・コラーゲンの次、ヒアルロン酸
鍋料理のアピールポイントの定番となった、コラーゲン。肌の新陳代謝を促進して弾力、つやなどを保つ働きをする。鶏水炊きを「美肌コラーゲン鍋」と名付けて、今年の冬場の一押しメニューとして取り入れている居酒屋が多数ある。豚足の人気もコラーゲン効果に因る。さらには、コラーゲン濃度を高めるため、コラーゲンをボール状に加工したものをトッピングできる店舗もある。
お客は、鍋の白濁したダシや、プルプルの豚足の皮をみた瞬間に効果があるように感じ、翌日には実際に「肌のつやが良くなった」、「プルプルした」と体験談を友人と語り合い、口コミで広がっていった。特に、美容は女性にとっての一大関心事。しかも、実効性、すなわち機能性があるから、高い単価でもわざわざ食べに行こうとする。
そして今、その続編として登場して脚光を浴びているのが、ヒアルロン酸。ほとんどの化粧品に配合され、皮膚の表面に塗ることにより、皮膚の上で水分を含んだ膜を作る。その膜が皮膚の水分蒸発を抑え、潤いを保つ。細胞の骨格をなすものがコラーゲンであり、ヒアルロン酸は、細胞の中で水分を抱えて隙間を満たす役割を行う。しかも、ヒアルロン酸は年齢とともに減少し、肌のはりやうるおいが低下する。それを、ヒアルロン酸を皮膚の上に塗ることや、食べることにより口から摂取することにより防ぐことができる。
キユーピー「ヒアロジュレ」。1袋400gにヒアルロン酸400mg配合。賞味期限は冷蔵7ヶ月。
「ヒアロジュレ」はゼリー状でプルプルしている。加熱すると溶け、冷やすとゼリー状に戻る。
食べるヒアルロン酸をメニュー化できる商品「ヒアロジュレ」をキユーピーがいち早く外食用に商品化。本年8月に発売を開始。この商品の登場により、メニュー化する店が徐々に増えており、「ぐるなび」で「ヒアルロン酸」と検索すると、539件(12月15日現在)がヒットした。ちなみに、「コラーゲン」は4485件。
・ダイヤモンドダイニングが通年商材として使用
女性客に人気のテーマレストランを得意とするダイヤモンドダイニングでは、鍋だけではなく、サラダ、デザートにもヒアルロン酸を取り入れている。特に、若い女性客の多い渋谷エリアの店舗で9月以降、重点的にオンメニューされている。見慣れたコラーゲンと異なり、新しいヒアルロン酸は未だ扱い店が少なく、集客に大きな力を発揮している。
「あくとり代官 鍋之進」 梅しゃぶ美麗鍋〜佐賀みつせ鶏〜1人前1400円。
「博多もつ美人」 もつ鍋トッピング 博多もつ美人セット100円。
「三年ぶた蔵 渋谷豚舎」 バニラアイスのワッフルサンド ヒアルロン酸ぶるーべりーソース680円。
しかも、女性はヒアルロン酸の効果を化粧品を通して知っている。店側で説明しなくとも「ヒアルロン酸」という表記だけで通じる点も店側にはありがたい。
全国に61ヶ所あるシネコン「ワーナー・マイカル・シネマズ」では、現在、期間限定でヒアルロン酸ジュレをトッピングできるフレッシュ・ソーダを売店で販売している。乾燥した映画館内で肌の保湿が出来るドリンクとして人気となっている。メニューは、「アルフォンソ・マンゴーソーダ」「柚子ジンジャーソーダ」「フランボワーズソーダ」「はちみつ黒酢ソーダ」「ローズヒップ&ブルーベリーソーダ」。単体では350円だが、ヒアルロン酸ジュレ15mlをトッピングすると、プラス50円という値付け。
ワーナー・マイカルでの告知ポスター
ヒアルロン酸ジュレをトッピングすると、ドリンクの中でゼリーが浮いている食感になる。
映画館への来場者にも食べるヒアルロン酸の認知が広まっていることは間違いない。先出の通り、「ぐるなび」を見てもオンメニュー店数は未だコラーゲンの12%に止まる。来年に向け、外食でヒアルロン酸メニューの導入が進みそうだ。
・栄養をチャージする、スムージー
今から5年ほど前、日本でも流行った「スムージー」。アメリカで、現在は全米1位となったスムージーショップ「jamba juice」が、1990年にカリフォルニアで創業。フルーツや野菜を氷と一緒に砕いてシャーベット状にしたジュース。手軽に栄養をチャージでき、健康的なライフスタイルを提案する新しいドリンクとして人気となり、2004年にはニューヨークに進出。この辺りから、日本でもスムージーが知られるようになる。
しかし、当時の日本ではスムージーはライフスタイルにまで昇華されず、単なるフルーツジュースとして受け取られ、割り高感があり、普及しなかった。米国では、「jamba juice」だけで、店舗数は700店を超え、売上高は約300億円。07年には世界最大の食品メーカー、ネスレと提携した。
2007年8月、英国人投資家マーカス・ヤング氏が、欧米では定着しているスムージーを日本でも復活させようと、「Smooch」というブランドを作り、東京駅八重洲地下街に1号店を出店。同年12月には恵比寿ガーデンプレイスに2号店、08年1月には溜池の山王パークタワーに3号店を出店してきた。
「Smooch」山王パークタワー店のカウンター
山王パークタワーのロビーに客席を構える。
スムーチ・ジャパン社長、マーカス・ヤング氏。
「日本でも健康的なトレンドが続いています。コーヒーよりも健康的なものを飲みたいとか、時間がなくて食事の代わり歩きながら食べたいとか、自分にご褒美をあげたいとか、スムージーを楽しむライフスタイルを提案していきたい」とヤング氏は語る。
「Smooch」の特徴は、お客の目の前で作る、ナチュラル、低カロリー(平均220kcal)、低脂肪(2%以下)、フルーツたっぷり、乳酸菌が生きたヨーグルトを使用、日本サプリメント協会認定のサプリメントを使用。
スムージー・メニューは、4ジャンルに分かれる。生フルーツを使ったシンプルな「クラシック・スムーチ」。ストロベリー&アプリコット、マンゴー、ブルーベリーなど。Mサイズ460円、Lサイズ530円。そして、食事の替わりとなる「ベント(弁当)・スムーチ」。プルーン、アーモンド、ピーナツバターなどをフルーツジュースに加えて手軽で効率的な栄養補給ができる。Lサイズ590円。
メニューボード
メニューボード
デザートになる「スイート・スムーチ」。黒ゴマ、小豆や豆乳などを使ったブラック・セサミ、クリームチーズやクッキークランチを使ったストロベリーチーズケーキ、栗と豆乳とバナナを使ったチェストナッツ。自分へのヘルシーなご褒美。Mサイズ490円。さらに、氷を使わないライト感覚の「ヨギー」。ストロベリー、ラズベリー、マンゴー。Mサイズ490円。
「ブースター」5種。
人気のベリー&ベリー
この各々にサプリメントが「ブースター」としてトッピングできる。美容に良い「ビューティー」、元気が出る「エナジー」、頭がすっきりする「ブレイン」、毒素を出す「デトックス」、体を守る「プロテクター」の5種。選んでトッピングすると、各60円プラスとなる。
人気のスムージーは、クラッシック・スムーチのベリー&ベリー。ブースターはビューティーが人気。
・花粉症に、シソ・スムージー
「Smooch」が今、取り組んでいるのが、月替わりの季節感を出したスムージー。さらには、サプリメントなどを使い、季節毎にタイムリーな機能性のあるスムージーだ。ココナツリキュールを加えた「マリブ・スムーチ」を夏には出した。
例えば、花粉症の始まる2月には、花粉症に良いとされるシソを使った「シソ・スムーチ」。腸内をすっきりさせるケフィアを使った「ケフィア・スムーチ」、良く眠れるようメラトニンを使った「お疲れスムーチ」、など様々な機能性提案を行っている。今後も、機能性提案を続けて、スムーチの付加価値を高めようとしている。
今年の春先に展開したシソ・スムージー。
今年12月に展開している、フラワーエッセンス入りスムージー。植物の持つ波動がポジティヴにしてくれる。
機能性提案だが、薬事法の制約を受け、効果効能は明記できないという欠点がある。しかし、昨今の健康食品ブームで、お客はサプリメントなど健康に関する知識は高い。メニューに含まれる物質名を明記するだけで、理解してもらえそうだ。
景気は悪化し、お客にはよほどインパクトの強い提案を行わなければ集客に結び付かない。美味しいや安全・安心は最低限の要素で当たり前と捉えられている中で、一歩踏み込んで効果が実感できるような機能性があり、しかも美味しいメニューにお客は付加価値を感じてもらえるのではないだろうか。