フードリンクレポート


二代目「すた丼」店主、全国制覇をめざす!
アントワークス株式会社
代表取締役 早川秀人氏

2007.8.10
三多摩の学生の腹を満たし続けて35年。団塊の世代の中にもお世話になった人が多い伝説の「すた丼」。初代亡き後、2代目として、アントワークスの早川秀人社長が引き継いだ。早稲田、品川「品達丼五人衆」にも出店。セントラルキッチンと自社物流を武器に全国制覇を狙う。



「すた丼」このボリュームで550円


35年前から学生の腹を満たしてきた「すた丼」

 1972年、「すた丼」の生みの親である先代、橋本省三が、発祥となる「サッポロラーメン 国立店」を開店。 ここで「すた丼」が誕生した。

 橋本氏は「オヤジ」と呼ばれ、若いお客に慕われていた。お金の無い学生に腹一杯食べさせてやれるメニューを考えた。まずは、チャーシュー丼を独自に開発し、ヒット。そのおよそ2年後に現在の「すた丼」を誕生させた。

 国立は一橋大学があり、安くて腹一杯になる「すた丼」は、若者の間で大人気になった。一橋大学の学園祭では、毎年恒例で「すた丼早食い競争」が行われるほどだ。


発祥の「サッポロラーメン 国立店」

 調理法は、

「たっぷりの豚肉を高熱の油の中に泳がせ、油を切った後、シャキシャキの長ネギと一緒に秘伝の特製ニンニク醤油と絡め超強火で炒め上げる。でっかい丼にホクホクのご飯をたっぷり盛って、のりを敷き、その上にドカッと乗っけて生玉子を落とす。脇に沢庵を添えて、ハイ、一丁あがり。お待ちどうさまでした」(同社パンフより)

 味が濃くて、ニンニクの強い香り。ご飯、豚肉ともにボリュームがあって、550円(品川店は600円)という価格には驚かされる。


橋本のオヤジ亡き後、早川が二代目に

 早川社長はアルバイトとして国立の1号店で働いていた。82年には「すた丼」を主力とする2号店「すた丼の店 国分寺店」を開店。その後、89年に有限会社アントワークスを設立し、橋本社長の下、国立本店店長の丸田氏と2号店店長の早川氏は取締役となった。

 92年に「すた丼の店」2号店を国立に出した後、「橋本のオヤジ」がガンに倒れた。「皆で『すた丼』を全国に広げようと誓いました。社長は年上の丸田氏に務めてもらいました」と早川氏。

「全国に広げるために、セントラルキッチンを作ろう」。別に有限会社ベジータを設け、早川氏が社長となり、食材仕入れを1本化しコストダウンするとともに、セントラルキッチンを作った。


「伝説のすた丼屋」

 アントワークスは「すた丼の店」を展開していたが、ベジータは仕入れ部門を担当するだけでなく独自に「伝説のすた丼屋」を2004年早稲田に出店した。「仲たがいした訳ではなく、『すた丼』は働いているみんなのもの。皆でドンドン広めていけばいいと思っていた」と早川氏。

「2社で別々にやっていこうとしたが、その必要がない」と06年7月に合併。早川氏は、全体の代表となり、丸田氏は取締役として活躍している。


都内、早稲田・品川に進出

 04年に早稲田に「伝説のすた丼屋」を出店し、初めて都内に出した。学生だけでなくサラリーマンも掴めることで自信を付けた。06年には京急品川駅高架下の、丼テーマパーク「品達丼五人衆」内に出店。「品川に不安はあったが、日本全国から選ばれたことが嬉しかった」。初日から他店をリード。600円と安価なので、売上金額では2位だったが、来客数は1位。


「品達丼五人衆」。京急グループが京急線・品川駅の高架下に「品達ラーメン 麺達七人衆」に次いで、06年5月にオープンさせたフードテーマパーク。


「品達丼五人衆」の入口という好立地にある。

「今後の出店は『伝説のすた丼屋』。三多摩地区はリピート客ばかりなので『すた丼の店』を残します」。現在10店舗と、総菜店1店舗。セントラルキッチンから自社物流で直営店に食材をチルド配送を行っている。

「直営とFCでの展開を模索中です。投資面で厳しいので、FC化をしたい。しかし、単純なFCでは『すた丼』の味が落ちる。売れれば良いとは考えていません」と早川氏。

 お客の9割がリピーターで、9割が「すた丼」を注文するという状況では品質へのこだわりが暖簾を守る上で重要課題となってくる。


7年後、50才になるまでに全国制覇

「8年前から多店舗展開をしようと思っていました。しかし現場の人間ばかりなのでノウハウもない。いろんな人に会って勉強していましたが、出店スピードは遅かったですね。オヤジへのこだわりが強く自分の中に残っていたようです」と早川氏は反省する。

「会社には古い人間が多く、彼らは『橋本のオヤジ』『すた丼』に対する愛情が強い。私は、今は過去にこだわっていません。昔の話は、今の若い人には通じないと思います。でも、古い仲間の考え方も分かり大事にしたい。他方、多店舗展開するには若い仲間を増やさなければならない」と早川氏はジレンマに悩む。創業者ではないゆえのスタッフへの気配りが感じられる。


「伝説のすた丼屋」店舗スタッフ

 現在、11店舗で売上高10億円を達成。客単価600〜610円。原価率33〜34%。FL値は65%と高コスト。「薄利多売でやってきたが、今後はFL値60%を切りたい」と多店舗展開に向けて、意欲を示す。

 7年後には全国制覇が目標。まずは、古い仲間と新しい仲間のジレンマを解決して組織を固め、都内で重点的に出店する計画だ。ファストフードに新たなチャレンジャーが登場した。




早川 秀人(はやかわ ひでと)

アントワークス株式会社 代表取締役。1964年、東京都生まれ。20余年前、「すた丼」の生みの親である先代、橋本省三と出会い、その人、丼に惚れ込み今日に至る。世界で一番「すた丼」を食べ一番「すた丼」を愛していると自負する男。

アントワークス株式会社
 http://www.antoworks.com/index.html


【取材】 安田 正明(やすだ まさあき) 2007年7月26日