・チャージにお客は怒る
ジー・コミュニケーション韓国子会社GCOM KOREAが、FCで展開する「高粋舎(はいからや)」。日本の同店と同じく、大正浪漫をテーマにした1軒家の個室居酒屋をソウル市内で7店舗展開している。日本料理もさることながら、韓国人の間で個室が受けているようだ。通訳の韓国人女性も、落ち着くので個室が好きと話してくれた。
赤く浮き上がった一軒家の「高粋舎」。
1階、2階ともに個室が並ぶ。
また、朝礼や居酒屋甲子園で人気の「てっぺん」も、昨年9月に韓国ソウルに出店。白壁に大きな暖簾という、料亭のような外観。韓国の若い女性の人気を集め、45坪90席で月商1千万円を超える繁盛店となった。「てっぺん」流の元気な挨拶も受け継がれている。ドリンクが客席に提供されると、お客に向いて日本語で全スタッフが「おつかれさまでした」と声を合わせる。お客に聞くと「面白いと聞いたから」と答え、一度連れてこられたお客が友人を誘って再来店しているようだ。
すっきりした「てっぺん」ソウル店。
暖簾が若い韓国人に話題、「てっぺん」ソウル店。
「てっぺん」店内。鉄板を囲むカウンター席と掘りごたつ式のテーブル席、そして手前に縁台を広げたスペースにちゃぶ台風テーブルも並ぶ。
しかし、日本式のスタイルをそのまま韓国に導入するには、ハードルがある。ひとつは、チャージだ。「高粋舎」では2000ウォン、「てっぺん」では2500ウォン。円高・ウォン安の現在は、120〜150円と日本円に直すと高くはない。しかし、チャージを理解してもらうために多大な努力が必要だ。最初の頃は、お客から物凄い剣幕で怒られたという。理解してもらいやすくするために、手の込んだお通しを用意するなど工夫している。
・1人1品しか注文しない
また、客単価が上がらない。食事の店、酒の店が分かれており、食事には金を掛けない。一般的には、サムギョプサル(豚の焼肉)を食べながら、小瓶の真露焼酎を飲んで1人1万5000ウォンが相場。日本円で約950円。真露はレストランで小瓶1本3000ウォンが相場。メイン料理だけでなく、必ずキムチなど小皿が3品ほど並び、そちらは食べ放題。すなわち、料理1品のみの注文でお客は満足することができる。日本人のように1人何皿も注文しない。
「てっぺん」は鉄板料理がメイン。皆で取り分けやすいお好み焼きが人気。
「てっぺん」のアサヒスーパードライ生7500ウォン。
「てっぺん」の月桂冠750ml 35,000ウォン。ビール、日本酒ともに高い。
「高粋舎」のまぐろ刺身は、凍ったまま。
「高粋舎」は韓国国産ビール「カス」も扱う。価格は日本のビールの約1/3。
「高粋舎」では日本酒の紙パックもオンメニュー。
「高粋舎」では韓国焼酎も扱うが、4500ウォンと高い。
しかし、酒を飲むバーでは、ワインやウイスキーなどの酒類には高い金を出す。「てっぺん」は客単価2万5000ウォンと高く、実は食事の後に酒を飲む店として利用しているお客が多いようだ。
「てっぺん」の1品あたりのメニュー価格は高い。1人1品しか注文してくれないので、わざと高く設定したそうだ。また、真露は扱わない。3000ウォンでしか売れないからだ。料理は1品の注文だが、酒は返り注文してくれるという。女性客を見る限りでは、カクテル1杯をちびちびと飲みながら、おしゃべりを楽しむ方が多いように見受けた。学生街という立地も一因だろう。
お銚子で燗酒を楽しむカップル。
カクテルを片手におしゃべりに熱中する女性グループ。
・コテコテは流行らない
5年ほど前、韓国では、店頭に「酒」「おでん」などと日本語で書かれた提灯を掲げ、「縄のれん」のような日本式居酒屋のブームがあった。フードリンクKOREAのチョー氏が、当時コンサルティングを行っていた日本式居酒屋はFCで店舗数を増やし、一時、ソウルだけで100店舗近くにまで一気に成長した。おでんを売り物とし、釜山港でとれたハモをすり身にしたおでん種を日本風とコチジャン風で提供。店内には、大相撲の額と一升瓶が飾られていた。
5年前のおでん居酒屋。
そんなコテコテの居酒屋チェーンは今はない。当時、若者が集まる流行の街、狎鴎亭(アプクジョン)には多数のコテコテの日本式居酒屋があったが、今は韓国料理店に戻っている。日本と同じように若者も自国の伝統料理に回帰している。
今もあるコテコテの居酒屋「かんさい」。ローマ字が「IJAKAYA」になっている。
学生街にある、下駄を看板にかかげた日本式居酒屋。
日本式居酒屋が増え、質が低下したことも否めない。この5年間で韓国の経済発展とともに来日経験者が増え、実際にはコテコテの居酒屋は既に日本にはないことを知ったのだろう。
「てっぺん」のメニューに書かれた、韓国語のナンバーワン宣言。
元気な「てっぺん」、個室の「高粋舎」が日本の今の居酒屋シーンの代表として、韓国でウケている。世界は狭くなり、各国の「今」を知っている人が増えている。その中で、日本の「今」の本物をそのまま輸出することが重要になりそうだ。しかも、チャージなどもそのまま突き通す勇気も必要。それは、本物の日本文化に触れるという楽しみを海外の方々に提供することに繋がる。