フードリンクレポート


<フランス・ベルギーに学ぶ!③>
ビーチ・レストランでもテーブルクロス。日本はクロスを忘れてない?

2009.5.20
4/24〜5/2、外食企業経営者らとフランス、ベルギーへの視察ツアーを開催した。5回シリーズの第3回はカンヌとニース。同じくコートダジュールだが、モナコとは異なり、万人向けの観光地。カジュアルな中にも、レストランとしての誇りを感じた。


砂浜に置かれたテーブルにもクロスがかかる。もちろん布製。

ビーチやカフェで目につくのは、クロスとパラソル

 映画祭で有名なカンヌ。訪問当日は5/1のメーデーだったため、街中の小売店舗やレストランは軒並み閉店。労働者の強いフランスならではの光景だ。しかし、ビーチサイドを歩けば物売りが声をかけ、移動販売のホットドック店には行列ができている。労働者たちが休日をビーチで過ごそうと押しかけている。


カンヌ映画祭が開かれる「パレ・デ・フェスティバル・デ・コングレ」はビーチの脇にある。


ビーチにはトップレスの若い女性もちらほら。

 カンヌはニースから海岸に沿って走る電車で約20分の場所。その間車窓からビーチを眺めると、所々にビーチ・レストランが数軒固まってある。カンヌでは、ビーチの入口に最も近いレストランに入ってみた。青いパラソルの「PLAGE LE GOELAND」。


「PLAGE LE GOELAND」。丸いパラソルと四角いパラソルを、店内全体が日陰になるよう上手く配置。


巨大な黒板のメニューボード。


GAMBAというエビのブロシェットのランチプレート(23ユーロ)。グリーンの散らし方が美味しさを感じさせる。

 街中のカフェのテラス席はもちろんクロスで蔽われているし、ビーチ・レストランのテーブルもクロスで蔽われている。そんなシーンについつい目が行ってしまう。落ち着いた感じが漂い、ゆっくりしたいという気にさせる。ギャルソンも胸をはった緊張感のあるサービスをしようとするのでは。日本ではよほどの高級店でもない限りクロスは使われなくなってしまった。日本でも取り入れて欲しい習慣だ。


本物のブイヤベースは迫力満点

 ニースはカンヌに比べ大きな街。駅前から中央に幅広の1本道がビーチまで約1キロ真っ直ぐに通っている。そこをトリムが走る。ビーチは防波堤が高いためかレストランもなく、意外と殺風景。ただ、クラシックなホテル「ネグレスコ」が異彩を放つ。1912年に建てられたベルエポック建築で、日本でもBOROの歌で知られている。


ビーチまで走る真っ直ぐな1本道。


天高く登る噴水があるマセナ広場。ビーチ手前にある。不思議な人形のオブジェは夜にはカラフルな色で光る。


やや寂しい感じのビーチ。砂ではなく石。


ホテル「ネグレスコ」。


「ネグレスコ」のロビーにある巨大なシャンデリア。


「ネグレスコ」の派手なエレベーター。

 スーパーや市場通りを歩くと、日本にはないユニークな食材や食材店が多く、楽しい発見がある。フランスの食文化の深さに驚く。


スーパーの肉屋のショーケースに並ぶウサギ。


自家製オリーブオイルを量り売りする老舗。


塩の量り売り専門店。カラフルなのは全て塩。

 カフェが両側に数多く軒を連ねるニース旧市街で本場のブイヤベースを食べた。待たされること30分。日本で食べるブイヤベースとは迫力が違う。そのまんまの魚が約5匹。しかも積み上げられており、どこからどこまでが1匹の魚なのか分からないほど入り組んでいる。それを、フォークでかき分けて、魚の出汁がよく出たスープに浸して食べる。この濃厚なスープの味が秀逸で、食欲がなくてもどんどん食べられる。


ニース旧市街。花やアンティークの屋台が道の中央に並び、両脇にカフェが並ぶ。


ブイヤベース全体図。1人前39ユーロだが、2人前から。写真は2人前。


様々な魚が積み重なっている部分。


魚の出汁が濃厚なスープ。魚の身をこのスープに浸して食べる。


食後はこうなる。


ニースに京都の寿司店がある

 ニースで有名なカジュアルレストランは「FLO」。日本ではすかいらーくが洋風惣菜店として展開している。内装は、古い劇場を改築し、ステージに厨房を持ってきたユニークな空間。但し、残念ながら、どれを食べてもあまり美味しくない。


「FLO」エントランスにあるシーフードのディスプレイは美しい。


正面がステージで、厨房が設えてある。

 ニースで恐らく唯一と思われる日本人が経営する日本料理店「加も川」。フレンチでは、松嶋啓介シェフが経営する店「Keisuke Matsushima」がある。2006年にミシュラン1つ星を獲得している。

「鴨川」は小さな入口を入ると、寿司カウンターがあり、奥にはテーブル席、2階もある。すき焼き、しゃぶしゃぶ、鉄板焼きもある。お客の大半はフランス人。年配の日本人寿司職人が素晴らしいフランス語でもてなしていた。京都の店の暖簾分けのような形で2005年にニースに出店。寿司は地元の魚を使っているが、ネタが少ない。フランス人にはサーモン握りが人気一番だそうだ。ただ、なめこ汁が10ユーロには驚かされた。




スタッフ全員が日本人。


ビールはキリン。


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年5月15日執筆