデュース。
 そういった意味で、今までバラバラの人が担当していた分野を 一人の人が手掛けることで、一貫したスタイルの店舗を造り上げることができたのではないか、と佐藤氏は語る。

 佐藤氏がスーパーポテトに在籍していたのは、12年。
 杉本氏は作品のデザインにおいて、絶対に妥協をしなかったそうだ。
 またメインとなる建材には市販のものを使用せず、自らマテリアルを造り上げる。
 こういった姿勢には、おおいに影響されたという。
 1993年には、スーパーポテトがデザインする空間に使用する、オリジナルのインテリア材料を制作する会社、(株)晴耕社の代表まで務めた。
 この時は全国を飛び回り、船を解体した鉄板を手に入れたり仏像の鋳物のカケラを手に入れて、壁の材料にしたりすることもあった。
 

「杉本さんは、独立志向のある人しか雇わないんです。
実際、スーパーポテトから独立した橋本夕起夫さんや飯島直樹さん、
などデザイナーとして活躍されている方も
たくさんいらっしゃいなすよね。
杉本さんもそれをよくわかっていてここにいる間は、お給料をもらいながら勉強しろ。
自分で稼げるようになったら独立した方がいいと勧めていました」
  

とは言っても、自分の名前で仕事ができるデザイナーは一握り。
飲食店経営者と同じように、厳しい世界なのだ。

   
 
   
 
コンペで勝ち抜いたブティック
TAKEO KIKUCHI」
思い通りの仕事のためには、営業はしない

 1996年、佐藤氏はスーパーポテトを退社。
 デザイン会社である(有)エイジを立ち上げた。
独立した際の最初の仕事が、中庭をうまく生かした一軒家の和食店である西麻布の「月の庭」。
 オーナー兼デザイナーである緒方信一郎氏とのコラボレーションで設計した、段地を生かした独特のアプローチをもつ 中目黒の和食とバーの「HIGASHIYAMA TOKYO」。
 こうしてみると、順調に仕事が入ってきたような印象を受けるが、実は立ち上げ当初は、 自ら営業をしなかったこともあり、2年ほど仕事がほとんど入らなかったこともあったという。

   
  「自分でお仕事を頂けないでしょうか?
と頭を下げると店舗のデザインでも、
その方の言いなりになりますよね。
やはりある程度、自分の納得いく仕事をしたいと思いましたので。
それと、店舗をつくるときには非常にお金がかかります。  
数千万円の大金が動くわけですから、
失敗するのが怖かったのだと思います。
実は今でも不安なんですけれどもね」
   
今をときめく数多くの飲食店オーナーさんからデザイナーとして指名される佐藤氏であるが、そうなるまでには、紆余曲折あったようだ。
   
  「最初の半年間は1人。その後2年間は2人で仕事をこなしていました。
そんな時、イデーの黒崎社長のご紹介で、
それまでイデーが手掛けていたTAKEO KIKUCHI のブティックの
改装のコンペに参加することになりました。
アパレルの場合、だいたい4年間で全ての百貨店の店舗の改装が終わります。
1年間で20軒づつくらいでしょうか?
このタイミングで、次のクールの
改装のコンペがあり7名くらいの中から選ばれました。
これを機に、CADができるスタッフなども必要になって
慌てて増員することになりました」
   
現在、エイジでは10名ほどのスタッフが働いている。
   
   
   
  店舗の個性は、レイアウトで決まる

 どんなお店にしたいのか、オーナーの信念が はっきりしていることが大事だと語る佐藤氏。現在の店舗デザインについて、どのように考えているのだろうか?

スティルフーズが経営する韓国料理店 ユンヒ外観(左)と内観(右)

   
  「店舗をデザインするのは、まずキッチンから。
キッチンの位置は、作業効率を考えて
一番良い場所に配置することもありますし、
逆に入口すぐの場所に配置することもあります。
本来は邪魔なのですが、
エントランスからオープンキッチンを横目にして
お客様に感動を与えてから、
席につくということが良いこともあります。

物販の場合というのは、
レイアウトがほとんど決まっておりまして入口付近に、
スーツやコートなど高額な商品が
ズラリと並べてあるのはダメなんです。
やはり、お店に入ってすぐは
シャツやネクタイなどの小物があって
お客様に気軽に手にとってもらうことが必要なんですね。

飲食店の場合は、いろいろなレイアウトのやり方があって
それがお店の個性に繋がっていきます。
特に和食店の場合は、料亭やお寺のような
日本の建築のあり方を意識してデザインしますがこれも、
レイアウトで決定します。
壁や照明に関しては、最後に決めれば良いことです。
こういった部分だけ取り入れてしまうと、
なんだか個性の無いお店になってしまいます。

飲食店のオーナーさんからは、
いろいろな要望がありますがかっこ悪いお店はやめようよ、と言っています。
要望を取り入れつつ、こんなアプローチもあるんだよといった例を
いくつか見せながら決めていきます。
最近になって、老舗のお店や、
話題のお店をいくつも手掛けている外食企業の方からも、
お仕事を頂けるようになってうれしいですね。
自分と世代が近い人もいれば、
もっと若い人もいるので様々な刺激が受けられます」
   
   
   
 
今年の8月にオープンする予定の「えん」
(写真は佐藤氏が設計したえん 汐留店)
NYに「えん」がオープン

 現在、佐藤氏は日本国内のみならず、 海外進出へも向けて準備を進めている。
 今年の8月には、NYへ和食店「えん」を オープンする予定となっており、忙しい毎日を過ごしている。
 余談であるが、NYでは日本のように 「東京カレンダー」「HANAKO」 「OZマガジン」といったレストランを 数多く特集する雑誌は無い。
 従ってファッション誌やビジネス誌に数軒の レストラン情報が掲載されるだけなので 宣伝活動は限られたものとなる。
 このため、たいていのお店では "ソフトオープン"といってグランドオープン前にお店を開ける。
 メディアやフードライター、ハリウッドのセレブリティ、NOBUに代表される著名レストランのオーナーなどを 招待し、無料で飲食をふるまい上手くいけば口コミしてもらうのだ。
 この期間は、大抵1ケ月くらいということだが、大きなお店では何と3ケ月にも及ぶということだ。

    「BYOの楊社長の妹さんが、
NYにいてあちらのレストラン事情にも詳しかったんです。
楊社長や中野総料理長とも話しをして、
シンプルに出汁をきちんととった和食店にしよう、ということになりました。
デザインはもちろん、
和風建築になるのですが町屋風とか全て小上がりという店はNYでは逆に、
奇をてらうのでやめました。
使い勝手の良さも考えて、
NYのスタンダードであるラウンジバーと、
ディナーを食べられるダイニング、
和食店には欠かせない個室の3コーナーに分かれています。
メインの客層は、30代くらいでしょうか?
今、NYで一番受けているレストランのように
熱いお店になると思いますよ!」
  取材・執筆 「飲・食・店」新聞フードリンクニュース 編集長 石田 千代 5月30日