・昨年注目度ナンバーワンのカレー鍋。今年はどうなる?
子供から大人まで、みんなに愛されるカレー。それを、鍋にしてしまったという、ありそうでなかった発想が「カレー鍋」だ。家庭用として、レトルトのカレー鍋用スープが販売されるなどその注目度は高い。
「伝心望」 看板
そのカレー鍋の元祖といわれる東京・三軒茶屋にある「伝心望」を訪ねた。本店は姫路にある「喰い切り酒場
伝心望」で、三軒茶屋店はその東京支店である。もともとは本店のまかないだったカレー鍋を、店で出したところ、最初は半信半疑だったお客さんも、その魅力にはまり、連日カレー鍋を求める人で盛況だったという。
そこで、東京という場所で勝負してみたいと、2006年6月に「カレー鍋 伝心望」をオープン。季節が限られる鍋料理の専門店はやはり、一種のギャンブルだったと、三軒茶屋店店長の山本健一さんは話す。
「伝心望」 お笑い芸人を中心に、沢山のサインが。
「伝心望」 落ち着いた雰囲気の店内。
「伝心望」 2名用のシート席
「伝心望」 テーブル席。コンロはIHを使用。
しかし、実際には、カレー鍋は東京のお客さんにも「一度食べたら忘れられない」と言われるほどに浸透しつつある。「カレー」と「鍋」という日本人が好きなキーワードが入ったカレー鍋は、最初からマスコミの注目も高く、来店のきっかけはテレビや雑誌というお客さんが多いのだという。
「伝心望」 カレー鍋基本セット 1人前1,942円 ※写真は2人前。
3種類の肉と、レタスや玉ねぎ、しめじなどたっぷりの野菜と、秘伝のカレースープが基本セット。スープのスパイスの調合は、姫路のオーナーしか知らず、三軒茶屋店には、3日に1回ほど姫路から郵送されてくるのだという。それを東京でとった出汁と合わせてスープは完成する。味はベーシックな元祖・ピリ辛・劇辛の3種類から選べる。
「伝心望」 肉は牛・豚・鶏と3種類。
「伝心望」 追加のスパイスも。カレーだけにらっきょうも用意。
「夏の間も、食欲増進のためでしょうか。多くの方にご来店いただきました。30種類以上使われたスパイスも体をあたためるので、美容に敏感な女性の方にも好評です。また、野菜もたっぷりとれるので基本セットに追加される方がほとんどです」と山本さん。
他にも餃子や海鮮なども好みで追加することができる。最初はさらっとしていたスープも沢山の具材と煮込んでいくことで、旨みが増し、最初と最後ではまた味が全然違うという。そのさらに旨みを増したスープで食べる、うどん、ラーメン、雑炊は絶品だという。
取材中にも、予約の電話が鳴る。まだ、鍋のトップシーズンとはいえないこの時期も、週末には予約で一杯という日も少なくないという。また、伝心望では、カレー鍋セットのお取り寄せも可能でこちらも好評だ。
みんなが大好きなカレーだけあって、今年もカレー鍋の勢いは増す一方といえるだろう。
・韓流ブームは終わらない!今注目の韓国鍋はこれ
次に注目したいのが、最近これを目当てに韓国料理店を訪れる人も多いという「プデチゲ」。プデチゲとは一体なんだろう?
「韓国料理ワンス」 外観
その秘密を探るべく訪れたのは、恵比寿駅からガーデンプレイスを抜けて、日仏会館の脇の坂を下ったところにある人気の韓国料理店、「韓国料理ワンス」。経営母体は、大阪に本社を構え、堂島ホテルや大阪で多くの飲食店を営むシンワオックス株式会社(大阪市住之江区北加賀屋五丁目7番30号、代表取締役社長
今田 輝幸)。
「韓国料理ワンス」 カフェのようなかわいらしい店内。
「韓国料理ワンス」 カウンター席も。
2004年3月にオープンした同店は、店内はまるでカフェのようなかわいらしい雰囲気の店内。女性客が多いのも頷ける。“オモニ(韓国語でお母さんの意味)の味”を謳う同店の料理は、新大久保などで20年以上韓国料理店を営んできた、まさに“オモニ”と言えるチョン・オンニョさんが料理長を務める。特に日本人向けにしていない、本場の味付けだ。韓国のスターが来日時にお忍びで訪れたり、韓国大使館の方々が足繁く通っているということからもその味わいはお墨付きと言える。
「韓国料理ワンス」 彩りも美しく、ボリューム満点のプデチゲ 写真は小2〜3人前で1,950円。
韓国料理で鍋というと、まっさきに思い浮かぶのがキムチチゲではないだろうか。キムチの辛味がなんとも食欲をそそる、韓国料理を代表する料理といえる。
しかし、同店でオープン当初からキムチチゲとは人気を二分する鍋料理が冒頭で述べた「プデチゲ」だ。プデとは、韓国語で軍隊の意味で、つまり、プデチゲは韓国の軍隊で食べられていた鍋のこと。
その一般的な特徴は、ソーセージ、スパムに代表されるランチョンミートや、インスタントラーメンが入っているところにある。そして、韓国でチゲというと、一人用の鍋で提供されることが多いが、本場韓国でもプデチゲは大きな鍋を皆でつつく、日本人が発想する鍋と同じスタイルなのだという。
「韓流ブームも手伝って韓国に詳しい方が増え、プデチゲを求めて来られるお客様も多いですね。ニンジン、タマネギ、梨、リンゴをはじめ、たくさんの野菜と果物、そして魚、貝を使ったオモニの特製ダレで作るスープに、さらに野菜やランチョンミートの旨みが広がり、チーズがまろやかさとコクを出し、麺とよく絡みます。最初から麺が入っているというスタイルに驚かれますが、味わいはもちろん、具沢山で野菜をたっぷりと摂取できること、そのボリュームに多くのお客様にご満足いただいています。プデチゲのリピーターの方も多いですよ。」と話すのは、同店の實光明宏(じっこう・あきひろ)店長。
この夏も、野菜をしっかり食べたい女性や、辛い鍋で一汗かきながら美味しいビールを飲みたい男性で賑わいを見せたという。
同店は他にも、イカポックン(イカのピリ辛炒め)や、チャプチェ、トッポギなどの伝統的な韓国料理メニューも豊富。鍋とともに是非味わってみたい。
聞きなれない「プデチゲ」という韓国鍋は、様々な具材がたっぷり入った“韓国風寄せ鍋”といったところ。最近では、メニューにプデチゲを加える店も多く、ブームはそこまできている。韓流ブームは少し落ち着きを見せているが、プデチゲはこれから一層の盛り上がりが予想される、今注目の鍋といえるだろう。
・蒸して、ソースをつけて、まるごといただきます!
昨今の健康ブームで、今注目が高いのは野菜。野菜ソムリエ(正式名称はベジタブル&フルーツマイスター)という資格取得者が増え、野菜を多く使ったレトルト商品なども多く販売されている。
そんな野菜が盛り上がりを見せる中、2008年6月に表参道にオープンした「蒸し野菜鍋」の店を取材した。
その名も「(畑)ハレノヒ」。経営するのは、ノスプロダクター株式会社(港区赤坂7-6-41、代表取締役
小野坂直行/黒石和宏)。コラーゲン鍋で一躍人気になった、(汁)ハレノヒ系列店だ。
「(畑)ハレノヒ」 紀伊国屋裏手にある、一軒家の店舗。
同社が掲げるビューティー&ヘルシーの、ヘルシー部分を担う店としてオープンした。現在は、中目黒、大崎にも店を構える。
パステルカラーが使われた優しい色合いの空間。店内には(畑)ハレノヒ表参道店のキャラクターでもある「ヤンババ」や、バタースカッシュナッツという珍しいカボチャもかわいらしく飾られており、お客さんの7割が女性というだけある、なんとも女性好みな雰囲気だ。
「(畑)ハレノヒ」 女性らしい優しい雰囲気)
「(畑)ハレノヒ」 明るい店内。
「(畑)ハレノヒ」 表参道店のキャラクター、ヤンババ。
そして、同店の名物が蒸し鍋料理、その名も「ムシケン」。ムシケンは、“蒸して健康”の略なんだとか。
和風だしかコンソメベースの洋風だしかを選び、有機野菜を卓上コンロで蒸し上げていくスタイル。せいろの中には、基本の野菜と店内の黒板に書かれた本日の野菜、さらに、鶏つくねやベーコンなどの肉類が。彩りもとても綺麗だ。
「(畑)ハレノヒ」 たっぷりの有機野菜が楽しめる、ムシケン。1人前1,890円、写真は2人前。
「(畑)ハレノヒ」 花巻やクレープで巻き、ソースをつけて味わう。
「(畑)ハレノヒ」 本日の野菜は店内の黒板で。
この蒸しあがった野菜を、花巻やクレープで巻いて、トマトやカレー、納豆醤油など選べる10種類のソースにつけて味わうというスタイル。
「野菜は、温野菜で食べると体への吸収もいい。生野菜のサラダより、たっぷり食べられますしね。何より、蒸し料理というのは優秀で、味も栄養も損なわないで調理できるんですよ。だから、素材にもこだわり、有機野菜を中心に無農薬野菜など安全で安心なものを使っています。体に“うまやさしい”味です。」と、ノスプロダクター㈱リテイル事業部マネージャー森隅聖さん。
「(畑)ハレノヒ」 まさに、女性好み。
〆には、蒸した野菜の旨みが溶け込んだスープに、ご飯またはカッペリーニという細いパスタが楽しめる。〆にパスタとは、ネーミング同様斬新なスタイル。乾麺をそのままいれて、仕上げるのだという。
ランチも営業する同店だが、ムシケンは通常のランチメニューには含まれていない。基本的にはディナーメニューだが、前日までに予約をすればムシケンをランチで味わうことも可能だ。
テーブルごとにコンロで調理するが、夏の間も、ビタミン補給に訪れるお客さんで賑わったという。野菜の旨みを味わうムシケンは夏バテしていても、食べられる優しい味わいだ。
変わった、一度聞いたら忘れられないネーミングはムシケンだけではない。他にも、イケメン=いけてるメンチカツや、野菜ジュースのサワー、気休めサワーなど、遊び心いっぱいのネーミングの親しみやすさも、人気の秘密かもしれない。
シンプルでありながら、合わせる野菜や肉、つけるソースを変えることで、さまざまな味わいが楽しめる鍋。汗をかかずに食べる、鍋の新しいスタイルと言えるだろう。
・2008年の鍋ブームは
どの店でも「野菜がたっぷり食べれます」という言葉を多く聞いた。やはり、鍋ブームの裏には健康ブームがあるようだ。また、鍋は冬の食べ物、という固定概念を払拭するような鍋が増えつつあるのが、今年の傾向といえる。
冬はもちろん、夏にも楽しみたい鍋。今年の冬の鍋ブームは、来年の夏の鍋ブームも約束するものになるのではないだろうか。