・アメリカのセレブにモテるシャンパンはゴールドのボトル
シャンパン、スパークリングワインの勢いが止まらない。
シャンパーニュ協会日本支部の統計によれば、2000年のフランスから日本へのシャンパンの出荷量は約318万本(750mlで換算)であったのに対して、06年には前年比134.9%の800万本台を記録し、ますます関心が高まっているようだ。
そうした中で舌の肥えた愛好家の間では、「ドン・ペリニヨン」を擁する「モエ・エ・シャンドン」、「ヴーヴ・クリコ」、「クリュッグ」といった大手メゾンのシャンパンばかりではなく、昔ながらの製法で極上の味を守り続ける家族経営のような小規模生産者の製造する流通量の少ない、レアなプレステージ・キュヴェに注目が集まってきている。
代表格と言えるのが、ゴールドボトルにスペードのエースが装飾されたゴージャスさによって、アメリカのセレブの間で今、最もステイタスが高いとさえ言われている「アルマン・ド・ブリニャック」である。
アルマン・ド・ブリニャックゴールドボトル
アルマン・ド・ブリニャックのロゴ
ゴールドボトルはあの著名なファッションブランド「クレージュ」がデザインしたもので、ピューターのラベルはフランスのコニャック地方に唯一残った装飾業者の2人の職人が、手作りして貼っているという手の込みようだ。黒いベルベット製の専用バッグに入っているのもおしゃれだ。
ランス郊外のモンターニュ・ド・ランス地区シニー・レ・ローズ村に本社と畑を持つキャティア社が昨年より売り出すとともに、シャンパン好きで知られるラップミュージックのスター、Jay-Zが曲のリリックやビデオに登場させて話題を集めた。
生産量は06年が2万4000本、07年が4万2000本。ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエというシャンパンの原料となるブドウを3分の1ずつブレンドし、伝統的な醸造法にこだわってつくっている。
キャティア社は18世紀に創業した家族経営のメゾンだが、エールフランスのファーストクラスや、パリのマキシムのハウスシャンパンに採用されるなど、品質の高さでは定評があり、実績のあるシャンパンメーカーである。
「アルマン・ド・ブリニャックはアカデミー賞の授賞式、ベッカムがアメリカのプロサッカーリーグであるロサンゼルス・ギャラクシーに移籍した時のウェルカムパーティー、ビヨンセのコンサートのVIP席などで出されていて、認知度が高まっています。パーティーに映えるボトルと飲みやすくてフルーティーな味と香りが受けています」と輸入代理店ベネフィットヒルズの甚野芳一社長。
価格は5万2500円だが、並行輸入経由だと8万円くらいすることもある。
12月15日には新しくロゼ、来春にはシルバーボトルが発売される予定で、「アルマン・ド・ブリニャック」の人気は日本でも徐々に浸透しそうである。
・百貨店でもシャンパンコーナーを拡大しフェアを打つ動きも
シャンパン、スパークリングワインのブームに対応して、百貨店でも売場を強化する動きがある。
活況を呈する銀座の新商業施設「マロニエゲート」のオープンより2週間後の今年9月14日に、リニューアルオープンした「プランタン銀座」本館地下2階リカー&ワイン売場では、新しくシャンパン&スパークリングワイン専用コーナーを設け、各国の約150種類を展開している。
プランタン銀座のシャンパン&スパークリングワイン百選イベント売り場
プランタン銀座
このコーナーが好評を得ていることから、11月13日〜26日、クリスマスシーズンに向けて、フランス産の「シャンパン・スパークリングワイン百選」イベントを開催。協賛はフランス農水省、フランス食品振興会(ソペクサ)。
同売場のワインアドバイザー・石塚尚俊氏が2000円台のお手頃価格から、ちょっとぜいたくな1万円くらいの本格シャンパンまで、コストパフォーマンスの高い100種を厳選した。平日に10種、金土日に20種が試飲できるのが売りで、会期を通じて全100種が試飲可能。シャンパンやスパークリングを試飲する機会は意外と少ないので、顧客に喜ばれているようだ。
「価格は2000円台のコストパフォーマンスの高いものの動きが良いです。30代ぐらいの男性に人気で、まずは自分で味を試してから、気に入ったものを再度購入し、身近な人に振舞うといった傾向があるようです。売場では、リピーターのお客様が多く、口コミで広がっているのを実感するとのことです。週末になると、カップルで来店されるお客様も増え、店内は賑わっています」と、広報の和泉紀子さん。
石塚氏のセレクトには家族経営の流通量の少ない商品も含まれており、そういった掘り出し物を見つける楽しさもある。
また、マガジンハウス発刊の雑誌「ブルータス」2007年11月15日号でも、シャンパンが特集され、大手のプレステージシャンパンや、自分の畑で採れたブドウで自家醸造するレコルタン・マニピュランという、こだわりの小生産者にスポットが当てられている。
さらに、大手「モエ・エ・シャンドン」においても「ネクター・アンペリアル」という、トロトロとした桃の風味が口の中でネクター飲料のように広がる甘口シャンパンは、現地フランスでも入手困難というレア商品で、日本でも入荷すれば即完売になるほど密かに人気がある、幻のシャンパンである。
このような動向からも、シャンパン、スパークリングワインの市場も成熟してきて、単にブランドの知名度で買う時代から、大手、中小のメーカーを問わず消費者が自分の舌と価値観で選ぶ時代に入ってきたと言えるだろう。
・シャンパンの飲み口を目指した発泡清酒「すず音」がヒット
シャンパン、スパークリングワインのブームは、日本酒の分野にも影響を及ぼしている。
シャンパンのように発泡性のあるさわやかな飲み口でアルコール度が低い、発泡清酒が登場し、まだ数量的には少ないものの、落ち込みが目立つ日本酒のカテゴリーの中にあって、純米酒と並ぶ数少ない好調な分野となっている。
発泡清酒のトップブランドとして知られるのは、宮城県の仙台の郊外、大崎市にある一ノ蔵が製造販売する「すず音」である。
発泡清酒のトップブランド「すず音」
「すず音」は1999年2月に全国発売を開始し、06年には約81万本を出荷している。発売以来、毎年出荷量は増えており06年は前年比で107%となっている。
この淡雪色のお酒は、特許を取得したビン内発酵法を用いて製造されており、グラスに注いだ時に細やかに立ち上る泡は、ビン内発酵により酒中に閉じ込められた炭酸ガスによるものだ。アルコール度数は4.5%〜5.5%と一般の日本酒よりも低く、甘くて酸味もほどよくきいた味は、従来の日本酒のイメージとは異なる新感覚のお酒だと言える。
一ノ蔵は既に、米だけで造る白ワインにも似た甘味と酸味が特徴のアルコール度数8%という、低アルコール酒「ひめぜん」の開発に成功していた。それならば乾杯の席にも欠かせないスパークリングワインのような、さらに低アルコールのお酒も生み出せるはずとの確信を持って、4年の研究開発を経て誕生したのが「すず音」なのだという。
同社マーケティング部によれば、開発の狙いは「日本酒はアルコール度が高く、お父さん世代が一升瓶を抱えて酒を酌み交わすものだというイメージがどうしても強かったので、若い世代、特に女性が手を伸ばしにくい存在だった。そのイメージを打破したかった」とのこと。
現状「すず音」は低アルコールをベースにした戦略も成功して、20〜40代の女性、若年層を中心に売れており、狙いは当たったのである。
当初は、低アルコール酒の残糖分を二次発酵させるシャンパンタイプの複雑な工程を経るため、ごく少量のテスト販売から始め、営業マンが1店1店の酒販店を回って地道に営業するスタイルで販路を開拓していった。当時他に類を見ない甘酸っぱい発泡性の清酒であったことはもちろん、要冷蔵で賞味期限が約10日と取り扱いが難しい商品であることから、厳しい状況が続いたが、全国ネットのTVの出演者が、おいしいと一気に「すず音」を飲み干したのが切っ掛けで蔵元に問い合わせが殺到。
少量生産で応じ切れなかったため、「手に入りにくい珍しいお酒」との評判がクチコミで広がって、ヒットにつながったそうだ。
03年冬のシーズンより、地元で採れた黒豆・紫黒米の色素を加えてピンク色に仕上げた「花めくすず音」を、クリスマスシーズン、春先、夏場とイベントの多い時期年3回のスポット企画としては発売しており、今年は例年以上の盛り上がりを期待したいものである。
ピンク色に仕上げた「花めくすず音」
・ミネラルウォーターで無糖炭酸水を開拓した「キリンヌューダ」
炭酸の人気は酒類のみならず、ミネラルウォーターの市場にも及んでいる。
昨年2月にキリンビバレッジが、無糖炭酸の発泡水「キリンヌューダ」(500ml)を発売。コンビニとスーパーを中心に販売し、今年末までに累計370万ケースの出荷を見込んでおり、日本におけるこの分野のパイオニアとなっている。
無糖炭酸の発泡水「キリンヌューダ」
欧米では無糖炭酸のミネラルウォーターはごく一般的な生活水だが、これまで日本では酎ハイなどをつくるためのお酒の割り材としか認識されてこなかった。しかし、日本人の食事も欧米化し、脂っ濃くしつこい料理を食べたあと、口の中を洗い流すのに欧米のように発泡水が必要とされてきているのではないかというのが、「キリンヌューダ」開発の切っ掛けだったという。
ミネラルウォーターはソフトドリンクの中でも顕著な成長分野であり、そのバリエーションの1つとして、割り材ではなく、主役になる商品を目指した。
プレーンタイプは緑茶のうまみ成分の1つである「テニアン」を加えているので、カロリーゼロでも無味ではなく、やわらかな飲み口、飲み飽きないほのかな風味を目指した。
「一般の消費者には、炭酸飲料は甘い、カロリーが高いものと考えられていて、10代の頃は飲んでも大人になると飲まなくなる傾向がありました。我々は健康、カロリーを気にする30代をメインターゲットに、昔飲んでいた炭酸を別の形で飲んでもらおうと考えたのです」とキリンビバレッジ営業本部マーケティング部商品担当第1グループ主任・平田征典氏は、商品企画の狙いを語る。発売以来積極的なテレビCMなどでの宣伝を行っている。
今年3月により飲みやすいように炭酸度を少し下げるなど、リニューアル。価格はペットボトル1本(500ml)124円である。また、商品ラインナップとして、炭酸とレモン風味を強めに設定した300mlの業務用のビンを追加した。
7月24日には、さわやかなグレープフルーツのおいしさをベースに、ホップの香りとほのかな苦味をきかせた「キリンヌューダ グレープフルーツ&ホップ」を発売。
11月20日には、冬のパーティーシーズンに向けて、冬場の柑橘であるゆずをメインフレーバーに、ホップをきかせた「キリンヌューダ ゆず&ホップ」を発売した。
現状は30代男性を中心に定着が進んでいる模様で、日本なりの無糖炭酸の市場ができるかどうか、注目されるところだ。
なお、同社は紅茶で「午後の紅茶スペシャル ダージリンスパークリング」も発売しており、大人の炭酸飲料開拓に研究を続けている。
「キリンヌューダ」の競合商品は、ほぼ輸入の発泡水に限られ、大塚ベバレジの「クリスタルガイザー スパークリング」が硬水のレモン味とライム味で対抗している。「ヴィシー セレスタン」と「サンティヨール」は、天然微炭酸の飲料である。
あるいは、サッポロ飲料はドイツで著名な天然微炭酸「ゲロルシュタイナー」のペットボトル版を新たに発売して、テレビCMを打つなど攻勢に出ている。これも硬水ならではの天然ミネラルの味が付いているので、無味ではない。
ドイツで著名な天然微炭酸「ゲロルシュタイナー」
サッポロ飲料は11月に「贅沢発泡 旬つがる」という発泡リンゴジュースを発売したが、広報によれば「季節のフルーツを使った発泡のジュースは弊社がずっと販売しているもので、他社が止めてしまったのに対してウチは続けているということです」とのことだ。
いずれにしても炭酸飲料は前年より約107%と伸びており、この活況を牽引しているのは無糖炭酸の新市場であることは間違いない。
・昼からシャンパンがグラス1杯から楽しめるカフェ登場
一方で、シャンパン、スパークリングワインの飲み方で新しい提案を行う飲食店も登場してきた。
東京・恵比寿にある「アルベンテ」は昼の12時からシャンパンが楽しめる、「シャンパンカフェ」としてオープンしている。営業は翌5時までと長く、夜はバーとして活用できる。なお、月曜・祝日は夕方6時からの営業である。
シャンパンは常時50〜70種類をそろえ、「モエ・エ・シャンドン」、「ヴーヴ・グリコ」のようなスタンダードから、年間2万本以下の生産量のレコルタン・マニピュランまで、幅広い醸造元のお酒が選べる。ボトル1本は安いもので9000円から、高いもので10万円を切るくらいまでといった価格帯だが、日替わりで4、5種類をグラスで提供しており、グラスだと1杯1300円くらいからオーダーできる。
「アルベンテ」外観
「アルベンテ」カウンター
このグラスシャンパンは高級なシャンパンを身近に楽しんでもらおうという意図で、続けているものである。
そのほか、フランス中心に赤ワイン、白ワインを置いている。
「レストランに行く前のアペリティフとして、胃を刺激してくれるキレがあるドライなシャンパンを飲まれていく人が多いです。レストランの帰りに立ち寄られて、ディジェスティフとして甘めのシャンパンを飲む人もいらっしゃいますね」とスタッフの茂野匡晃氏。
周囲におしゃれなレストランが多い恵比寿という土地柄、食前酒、食後酒の需要が多いようである。スタッフ全員がバーテンダーなのでカクテルもつくれ、ソムリエ資格者もいるのでTPOに合ったシャンパンをセレクトしてくれる。
また、同店は食事にも力を入れており、パテのようなおつまみからパスタ、ピザまで取り揃えている。アラカルトメニューでは、寒い季節には「牛ほほのワイン煮」がおすすめとのこと。たとえば立食パーティーに出席して十分に食事を取る時間がなかった人が、立ち寄って空腹を満たすのにも適している。
さらに、ランチではパスタやオムライス、ランチの後のブランチではハンバーグなどのプレートを1000円くらいで提供。それぞれ1000円からグラスシャンパンがオーダーできるようになっている。いつ訪れても、気軽にシャンパンが楽しめるというのがミソだ。
アルベンテの田舎風パテ(1000円)
顧客層は20代後半から30代の男女が中心で、特に金、土は昼間からシャンパンを飲む人が多いそうだ。席数は24席あるが、回転数は昼が1回転、夜が2〜3回転といったところで、定着してきている。
他に、たとえばゼットンの経営する東京ミッドタウンの「オランジェ」はシャンパンをテーマにしたフレンチビストロで、モーニングとランチでは300円をプラスするとミニグラスのシャンパンを付けられる。朝から深夜までのシャンパンの楽しみ方を追求した、興味深い提案型の店である。
・ホテルのブッフェ、市中の和風ダイニングでもシャンパンが人気
日曜・祝日のお昼をちょっと華やかに過ごしてみたい人に対して、「サンデー シャンパンブランチ」の提案を行っているのは、ウィスティンホテル東京1階のレストラン「ザ・テラス」。
これは日曜・祝日の12時〜16時に、1回1時間45分の2部制で実施しているブッフェスタイルの企画で、1人6800円(12月2日〜24日は9800円)で食べ放題、シャンパン飲み放題となっている。
昨年8月にリニューアルオープンして以来、ブッフェスタイルで人気になっている店であるが、「サンデー シャンパンブランチ」は昨年9月頃から始めて予約が取れないほどの人気になってしまったため、時間制にしたのだという。
広報によれば、顧客は近隣の恵比寿、広尾界隈に住む女性の2人連れが多く、年齢層は30代〜50代中心だそうだ。
シャンパンはあれこれ選べるのではなく「ゴッフェ」という銘柄1種類ではあるが、通常のディナー6800円、土・日・祝日のランチ5500円(平日は4500円)の店なので、高級ホテルのレストランでぜいたくなお得感に浸るにはちょうどいいくらいの価格設定と言えるだろう。
一般のダイニングバーでも、シャンパン、スパークリングワインを料理と一緒におすすめする店も現れている。
東京・神田駅前の「S_ALL(エスオール)」は今年7月にオープンした、カフェダイニング風のシックな内装でまとめた、和風の魚料理とロール寿司の店だ。中高年向きの安酒場が多い神田にしてはおしゃれな店だが、周囲との差別化のためにこのような内装にしたのだという。BGMはジャズを流している。席数は37席。
「エスオール」外観
「エスオール」店内
顧客は近隣の勤め人が多く男女比は半々より女性が少し多いくらい。夜の客単価は4000円ほどだ。850円のランチにいたっては9割が女性という。
お酒は、日本酒、焼酎、カクテル、ワインなどと幅広く取り揃えているが、夏場のオープンだったので、季節感も考えてさわやかな発泡系のスパークリングワイン、さらには発泡清酒もラインナップに入れた。すると、思ったよりも動きが良く、お酒の注文のうちの10%ほどが発泡系であったという。
特に好調だったのはスパークリングワインで、ドライな飲み口で魚料理や煮物、焼物にも合うためか、お代わりを注文する人も多いのだという。
フランスの「C・F・G・Vオペラ・ブリュ」辛口(グラス880円)と、アルゼンチンの「トソ・スパークリングブリュット」(ボトル4800円、ハーフボトル2800円)を提供している。
発泡清酒は「すず音」を1800円で提供していたが、話題性のあるお酒なので人気はあるのだが、甘いので乾杯には良くても、料理を食べながらはしつこく思われるせいか、お代わりはあまり出なかったそうだ。なので、仕入れた分を売り切った現在は休止しているそうだ。
窪田英明店長には、スパークリングワインに合う、和ダイニングの料理として、「活ジメのアナゴの造り」(880円)と、「サーモンのあぶりロール」(700円)を提案してもらった。
このように、シャンパン、スパークリングワインは和食と一緒に楽しむお酒としても、広がりを見せているのである。
「エスオール」の提案するスパークリングワインに合わせる料理。活ジメアナゴの造りとサーモンのあぶりロール
・発泡清酒に競合するのはシャンパンではなく缶酎ハイだ
最後に、発泡ドリンクの展望を試みてみよう。
シャンパン、スパークリングワインに対するトレンドの部分の興味が、レコルタン・マニピュラン、あるいは大手メゾンでも生産量の少ない幻のシャンパンに向かっているということは、ブームもそろそろ絶頂を迎えているものと思われる。今後はいかなるシーンで飲むのか、パーティー向けのシャンパン、一般的な食事向けのシャンパンなどが、選別されていくだろうから、生産、販売に携わる側としては、銘柄も合わせての飲み方の提案を引き続き行って、定着をはかって行く必要があるだろう。
それにしても話題になるのは輸入品ばかりなので、日本勢はもう少し頑張ってほしい。
発泡清酒についてはどうだろうか。
この種の商品群にも力を入れている静岡の酒販店、丸河屋の河原崎吉博氏によれば、「発泡清酒は全般に日本酒としては甘すぎるので、シャンパンではなく、缶酎ハイの競合商品というのが正直なところでしょう。料理に合わせるとすれば、濁り酒と同じで焼肉なんかがいいと思われます。一番いいのは、乾杯の時に“とりあえずビール”では面白くない、かといって缶酎ハイでは安っぽすぎる、そうした時に発泡清酒で乾杯するとおしゃれでサプライズがあるし、パーティーが盛り上がるというものです」と、まず乾杯のお酒として浸透させるのがいいのではないかと示唆した。
料理との相性では、濁り酒がどんな場面で好まれるかをあたってみるのも良さそうだ。
「すず音」のほか、新潟の大吟醸「ゆきくら」(玉川酒造)、灘の「あわ咲き」(神戸酒心館)、静岡の「ちょびっと乾杯」(花の舞酒造)、福島の「ぷちぷち」(末廣酒造)などの発泡清酒が知られるが、今後は共同でPRを考えていくのも需要拡大には必要かもしれない。
新潟の大吟醸「ゆきくら」
発泡のソフトドリンクについては、今のところミネラルウォーターの分野で盛り上がっている。国産軟水の「キリンヌューダ」対硬水の外国勢といった図式で、果たして定着するのか、定着すればどちらが主流を占めるのかが興味深い。
大人の無糖炭酸水の市場はつい2、3年前までは成立しなかったものであり、若い人たちの味覚の変化は注目に値する。炭酸に日常的に親しむ習慣形成では、シャンパン、スパークリングワインのブームという背景を決して無視できないだろう。
味覚、喉ごしの面で、そこをうまくとらえたメーカーが最終的に主導権を握るような気がしてならない。