フードリンクレポート


「伝説のすた丼屋」大阪へ殴り込み!
早川 秀人氏
株式会社アントワークス 代表取締役

2009.11.13
東京三多摩地区を中心に根強い人気を誇る「伝説のすた丼屋」。1972年に東京・国立で誕生。スタミナ丼の真骨頂として38年間、若者に支持され東京で店舗数を増やしてきた。全国制覇を目指す早川秀人社長は次なる都市、大阪に出店を決めた。


バイクで通勤する、早川秀人氏。

11/14(土)道頓堀に開店、勝算あり

 24店目として、大阪・道頓堀で11/14(土)に開店させる。戎橋近くで、たこ焼きの有名店、くくるが創業したビルの1階という好立地。地下1階も使って、大阪での多店舗展開に向けて、小規模なセントラルキッチンを用意する。

「東京から出て行くのが初めて。東京の次の街は大阪で、難波か梅田と決めていました。地味な場所に出しても意味が無いので道頓堀のメインストリートに決めました」と早川氏。

「看板自体には敢えて東京とは謳いませんが、大阪色を出そうとも思いません。場所柄、観光客が圧倒的に多いですが、地元の働いている方々がターゲット。品川の『品達丼五人衆』に出店した際、いっぱい観光客が来ますよ、金額も上げるべき、お金を落としてくれますよ、と言われました。でも、ウチはそのままで行った。観光客よりも周りで働いている人に来てもらおうとしました。逆に他の店より値段が安くなり、大成功です。」


本社に貼られた、大阪進出と、セブンイレブン「伝説のすた丼」弁当のポスター。


東京の店舗と全く同じ内容で勝負

「ホスト、黒服も含めて道頓堀で働く人がターゲット。黒服さんは夕方に弁当の注文をくれます。東京でもそうですが、パチンコ店の店員やお客もよく来てくれます。出店する際には必ずパチンコ店を回ります。道頓堀にはたくさんのパチンコ店があって、昼から人が入っており、イケますね。」

「伝説のすた丼」はかつて男っぽい接客に徹していたが、店舗数が増え、女性や年配の方にも来てもらえるよう、QSCにも配慮する接客に替わった。しかし、大阪はかつての男っぽさをウリにする。スタッフも大阪人を東京で半年修行させるなど、気合が入っている。

「俺の中じゃ、大阪に喧嘩を売りに行く感じです。大阪では知られてないので、とんがった方がいい。すた丼屋のライバルはすた丼屋だといつも店長に言ってます。自分の店以外のすた丼屋からお客をぶんどるようなつもりでやれと言ってます。大阪は他のすた丼屋がないので、お客を獲り放題ですね。東京と同じく店内には、掟5ヵ条、宇宙最強という言葉も掲げ、お客を煽っていきます。」

 いつもの開店時の販促、580円のすた丼を2日間限定で100円で提供して行列を作る。他には、チンドンヤを雇い、ビラ撒きに徹する。メディア向けのレセプションも事前に行い、PR活動にも余念がない。11/14の開店の前後で、全国ネットのテレビ番組にもすた丼が登場する予定だ。

「勝算あり。大阪の方々に食べてもらっても問題なし。あとは、売上をどこまで上げられるか。10坪ですが、月商1000万円はいくでしょう。」


北イタリア産ホエー豚に全面切り替え

 使用する豚肉を9月から全て北イタリア産ホエー豚に切り替えた。このホエー豚は、イタリア国内ではモモ肉を「パルマハム」の原料にしているもの。通常の豚よりも長い飼育期間が特徴で、標準的な飼育期間の1.5倍、9ヶ月以上をかけ、北イタリアの自然の中で育てられる。飼料は穀物が主体だが、ホエー(乳清)も飲ませて、保水性があり柔らかで臭みのない肉質。以前のすた丼よりジューシーで柔らかくなったと好評だ。

「日本では、レストランは除いて、すた丼にだけ卸すという約束です。イタリアも輸出したいらしくて、店内でも協力して告知しています。切り替える前に覆面で出したら、評判が良かった。前のすた丼はたれの味が強かったが、食感が柔らかくて豚肉の味も残ると言われました。」


テーブルには北イタリア産ホエー豚を告知するPOPを設置。


セブンイレブンにすた丼弁当が登場

 9/15から11/2の間、都内のセブンイレブンで弁当として「伝説のすた丼」が495円で発売された。

「セブンイレブンさんにはレシピは教えず、味のチェックをして名前を貸しただけです。すた丼の知名度が上がりました。1日に5個売れればOK、10個売れれば凄いと事前に言われていましたが、初日から1週間で30個平均で売れました。最初は三多摩地区の店だけでしたが、都内全店での扱いとなりました。西国分寺店はオーナーさんがすた丼のファンで150個も売ったそうです。」

「発売前は店長からセブンイレブンが近くにあるので売上が減るかとか言われましたが、実際には増えました。それまでは前年割れしていた店もありましたが、9〜11月が5%増です。ホエー豚の影響か、セブンイレブンの影響か分かりませんが。」


セブンイレブンの「伝説のすた丼」495円。


FC展開スタート

 年内は12/4、25店目で初の渋谷に進出する。そして、来年2月には大阪2号店が関西大学前にオープンする。

「関西大学前という駅の真正面。講義がないときは厳しいですが、学生さんは2万4千人もおり、近辺に住んでいる方もいます。東京では、大学生が大学時代に通ってくれて、社会人になってお世話になりましたと思い出してくれる人が凄く多い。必ずひょんなことから話が繋がります。大阪でもそんな流れがつくれたら。」

「商業施設からの出店要請も来ますが、制約が多い。ガスや排気の容量が足りない。普通の排気だと吸いきれず、表ににおいが出過ぎ。ピザやラーメンやたこ焼きの跡では厳しい。また、単独でお客を呼べるんで高い家賃を払って、しかも制約を受けてやる必要はありません。ただし、宣伝効果はあります。ウチを広く知ってもらうには効果がある。そんなに毛嫌いしている訳じゃありませんが、魅力のある商業施設がないんです。」

 現在、FCパッケージを開発中で、来年3月のフランチャイズショーに出展する計画だ。2010年8月から始まる来期には直営・FC合わせて50店の新規出店を目指す。

「金の為にやる気はありません。加盟金、ロイヤルティなどハードルは低くする予定ですが、思いっきりこっち主導でいきますよ。ウチはすた丼屋。別に商売人でもないし、業態は飲食業じゃなくてすた丼屋だし、職種も接客業やサービス業じゃなくてすた丼やなんです。」

 2014年、早川氏が50歳になる年に全国制覇が目標だ。FCという手法を取り入れ、出店を加速させる。しかし、「伝説のすた丼屋」のコアである男っぽさは決して失いたくないと考えている。草食系男子がもてはやされる時代に、硬派を貫くことで今後さらに注目を集めることになるだろう。


株式会社アントワークス


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2009年11月4日取材