フードリンクレポート


スポーツバーなど飲食店でのスポーツ観戦を広めよう!
一般社団法人 日本スポーツ放映飲食店協会(JSHA)

2009.4.1
サッカー映像を流すアイリッシュパブが増えている。そのコンテンツの放映権はグレーな部分も多い。それを欧州のように正常化し、飲食店でのスポーツ観戦の楽しさを伝えようという団体“日本スポーツ放映飲食店協会”をスポーツバーの経営者など10人が集まって立ち上げた。


スポーツバーなどスポーツ放映を行う飲食店は全国で約3千店。

東京4/13、大阪4/20に説明会開催

 スポーツバーの老舗「フットニック」の今井勇次氏と、スポーツバー専門サイト「スポカフェ」を運営する大河原寛氏が中心となって、2003年から始まったスポーツバー経営者の勉強会は、本年2月に一般社団法人に昇格した。会長は今井氏、事務局長が大河原氏。

 現在10名のメンバーを拡大すべく、東京・大阪で無料説明会を開催する。

【東京会場】4/13(月)15:30〜17:00
      「THE FooTNiK 大崎店」
      東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark 1F 電話:03-5759-1044

【大阪会場】4/20(月)15:00〜17:00
      「スタジアムカフェ スポーツバー」
      大阪市浪速区難波中2-6-17 河原町ビル3F 電話:06-6648-7875
*お申し込みは、日本スポーツ放映飲食店協会事務局 電話:03-6431-9507


著作権を正しく! 安く!

 スポーツバーの間で著作権が話題になったのが、2002年のサッカーワールドカップ。 店内で映像を流す際の権利関係の問題を勉強するために、03年9月から同業者で集まり話し合いが始まった。その後、26回にも及ぶ会合を重ね、08年7月に任意団体として、“日本スポーツ放映飲食店協会”を設立。09年2月に一般社団法人の認可を受けた。


会長の今井勇次氏(右)と、事務局長の大河原寛氏。

 現在、店内でのスポーツ放映に対し、特に著作権元からクレームが来ることは少ない。逆に放送局側から店舗に取材がくる程で、番組のPRや報道番組の素材として使えると放任されているようだ。

 有料放送の場合、視聴契約は個人と法人の2種類ある。法人契約はホテル・飲食店などが店内で来場客に対し流すことが許される。費用は1チャネル当たり月額3万円程度。複数チャンネルと契約するとかなりの負担となる。実際には、個人契約で流している飲食店が多いようだ。

「法人契約は店の規模に関係なく一律。小さい店ではペイしない。高田馬場でやっていた時、ある放送局と法人契約をしていましたが、高くで最後はきつくなって止めました。総額だと月に10万円くらいかかる。スポーツ好きで趣味で始める方が多い。20席くらいじゃ払えない。席数に応じて料金を変えて欲しい」と、今井氏も過去には払えなかった。

 英国ではパブの4軒に1軒はプレミアリーグを流している。CS放送局と法人契約しないと流せない。もし個人契約で流すと訴えられる。さらには、店の規模で料金が3段階くらいに分かれているという。

「あるCS放送局から個人客の契約を取りたいので、スポーツバーを番組プロモーションの場として使いたいと相談がありました。そんなプロモーションの場を提供する代わりに、店内での放映権を無償や割引してもらう交渉ができないか、と始めたのが協会です」と大河原氏。9店舗のスポーツバー、会社数で10社の経営者が協会役員となっている。

 会費は、1店舗当たり入会金1万円、年会費1万2千円。入会することにより、著作権を正式にクリアさせ、視聴契約料も下げる活動に参加できる。初年度で300店舗の入会を目指しているが、会員が増えれば増えるほど発言権が強まり、放送局との交渉も有利に進む。現在、スポーツ放映を行う飲食店は全国で3千店と推定される。さらには、スポーツバーの経営相談にも乗っていく。


“スポーツバー”では経営できない

 スポーツバーと銘打つと、試合がある日にしかお客が入らない!?

「私は13年前に高田馬場で『フットニック』を始めました。当時はサッカー一筋。試合がないとお客が入らない。1997年に仏ワールドカップで日本が初出場の予選。その時にマスコミに取り上げられ、名前が広がりました。翌年、翌々年までは、お客が来てくれるようになりました。試合の時は入りきらないくらい。2年続きました。サッカー好きじゃないと来られない店というイメージが定着してしまいました。地下の店で分かりづらいのもありますが、試合がない時にいかに入ってもらうか悩みました」と、今井氏。


「THE FooTNiK 大崎店」。会長の今井氏が経営。

「地下から出よう。パブは1階にあるのが当たり前。とにかくお客を集めよう、と今の恵比寿に移転。サッカー一色をなるだけやめよう。上手くいって普段もお客が入るようになりました。サッカーの時には以前のお客が来てくれる。路面にあるので通行人が見ることにより『何だ!この店!』となり、自然に宣伝効果に繋がりました。スポーツバーと銘打つとお客の幅が狭くなります。アイリッシュパブみたいな普通の飲食店に見せなきゃダメです。でも、それを打開して、スポーツバーと銘打って繁盛させたいのが本音。」

 さらには、スポーツバーは2軒目の店となり、早い時間が弱いという欠点もある。食事メニューのバラエティーとそのアピールも必要だ。


隣の人と盛り上がる臨場感を伝えたい

 さらには、スポーツバーに来るお客を増やすのも協会の目的だ。

「スポーツバーは敷居が高いようです。まとまり過ぎていて輪の中に入っいけない。サッカーの話ができないと入れない、と緊張する。店員に『どこのチームが好きですか?』と聞かれた時に下手なことは言えない、とか。電話がかかってきて、『スポーツバーは初めてなんですが、予約をした方かいいんですか? どんな服装でいけばいいんですか?』と聞いてくる。ユニフォームを着ていかなきゃダメだと思っている人も結構多い。」 

「スポーツバーの楽しさは、大勢で見ることによる臨場感。隣の人と自然に話せます。今の時代、肌と肌の触れ合いが少ないのでいいんじゃないでしょうか。ここに来ると輪が広がる。商売の話が始まることもあるし、いろんな繋がりができる。スポーツバーで観ることにより、スタジアムに行く人も増える。」

 インターネットのTV電話を使って、東京と大阪の店をつないでハーフタイムに応援合戦をしたり、とお客を楽しませるイベントも協会では実験した。

 今井氏の夢は、2012年のロンドンオリンピックの時、ロンドンにジャパニーズパブを開店させること。そこでは、相撲を流したいという。

「商売仇と一緒に協会に入るのは厭だと考える人もいるでしょう。しかし、店を増やしてパイを増やした方がいい。スポーツの楽しさを普及しようよ。」と、今井氏は多くのスポーツバーの参加を呼び掛けている。


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年3月19日取材