フードリンクレポート


ETC割引とリニューアル効果で、高速道路グルメにヒット続出。

2009.9.18
3月末に始まった休日の高速道路が上限1000円でETC車走り放題は、首都圏、京阪神圏で適用除外があるものの、高速道路需要を明らかに高めている。SA・PAの駐車場が一杯で入れないケースに、遭遇した人も多いだろう。それもそのはず、SA・PAは今や郷土グルメのメッカとなり、「デパチカ」並みのクオリティを持つ「ミチナカ」商業施設に脱皮中。ETC車割引はその実態を、より多くの人が知る切っ掛けになったのである。


ロイヤルグループが運営する古賀SA「那の国タウン」。

高速道路管理会社直営「パサール幕張」が順調な集客

 2005年10月の日本道路公団分割民営化以来、3つできた東日本・中日本・西日本の各高速道路株式会社は、SA(サービスエリア)・PA(パーキングエリア)の施設拡充、サービス強化をはかっている。

 そうした中で東日本高速道路の100%子会社でSA・PA管理と運営を担当するネクセリア東日本は、08年3月高速道路初の直営商業施設「PASAR(パサール)幕張」を、千葉市花見川区の京葉道路下り線・幕張PAにオープンした。

 これは、店舗面積を従来の6倍の約2000平方メートル、駐車場を262台と従来の約2倍と、それぞれ大幅に拡充。


「パサール幕張」上りファサード。


「パサール幕張」上りの「旬撰倶楽部」。

 デパ地下を思わせる「旬撰倶楽部」という高品質なグルメ物販コーナーでは、東京から房総に出る立地を生かし、「東京気分」をテーマに房総に帰る人、房総へ行楽に行く人のお土産などに適した、話題性のある東京名物を取り揃えた。10店中6店が高速道路初出店であり、従来のSA・PAの概念を覆すリーシングを行った。

 また、クリエイト・レストランツが運営する360席のフードコートは、南欧をイメージしたような明るいデザインで構築。70席ある自然派ビュッフェレストランは「野の葡萄」の新業態「ちばの恵み 千のぶどう」が入居して、地元の食材でメニューを構成するなど、「パサール幕張」を目的として来る人を集める戦略を展開した。この店は大人1250円で食べ放題となる。


「パサール幕張」上りフードコート。


地産地消のビュッフェレストラン、「ちばの恵み 千のぶどう」。

 シアトル系カフェ「タリーズコーヒー」、コンビニ「ミニストップ」も出店して、駅ビルの「エキナカ」、空港ビルの「ソラナカ」に続く、「ミチナカ」の1つの形をつくったという意味で、画期的な施設であった。

 この幕張PA下り「パサール幕張」のランチタイムには平日・休日を問わず行列ができる近所の主婦を呼び込む好調ぶりを受けて、08年7月幕張PA上り「パサール幕張」もオープン。上下線で「パサール幕張」が揃った。

 上り線のほうも「旬撰倶楽部」を設置して、デパチカ並みの物販の品揃えで、地元の主婦の集客をも狙うことでは下り線と共通しているが、下りと逆に房総から東京への入口にあたることから、「千葉気分」がテーマになっている。店舗面積約2000平方メートル、駐車場206台とほぼ下りと同規模だ。

 すかいらーくグループのニラックスが運営するフードコートでは、下り線よりもより鮮明に千葉色を打ち出している。うどん、そばといったフードコートの定番メニューに加えて、地場の魚の海鮮丼が食せる「九十九里 片貝波乗り食堂」、千葉の名産である下総の醤油を使ったラーメン「宝醤軒」、地場の新鮮な卵でつくるオムライスが売りの「ファーマーズグリル」、東総麦豚という地元のブランド豚を使ったロースカツ定食が味わえる「山武源」、八街特産のピーナツ入りクレープやソフトクリームなどを提供する「エムズルートカフェ」と、SA・PAではここでしか食べられない郷土料理、郷土の食材を使った新郷土料理が数多く提案されている。


地場の魚の海鮮丼が食せる「九十九里 片貝波乗り食堂」。


千葉の名産である下総の醤油を使ったラーメン「宝醤軒」。


東総麦豚という地元のブランド豚を使ったロースカツ定食が味わえる「山武源」。

 また、レストランでは「モスバーガー」の提案する野菜をテーマにしたバイキング「AEN TABLE(アエン テーブル)」が出店していたが、この店は撤退。今年7月15日「房州濱乃家」という地元の素材を生かした和洋中の定食屋に変わった。運営はクリエイト・レストランツで、米は千葉県産「ふさおとめ」を使用し、全てのメニューでそばかうどんのセットにできる。席数は86席。

「AEN TABLE」は下りにある「ちばの恵み 千のぶどう」と野菜重視のビュッフェという点で似通っていたが、業態が変わって効果が出るか注目される。「房州濱乃家」は1000円前後で食事でき、地魚のにぎりなどもメニューにある。

 その他コンビニ「ファミリーマート」、「マクドナルド」、神戸屋が運営するベーカリーカフェ「ブレッズプラス」1号店に加え、クイックマッサージの西洋館も出店しており、従来のような通過点としてのSA・PAではなく、目的地として集客できる内容になっている。


パサール幕張上りの売りの1つ、房総名物ひしこ押し寿司。


ロードサイドグルメの主役は高速道路「ミチナカ」へ

 ネクセリア東日本では直営部門の運営を08年に設立した、ネクスコ東日本リテイルという新会社に移管しており、今後は新会社にシリーズ化される「パサール」ブランドの発展が託される。

 20ヶ所ほどに「パサール」が建設される予定であるが、11月には埼玉県羽生市の東北自動車道下り線・羽生PAに2番目の施設「パサール羽生」が、開業する。コンセプトは「洗練された粋な和風モダン」で、「東北道での旅の始まり」がイメージされているという。デザインは橋本夕起夫デザイン事務所で、規模は幕張とほぼ同規模である。


「パサール三芳」 外観完成予想図。


パサール羽生 内装完成予想図。

 また、12月には埼玉県三芳町の関越自動車道上り線・三芳PAに3番目の施設「パサール三芳」が、開業する。これは第1期オープンとして約2500平方メートルが開業し、来年中に第2期も加えてグランドオープンを目指すもので、完成時には約3400平方メートル、駐車場310台と最大規模となる。目標は年商30億円。

 ネクセリア東日本広報によれば「パサール幕張の推移はほぼ計画通り順調で、改装前の3倍の人がお越しになっている」とのこと。3月28日に始まったETC車に適用される、土日・祝日の首都圏と京阪神圏を除く、地方の高速道路を上限1000円乗り放題とする施策の効果は、「パサール幕張のような適用除外地域はほんの2、3%増える程度。効果が出ているのは東京から100キロを超える宇都宮以遠で10%くらいは売り上げが上がっている」という。

 地域食材の発掘、ご当地グルメの強化、施設の快適化、特に平日の主婦を中心とした地域住民の利用促進といったテーマは、「パサール」のみならずSA・PA共通の課題で、ネクセリア東日本は各運営会社と話し合いの上、順次売場の改装に踏み切っている。

 SA・PAにコンビニ、気のきいたコーヒーショップやベーカリーカフェ、さまざまなご当地グルメが目立って増えているのは、日本道路公団分割民営化によるプラスの効果が出ているからだ。休日のETC車効果は、それにオンする形で東京より100キロ圏より先の北関東、東北、上信越で表れているようである。

 ロードサイドの主役は、全国均一メニューとサービスのファミレスから、地産地消とご当地グルメのSA・PAに移ったと言えるだろう。


ロイヤルグループは地域に合った改装で回遊性を強化

 さて、次にSA・PAの運営会社の取り組みを見ていこう。

「ロイヤルホスト」、「シズラー」といったファミレスのヒット業態を展開してきたロイヤルグループは、モータリゼーション時代を見据えて、1973年より高速道路のSA・PAのレストラン・売店事業に進出。直営で9ヶ所を出店している。

 その9ヶ所とは、九州自動車道上り線・古賀SA、長崎自動車道上り線・川登SA、関門自動車道上り・和布刈(めかり)PA、東京湾アクアライン・海ほたるPA内「ロイヤルマリンコート」、関越自動車道上り・上里SA、関越自動車道下り・駒寄SA、東北自動車道下り・那須高原SA、八戸自動車道上り・折爪SA、八戸自動車道下り・折爪SAである。

 古賀SA上り、上里SA上りなどは、全国的にも売り上げ上位の代表的なSAであり、「ロイヤルマリンコート」は海ほたるPAの大型フードコートと、内容的にも非常に充実している。

 ロイヤルグループも、05年の日本道路公団民営化以降、地産地消の流れと郷土料理ブームを視野に入れ、各SA・PAの強化をはかってきた。

 古賀SA上りは2008年7月に大リニューアルを敢行。レストラン、フードコート、ラーメン屋、ベーカリー、地域特産物販売、ショッピングエリア、プロ野球グッズ販売、宝くじ売場などを備えた「那の国タウン」と命名し、デパ地下を思わせる高級感ある商業施設となり、集客好調とのこと。


古賀SA店 「那の国タウン」。

 これは「パサール幕張」と同じ流れのリニューアルと考えていい。福岡市郊外、古賀市にある古賀SA上りは、九州から本州に抜ける高速道路沿いで、九州最後のSAでもあり、福岡発祥のロイヤルグループとしても、九州を代表するSAにしたいという意欲が強く感じられる出来になっている。なお、“那の国”は博多あたりの旧名である。

 佐世保バーガー、那の国ちゃんぽんの専門店導入など、常に顧客に新しさを提供できる業態変更を行っている。この夏はエリア前面のスペースを活用して縁日風のコーナーを設けて、季節感を出すとともに、レジャー需要に応えた。

 また、埼玉県上里町にある上里SA上りも、09年7月のリニューアルで佐世保バーガーのコーナーを店舗の中央に移動した効果で、佐世保バーガーは1.5倍近くの売上増となった。ショッピングエリアは集中レジ方式に変更し、「新潟伊勢屋」の笹団子、「さくら堂」のあられなど、デパチカ並みの商品群を拡充した。


上里SA店。


折爪SA店。

 北九州市門司区の和布刈PA上りは、関門海峡を見渡す好立地にあるが、09年に佐世保バーガーのコーナーを新設し、売店を集中レジ方式に変更して回遊性を高めている。立地を考慮して海産物の品揃えも強化した。

 佐賀県武雄市の川登SA上りでも、売店を集中レジ方式に変更。それとともにカレーパンコーナーを新設して、売上増をはかっている。お盆期間は、店舗前面で、ソーメン、カレー、餃子、コロッケを販売するなどテイクアウトを強化した。

 栃木県那須町の那須高原SA下りでは、今春ゴールデンウィーク以降の来客増に対応し、飲食の客席不足に対応すべく、「那須豚ソーセージドッグ」、「おからドーナツ」などのテイクアウト販売を強化した。

 海ほたるPA内「ロイヤルマリンコート」は、「房総グリル」、「天丼 てんや」など5つの専門店からなる220席のフードコートだ。通行料800円引き下げ効果もあって多くの家族連れで賑わっている。佐世保バーガーのほか「九十九里地玉子のオムライス」、「穴子天丼」などが人気。店頭では「海鮮串焼き」、「あさりまん」などを販売した。


「海ほたる.」の「ロイヤルマリンコート」。

 このように見てみると、ロイヤルグループのSA・PA戦略は、地元の女性客を集めるデパチカ化、回遊性を高める集中レジへの変更、全国的に人気が出た九州グルメの佐世保バーガーの強化、こ当地グルメの強化、レストランやフードコートの席数不足を補う店頭販売の展開といった、一貫した特徴が見られる。

 同社の「ミチナカ」構築の動きはSA・PAの一つの方向性を示している。


南房総富山地区の拠点「富楽里とみやま」の賑わい

 千葉県南房総市にある、「道の駅 富楽里(ふらり)とみやま」は、富津館山道路・富楽里PAにある商業施設。オープンは2003年4月。千葉県では14番目の道の駅であり、充実した内容で年間48万2000人(08年実績:レジ通過人数)を集客。年々利用者が増え、今年は50万人を突破しそうな勢いだという。


「富楽里とみやま」、一般道外観。


「富楽里とみやま」の広々とした駐車場。


「富楽里とみやま」高速道路側外観。

 年商は1階物販が8億1500万円、2階惣菜・レストランが2億8500万円。台風が近くを通過する悪天候の日に訪問したが、ランチ時は人がいっぱいだった。

 富津館山道路は館山自動車道を経て、東京湾アクアライン、京葉道路に接続されており、東京、横浜、千葉と房総半島南部を結んでいる。富楽里PAは富津館山道路にある唯一のPAで、上り線、下り線の両方から利用が可能である。

 また、一般道の県道外野勝山線からも利用が可能なハイウェイオアシスとなっており、高速道路と一般道の両方から集客できるようになっている。

 駐車場は、高速道路が上りと下り合わせて、普通車60台、大型車12台、身障者用2台。一般道が普通車263台(高速バス利用者専用を含む)、大型車13台、身障者用1台。富楽里PAには東京、横浜、羽田、千葉方面への高速バス停留所があって頻繁に発着しており、通勤者、旅行者のパーク&ライドの中継地でもある。


「富楽里とみやま」館内、席はフードコートと兼用になる。

「富楽里とみやま」は平成の大合併で06年に7町村が合併して南房総市となる前は富山町にあり、富山町の地域活性の拠点として造られた経緯がある。“富楽里”の名称は公募により決まったもので、「ふらり」と誰でも気軽に立ち寄れる「富山の楽しい里」といった意味だ。

 1999年に仮店舗で開業。最初は農家に野菜、果物の残り物を持ってきてもらって販売した。この頃はまだ高速が完全につながっておらず、苦戦していた。しかし仕入れ販売をせず、直売を貫く姿勢が評価され出し、徐々に販売力がアップ。03年に施設ができるとともに、第3セクターの株式会社富楽里とみやまが設立された。

 物販では農業者約350人が直売にかかわる青果に加えて、特産物のびわ関連商品など観光客向けの土産物を問屋から仕入れて販売。また、岩井漁協直売の獲れ立ての鮮魚コーナーを開設し、好評を博している。


地元農家が直売する、青果コーナー。


南房総名産のびわを使った菓子が充実。

 惣菜コーナーでは、「青倉商店」「喫茶・軽食 菜の花」にて地元食材にこだわった弁当、なめろう、そのなめろうを焼いたさんが焼きのような郷土料理の惣菜を、フードコートのようなイートインで楽しめる。


「菜の花」は定食屋、惣菜屋、喫茶を兼ねた独特の店。


房総の郷土の惣菜の数々。ご飯とセットにして館内で食べることができる。

 また、「近藤牧場」は日本で希少なブラウン・スイス種から搾った牛乳、ソフトクリームなどを販売。「らーめん ふらり」は季節限定の菜の花色やコスモス色の季節限定麺も楽しい、地元住民に人気のラーメン屋だ。惣菜コーナー4店は人気面で拮抗しているそうで、リーシングのバランス感覚の良さが光っている。


「近藤牧場」のブラウン・スイス種牛乳からつくったソフトクリーム。


地元客に人気が高いのはやはりラーメンやカレー。

 そして、レストランは岩井漁協直営の「海鮮レストラン網納屋」。板前が魚をさばく実演を見ながら、漁港で朝に獲れたばかりの鮮度抜群の魚を使った刺身、寿司、焼魚などを食せる。


漁協直営レストラン「網納屋」。


「網納屋」店内。


「網納屋」座敷席。


職人が水槽の魚をさばいて提供する。


地魚を使った海鮮丼、あみなや丼(1400円)。

「PAにある店とはいえ、まず地元の人に愛されなければ安定した収入は見込めません。そのうえで東京からのリピーターも多い、旧富山町の地域活性の拠点になっています。これだけ一日中お客さんが途切れない道の駅は、そんなにないですよ」と、黒川正吾支配人は胸を張った。

 集客に関しては、そば打ち、太巻き寿司などの講習、びわ狩り、みかん狩り、タケノコ狩りなどの体験イベントを行って、地域住民の交流の場となっている。

 東京での知名度は、吉祥寺にある武蔵野市の姉妹都市の物産を集めたアンテナショップ「麦わら帽子」に南房総市も出店していることから、商品を供給する「富楽里とみやま」の知名度も上がっている。

 それでも黒川支配人は、「レストランはまだメニュー開発の余地がある」と、手綱を引き締めて、地方型「ミチナカ」確立のためさらなる集客を狙っている。


SA・PAは地域の農場が競い合うブランド豚の見本市

 ここで視点を変えて食材に注目してみると、各SA・PAが郷土の食材を使ってメニューを考案する時に、地場の銘柄豚が登場することが多い。

 地名の付いた肉の銘柄と言えば、牛肉の神戸牛、松坂牛、前沢牛など、地鶏の比内地鶏、大山地鶏、宮崎の地頭鶏などが有名だが、豚の銘柄は鹿児島の黒豚が知られるくらいだった。それが近年の郷土料理ブームで、地域に即した飼育法を行ったさまざまな銘柄豚が誕生している。

 東名高速道路のSA・PAに沿って、その実情を報告してみよう。

 東京を起点としてまず、横浜市緑区の港北PA下りのレストランでは、横浜の業者が開発したブランド豚「はまぽーく」を使った、焼肉定食、カツ丼などが提供されている。学校給食や事業系食品で生じた余りのリサイクルと、配合飼料を合わせて豚に与えて、肉質のやわらかく脂身のおいしい豚が誕生した。


港北PA下りはまぽーく焼肉定食(850円)。

 神奈川県海老名市の海老名SA下りの洋食「ダイニングCASA」では、神奈川名産100選に選ばれた「高座豚」による、「トンテキ定食」を提供。


海老名SA下り トンテキ定食200g(1580円)。

 静岡県小山町の足柄SA下りのレストラン「ピットイン」では、富士山麓の湧水で育てた「金太郎ポーク」を丹念に叩いて薄くして、高温で一気に揚げた「ペチャカツ定食」が名物。ウスターソースに合う懐かしい味だ。料理評論家・山本益博氏と共同開発した。


足柄SA下り ペチャカツ定食(990円)。

 静岡県駿河区の日本平PA下りのレストラン「駿河亭」では、富士山麓朝霧高原で育った「ヨーグル豚」の生姜焼定食が人気。「ヨーグル豚」はヨーグルトを配合した餌を豚に与えることにより、やわらかく脂がおいしい肉となった。

 静岡県牧之原市の牧之原SA上りのレストランでは、引き締まった脂肪とキメの細かい肉質の黒豚を掛け合わせた「遠州黒豚」を使った、とんかつ定食などを提供している。

 浜松市北区の浜名湖SA上りと下りのメインレストランでは、茶ガラとオカラを与えて育てた「浜名湖育ち」を使用したとんかつ定食などが食せる。肉質はやわらかく味はまろやかで、サシが細かく入っているので保水性が高くジューシーだという。

 愛知県豊田市の上郷SA上りでは、レストラン「三河亭」では、「渥美野ポーク」を使った味噌かつをはじめ、エビフライ、半きしめんと、名古屋の味が満喫できる「名古屋三昧」という定食が人気だ。

 東名だけでもこれだけ各地の銘柄豚の料理が提供されていて、あたかも見本市のようになっている。こうした現象が全国的に広がっているのである。しかも、これらの銘柄豚料理は1000円前後、800円から高くても1500円くらいまでで、気軽に食べられるのが嬉しい。

 もちろん、ラーメン、焼きそば、うどん、そばといった麺類、まぐろ、しらす、桜えび、かつお、鮎、鰻などの魚などの魚で地域の特色を出そうといった動きもある。

 今後は高速道路に出品することから評判になって、郷土料理や郷土の食材が全国に普及するケースも増えるだろう。

 これまでは、海老名SA下りなどの「ぽるとがる」のメロンパン、静岡県御殿場市の駒門PA上りなどのアメリカンドッグ「アメリカンドッ君」のような、ファーストフードの延長線上にあるスナック的なものが、高速道路グルメとして紹介されてきたが、今ではそれにオンして、郷土色を出した食事の広大な領域が広がってきているのである。


一般道に掲げられたSA案内標識。高速の外からも利用が可能なのだ。


高速に乗らなくても一般道から徒歩でもSAとPAの大半が利用できる。

 政権交代によって民主党内閣が誕生するが、民主党のマニフェストに高速道路無料化がある。これは必ずしも民意が望むものでないことが、マスコミ各社の調査で明らかになっているが、現状でも渋滞が目立つ首都圏、京阪神圏など大都市は無料化しない方針であると、民主党の有力議員は語っている。

 しかし、少なくとも地方を走る高速道路は無料化に向かうと思われ、SA・PAは地域活性の拠点となっていくだろう。「道の駅 富楽里とみやま」はその先進的な事例だ。

 また、大都市近郊では「パサール幕張」、「那の国タウン」のようなデパチカにも匹敵するクオリティを備えたグルメ街が、駅ビル、空港ビルに負けじとどんどんつくられていく。

 高速道路SA・PAは高速道路無料化、料金引き下げの方向性の中で、これからますます面白くなっていくだろう。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2009年9月14日執筆