フードリンクレポート


脱税から一転!
ジー・コミュニケーションがフーディーズ傘下に。

2009.11.11
英会話スクールNOVAを救済して一躍、知名度が上がった株式会社ジー・コミュニケーション。学習塾と外食事業を核に企業買収で拡大し続けてきた。外食では「焼肉屋さかい」「とりあえず吾平」など48業態、790店を展開。そこに開業支援サービスの株式会社フーディーズが10/30付けで筆頭株主として躍り出た。


新宿歌舞伎町の「焼肉屋さかい」。145店(直営76店、FC69店)で最大ブランドだが、現在、居酒屋「とりあえず吾平」(直営68店、FC62店)の出店が目覚ましい。

稲吉正樹会長の脱税が2月に発覚

 ジー・コミュニケーションは1994年に創業者、稲吉正樹氏が学習塾「がんばる学園」を開業したのが始まり。稲吉氏は1969年に愛知県蒲郡市で生まれ、蒲郡市役所入庁した後、がんばる学園で独立した。学習塾を増やす一方で、2005年に「平禄寿司」、同年に「とりあえず吾平」、06年に「おむらいす亭」、同年に「江戸沢」、07年に「焼肉屋さかい」と業績不振に陥った外食企業を買収し、コスト管理を徹底させ黒字に転換し続けてきた。

 09年3月期の連結決算は10ヶ月の変則だが、売上高640億円、経常利益19億円。最終利益は07年度、08年度と不採算店の整理に伴い赤字であったが、09年度は10ヶ月で10億円の黒字に転換させた。稲吉氏は親会社となるジー・コミュニケーションの発行済株式総数の7割以上を所有。

 ところが、稲吉氏は今年2月に名古屋国税局の税務調査を受け、07年に知人らにジー・コミュニケーション株の約230株を売って得た約5億円の売却益を故意に申告しなかったと判断された。重加算税を含めて追徴課税は約1億円。さらにグループ会社でも約15億円の申告漏れがあったことも判明した。

 企業買収を重ねたため金融機関からの借り入れがかさみ、株式上場により市場から直接資金調達を目指し、野村証券が主幹事に指名されていた。ところが、稲吉氏の脱税により株式上場は当面難しい状況に陥った。巷の噂によると、取引銀行とも仲たがいし、資金繰りが厳しくなったようだ。

 そこで登場したのが、日本振興銀行をバックにするフーディーズだ。


フーディーズは日本振興銀行の支援で筆頭株主に

 フーディーズは、久保田恭章氏が代表。久保田氏は1975年生まれで、不動産会社・生命保険会社勤務を経て、店舗リースの店舗流通ネット株式会社(現TRNコーポレーション株式会社)の創業に関わる。久保田氏は取締役として同社の2004年上場を果たした。同社の当時の江藤鉄男社長が詐欺事件を起こして辞任した直後、05年6月に居酒屋「刻」を展開していたフーディーズの代表取締役社長に就任。そして、07年に繁盛店支援スキーム「黒字ネット」の展開を開始した。開業者は保証金や内装工事など初期費用の負担を軽減させ、家賃に含めて分割して払う仕組みだ。店舗流通ネットのビジネスに近い。

 スモールビジネス支援を掲げていた株式会社テレウェイヴ(現株式会社SBR)が、08年2月にフーディーズを買収。しかし、テレウェイヴの業績不振から手放し、同年12月に日本振興銀行が支援する中小企業飲食機構株式会社、中小企業保証機構株式会社がフーディーズの親会社となった。

 日本振興銀行は04年に設立された、中小企業向けの融資を専門とする銀行。日本銀行出身で有名コンサルタントの木村剛氏が設立にかかわった。

 そのフーディーズが、今年10/31付けで、ジー・コミュニケーション株を72.83%持っていた稲吉氏から35.7%の株を買い付け、ジー・コミュニケーションの筆頭株主となった。買収資金のバックには日本振興銀行がある。

 しかも、ジー・コミュニケーションの3位株主(9.53%)はベンチャー・リンク。日本振興銀行が再生支援しているNISリースのファンドがベンチャー・リンクに対して11/5〜12/3の間、公開買い付けを実施中であり、ベンチャー・リンクも賛同している。ちなみに2位株主(21.82%)は稲吉正樹氏。


今後のジー・コミュニケーションは

 日本振興銀行は、中小企業支援機構株式会社、中小企業経営支援機構株式会社、中小企業保証機構株式会社など中小企業をヒト・モノ・カネで支援する株式会社を設立し、それら企業への融資し、その金は企業買収などに投資に使われている。

 ジー・コミュニケーションは、金融面で飲食店の開業支援を行うフーディーズの傘下となった。しかも銀行が資金面のバックについている。ジー・コミュニケーションの持つ数多くのブランドをフランチャイズやライセンスとして広く独立開業希望者に販売していく。個人や新規事業を求める企業に。その際の資金面のバックアップをフーディーズが行い、開業しやすくするというスキームと推測する。

 フランチャイズシステムに資金面のバックアップもプラスした新たなフランチャイズモデルが生まれるかも知れない。ただ、フランチャイズといえども誰でも成功できる訳ではない。その点への配慮が鍵になってくるだろう。


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年11月6日執筆