フードリンクレポート


2007年外食市場、24兆7千億円。2年連続増加!

2008.5.11
外食産業の市場規模を毎年発表している(財)外食産業総合調査研究センター、通称「外食総研」が2007年の市場規模を24兆7009億円と発表した。06年1.0%増、07年0.2%増と2年連続で増加するという嬉しい結果となった。『【外食ルネッサンス】30兆円市場を復活させよう』をミッションに掲げるフードリンクとして、復活への道を推察する。



飲食店12兆5千億円、0.6%増。居酒屋1兆1013億円、0.4%増。

 外食総研の指す外食産業24兆7009億円は、まず、フードを主とする「給食主体部門」と、ドリンクを主とする「料飲主体部門」に2分される。

「給食主体部門」は19兆4859億円、0.2%増。飲食店と給食が主に含まれる。大半を占めるのが「飲食店」。その市場規模は12兆4806億円、0.5%増。市場全体の伸び0.2%増を上回る伸びを示している。

 飲食店の中でも、ファミレス、定食店、日本料理店、西洋料理など各国料理店、焼肉店など落ち着いてしっかり食べられる「食堂・レストラン」が0.6%増加。外食ならではのサービスが伴う業態での売上が良かった。

「料飲主体部門」は5兆2160億円、0.3%増。「喫茶店」1兆571億円、0.05%増と前年並み。「居酒屋・ビヤホール等」が1兆1013億円、0.4%増。そして「料亭・バー等」3兆576億円、0.4%増と市場全体の伸びを上回っている。

 居酒屋は、フードサービス協会によると大手居酒屋チェーンは出店増により売上高5.2%増(07年通年)。また、「居酒屋甲子園」「S1サーバーグランプリ」など人材イベントにより意識の高い個店が増えてきたことにも因ると思われる。料亭・バーは大手企業の好業績を反映して交際費が増えていることに因る。

 他方、24兆7009億円に含まれない「料理品小売業」、いわゆる中食は、6兆2169億円、0.5%増加。相変わらず、外食を侵食し続けている。しかし、06年は1.3%も増加したのと比べると、鈍化したと言える。




ピークと比べ飲食店は7.1%減。居酒屋は23.0%減。

 外食市場のピークは、97年の29兆702億円。この年を境に右肩下がりで減少を続けた。フードリンクの【外食ルネッサンス】はこのレベルに復活させようという意図。そして、06年に反転し1.0%増。07年は0.2%増と流れが変わった。

 その97年と07年で、主要な項目を比べてみると、
・外食市場 15.0%減
・飲食店  7.1%減
・居酒屋・ビヤホール等 23.0%減
・中食市場 44.6%増

 フードを主とする業態の堅調さが目に付く。中食と異なり、温かい出来たての料理が提供される外食の魅力は消費者を引き付け続けている。他方、ドリンク、酒類に売上を頼る業態は、若者の低アルコール化や飲酒運転規制の強化とともに年々、厳しさを増している。

 また、ワタミが株式公開したのが96年10月。就職面では外食企業が大卒に人気となったの頃。外食業界に夢が溢れていた時代。その後、若い人材はIT業界に奪われ、人材面でも外食の苦難が続いている。但し、外食で職場を探す女性が増えているように感じられる。働き手にとって魅力的な業界であることが、その業界の将来の繁栄に繋がると確信しており、女性の就職人気は明るい兆しである。


「環境」の時代の新しい外食業態。

 社会の中でITの次に注目のテーマとなってくるのが、「エコロジー」、「環境」。

 外食でも食品の安全性を脅かす事件が多発している。飲食店側ではどうしようもない、BSEや鳥インフルエンザの問題。やみくもに安い食材を求めた結果としての中国産野菜の農薬問題。「吉兆」に代表される飲食店自身のモラル欠如による偽装問題。消費者の外食に対する信頼がゆらいでいるのが現在だ。消費者の信頼を失えば、外食市場は縮小に向かうだろう。

 これを解決できるのが「環境」。社会の今後のテーマとなっている「環境」というコンセプトを外食市場も積極的に取り入れることだ。

 いち早く環境を取り入れる飲食店が目立っている。07年あたりから定着の兆しのある、日本の農家で丁寧に栽培された有機野菜。「バーニャカウダ」などで有機野菜をそのまま食べることがスタイルになっている。「フードマイレージ」、「ウォーターマイレージ」というどれだけ環境に負荷をかけて作られた食品かを示す指標が話題になっている。

 顔の見える食材を使おうと、農産物や畜産物を契約農家から直接仕入れたり、自社で農場を持つ動きが出てきた。米国では、半径数キロ以内の食材しか使わないというレストランも出てきたそうだ。究極の顔の見える食材という訳だ。

 別の面から見ると、外食の中に環境を取り入れることにより、優秀な人材を取り込むこともできる。農業を始める若者が出てくるなど、環境に興味を持つ若者が増えており、彼らを外食が取り込む契機としても「環境」は注目すべきテーマだ。

 ワタミが有機野菜や環境に配慮する手法を取っているにもかかわらず、なぜ、既存店売上高が良くないのか、と思う方もいるだろう。それは、ワタミ=安価な居酒屋と思われており、環境を気にするお客は行かず、店のコンセプトと客層がミスマッチになってしまっているからであろう。居酒屋という業態名を捨てて、もっと環境を意識した新しい業態名を生み出し、安さ路線から決別していることを消費者に分からせる必要があるだろう。

 30兆円達成に向けては、環境という時代のキーワードを取り込んで、働き手と消費者を魅了できる新しい価値を持つ業態が必要だ。その芽は既に市場の中にあるはずだ。変革は辺境から生まれる!


【執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2008年5月10日