・豚しゃぶ「ろくまる五元豚」を始め5業態、直営21店
株式会社クラウドプロスパーは、羽中田氏が大手広告代理店、株式会社アサツーディ・ケイに20年間勤務した後、立ち上げた外食企業だ。元々は広告会社だったが、傍ら展開していた外食が好調で、4年前から外食事業に専念し、株式公開を目指している。
豚しゃぶ「ろくまる五元豚」5店、「もつ鍋ろくまる」3店、おでん「おぐ羅」2店、沖縄料理「でいご」3店 「ピザーラ」4店の5業態をメインとし、ガレット「L.A.ガレット」1店、鶏料理「銀座
若どり」1店など直営21店舗を展開している。売上高約18億円。他に「ろくまる五元豚」はライセンス5店がある。
「ピザーラ」を始めたのは、運営する株式会社フォーシーズの淺野秀則社長が、羽中田氏の慶応大学時代の先輩であることが契機。広告業の傍ら、「ピザーラ」を加盟店として運営してきた。
オリジナル業態の第一号は、株式会社カゲンの中村悌二氏プロデュースで赤坂見附に作ったラーメンダイニング「鳳」。しかし、ビルの地下1Fで営業していたが、ビルオーナーが1〜2階にラーメン店を入居させてしまい、退店する。
そして仕入れ先の豚肉店から「上州五元豚」を紹介され、同じく中村悌二氏のプロデュースで、2004年に「ろくまる五元豚」1号店を恵比寿にオープンさせた。
豚しゃぶ
・狙うは「和食カテゴリー専門店」
「ろくまる五元豚」は丸の内TOKIA、川崎ラゾーナなど商業施設を中心に出店しているが、本年4月には、静岡県でロードサイドに挑戦する。ファミリー層向けしゃぶしゃぶ専門店として「木曽路」の安価版を狙う。将来は、駅前立地に加え、ロードサイドもターゲットにしようとしている。
さらに、商標使用権を毎月定額で課すライセンス方式で5店を展開している。20店程度が限界と考え、積極的な加盟店開発は行わず、現在のオーナーを中心に店舗を増やしていく方針。ライセンス店は各店とも基本は同じだが、1点ものに仕上げている。例えば鍋の形を変えたり、食材では恵比寿店は有機野菜、新宿店は薬膳、八重洲店はランチ・ステーキと各店とも独自の特徴を打ち出している。
食材は、国内で入手困難なものを除いて、全て国産に早くから取り組んでいる。中国産はここ2年で全廃したそうだ。それでも、FL値は50%と低く抑えられている。
新業態開発にも積極的で、2007年に蕎麦粉のクレープ「ガレット」の専門店「L.A.ガレット」をJR国立駅前から徒歩2分の並木通りに出店。自由にガレットを楽しいでもらおうと「L.A.(ロサンジェルス)」という店名を付けた。「中央線でガレットを食べるならL.A.だよね」とお客に言わせたいという。今のところ、ディナーの売上が未だ弱い。
「和食の中で勝負したい。1つのテーマに特化した和食店。しゃぶしゃぶ、もつ鍋、おでんなどのカテゴリー専門店を展開し、2011年に売上高50億円を目指したい」と羽中田氏は株式公開に向けて展望を語った。
立地についても「商業施設など超A級立地にだけ出店したい」と考え、空港や鉄道などの利権立地も狙っているようだ。
おでん「おぐ羅」日本橋店 外観 銀座の老舗「おぐ羅」とタイアップ。
「おぐ羅」はおでんだけでなくメニューも充実
・売上が悪いのは、店長ではなく経営が悪い!
社名「クラウドプロスパー」とは、混雑して繁盛しているという意味。これを実現するために、全員経営を目指している。店舗は一つの会社であり、独立できるよう接客、運営だけでなく、経営ができるようになって欲しいと考える。実際に店舗を買い取って独立した方が2名いる。
「店長の目標は売上高や利益ではない。立地を選んだのは本部であり、また、突然、隣に競合店が出来たりする。数字目標を追いかけさせると、料理のポーションや人件費を減らすことに走ってしまう。それはサービスの低下に繋がる」として、店長には数字目標は一切与えないという。
各社員は毎月、1つずつ自分の行動目標を決める。例えば、クレンリネスを徹底するなど。その目標への到達度合いを自分と上司とで確認しあう。自分では出来ていると思っても、上司から見ると出来ていなかったりする、この溝を埋めていく、すり合わせていく過程で人は成長する。
この人事評価制度は、羽中田氏が以前に勤めた広告代理店で人事評価を新しく作る仕事に関わった経験が生きている。数字目標と行動目標に分け、役職ごとにウェイトを変えていく。例えば、新入社員は数字目標0%、行動目標100%。グループ長は数字目標20%、行動目標80%など。そして、同じく、自分も上司も点数を付けて、評価の分かれる点を話し合う。
また、「順法」が合言葉で、法律を守ることを徹底している。週休2日であり、管理職ではない店長には残業代も支払う。「出勤時間が少なくなるよう働け」と全員社員に徹底している。
労働時間が長くて若者からは嫌われる職場とされる外食企業。羽中田氏は大手企業の人事評価手法を導入し、雇用者にとり魅力のある外食企業を育てようとしている。