フードリンクレポート


<フランス・ベルギーに学ぶ!②>
同行者が倒れた! その時、モナコのギャルソンは?

2009.5.19
4/24〜5/2、外食企業経営者らとフランス、ベルギーへの視察ツアーを開催した。5回シリーズの第2回はモナコ。5/21〜24に開催されるF1の準備に追われるモナコへ到着。港には、世界中のセレブのクルーザーが並ぶ。そこには、分け隔てのない温かいサービスがあった。


「オテル・ド・パリ」最上階にある、フレンチ「ル・グリル」。

高級店では、サービスは丁寧で温かい

 モナコはニースから電車で約20分。F1、クルーザー、カジノの国。世界中の富裕層が集まっているイメージがあるが、確かに街中で走る車は高級車が多い。ベンツでは寂しい感じがするくらい、ベントレーをよく見る。ホテル前にポーターが停めさせているのはベントレーばかり。

 訪問時は、5/21から始まるF1に備え、街中で準備が行われていた。F1が開催される週にはホテルの宿泊代が5倍に跳ね上がるという。F1は国を挙げての行事だ。また、カジノでは名門の「グランカジノ」がある。機械を使わず、タキシードを着たスタッフがルーレット1台につき3名は付くという、昔ながらのアナログのカジノ。内装はウッド。電子音もなく、騒ぐとスタッフから注意され、大人の社交場の雰囲気を醸している。500ユーロ紙幣(約7万円)が飛び交い、ハイローラーの溜まり場だ。


道路をまたいで掲げられたF1開催告知バナー。


名門カジノ「グランカジノ」の正面に設置された観覧席。


「グランカジノ」。入場料として10ユーロを最初に払う。


大型クルーザーが所狭しと停泊しているモナコ港。

 1864年創業、ヴェルサイユ宮殿を模したホテル「オテル・ド・パリ」の最上階にあるフレンチレストラン「ル・グリル」を訪問。モナコ港が一望できる好ロケーション。重厚な内装とテーブルセッティングで、入ると気が引けるような気持ちになる。そこは勇気を出して堂々と進んだ。メートル・ド・テやギャルソンの方々は、こちらがオドオドしているのを察知しているだろうが、何も気付かぬ振りでサービスを進めていく。日本人同士でオーダーを迷っていても、腰が低く一切慇懃無礼な所作はない。料理はとても美味しいが、残念ながら日本人にはボリュームが多い。


ライトアップされた、「オテル・ド・パリ」。


1階ロビーに吊るされた、豪華なシャンデリア。


「ル・グリル」、名前の通りグリル料理が中心。中央には大きな炭焼きグリルがデンと構える。


天井が一段高くなっている部分があるが、そこが扇のように定期的に開閉する。グリルゆえに空気の入れ替えを行っているようだ。


焼いたアスパラ「ASPERGES VERTES MEUNIFRES」(35ユーロ)。


ウズラを丸ごと串に刺し焼く「CAILLE DESOSSEE ET FARCHE」(55ユーロ)。テーブルで捌いてくれる。


牛のヒレ肉のグリル「COTE POUR DEUX OU FILLE DE BEUF」(55ユーロ)。


ラズベリーのかわいい山(11ユーロ)。アイスクリームを付けて食べる。


バニラアイス(11ユーロ)。ボリュームが凄い。

 この店で同行者の1名がテラスで夜景を眺めていたら、突然倒れるという事件が起きた。後で聞くと、旅の疲れからめまいがしたそうだ。倒れた瞬間にギャルソンが数人駆け寄り、手分けして氷を持ってきたり介抱してくれた。具合が良くなるまで傍に付いていた。その手際の良さに驚かされた。さすが、上流階級を相手にしているレストランだけのことはある。但し、注文後、料理が出てくる前だったので、ギャルソンに話して彼の分の料理をキャンセルしてもらったはずだったが、残念ながら前菜、メインともに食べる当てのない料理が出てきてしまった。キャンセルした者の言葉が通じなかったのか、介抱料として出されたのか定かではない。

 支払いは高額だったので割り勘にして、各自自分のクレジットカードで払うことにしたが、厭な顔一つせず、応じてくれた。ちなみに1人約250ユーロ、約3万3千円。十分に満足できる価値があった。カード払いの際、テーブルに無線クレジットカードリーダーを持ってきて、お客の前でカードを通していた。スキミング防止とお客へに安心感を持ってもらうため。他都市でも客単価の低いレストランも含めて全店、無線リーダーをお客の前に持ってきてくれた。日本も近々に無線リーダーの時代が来そうだ。


無線クレジットカードリーダー


モナコの山側は庶民の街

 モナコ湾の反対側は山にへばりつくように建物が天に向かって並んでいる。こちらは庶民の街。横に走る道路には露店が並び、生活の匂いが漂う。


空が本当に青い。


上から見下ろすと、空と同じく海が青い。


露店にならぶ、オリーブ料理の数々。ワインに合う。


太陽の恵みを一杯に受けたドライトマト。

 階段の脇にあった小さなレストランを訪問。ランチタイムにはビジネスマンばかり。テラスは小さいが、そこから席は埋まっていく。陽気な若いメートル・ド・テが、「ル・グリル」とは異なるイタリア人のような明るい接客でもてなしてくれる。英語は理解してくれなかったが、メニューを説明しようと懸命に説明してくれ、こちらも開放的になり会話がはずんだ。


7:30〜20:00までオープンし続けている。


アミューズに出してくれた、炒めた玉ねぎがのったパン。シンプルだが美味い。


タコとじゃがいも等を炒めた料理。


スズキのグリルを頼むと、目の前で捌いてくれる。


捌いたあとのスズキ。バルサミコを掛けると美味しい。


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年5月15日執筆