フードリンクレポート


イケてる韓流レストラン、ニューコリアン・キュイジーヌの潮流が熱い。

2009.11.18
東京都内を中心に韓国料理をベースに和食や洋食と融合した、“ニューコリアン・キュイジーヌ” ともいうべき新しい韓国料理の流れが生まれてきている。そうした新韓国料理の潮流は、焼肉とオモニの家庭料理にとどまっていた日本の韓国料理から脱却して、宮廷料理、ヘルシー志向、鍋料理、B級グルメなど、さまざまな要素が付加された展開となっている。現代感覚にあふれた、韓流レストランをレポートする。


韓国伝統健康茶付きワンプレートランチ(アニソナカフェ・銀座松坂屋屋上)。

韓国で見直されている宮廷料理を会席風にアレンジ

 歌舞伎町とゴールデン街の間にある遊歩道「四季の道」沿いに、2007年7月にオープンした「韓国会席 百済」は、韓国の宮廷料理に現代的なアレンジを加え、日本人の口に合ったリーズナブルなコース料理を提供する店だ。

 新築だが古民家のような趣のある2階建ての建物で、都会の隠れ家の雰囲気がある。


四季の道沿いにある百済の外観。


百済のエントランス。


アンティークの調度品を随所に取り入れている。


階段には巨大な絵画が展示されている。


百済の廊下。韓国の伝統的な雰囲気がかもし出されている。


落ち着いた雰囲気の百済の店内。

 店名の百済は韓国西部にあった古代王朝の名から取ったもので、日本に仏教文化を伝えた重要な国であった。この店の経営者であるジュン・アソシエーツの庄田雅恵社長は、今は日本に帰化しているが、かつて百済の国のあった辺りの出身で、故郷の食文化の豊かさを日本に紹介したいという意味合いも店名に込められている。

 庄田社長は学生時代に日本へ留学して勉学を積んだ後、1985年に高円寺で焼肉屋をオープンして成功。その焼肉食べ放題「炭火苑」は、現在は吉祥寺に移転したが、たびたび料理番組に登場し、鍋料理や石焼ビビンパも好評な繁盛店になっている。

「韓国会席 百済」では、料理プロデュースに韓国ナンバー1ヒットの韓流ドラマ・映画「食客」の監督であるキム・スジン氏を迎えており、日本でも発売されているDVDを見て来店する人もいるという。「食客」は韓国随一の宮廷料理店の後継を巡り、イケメン若手料理人たちが創意工夫した料理バトルを繰り広げるといった内容。


韓流人気ドラマ「食客」のDVD。韓国では宮廷料理の見直しが進んでいる。

「韓国のフルコースは韓定食というのですが、テーブル2つが埋まるほどのボリュームです。そのまま出してしまうと日本人は驚きますし、作るのも大変。野菜の値段も、韓国と違って日本は高い。そこで料理を絞って、韓国の鍋も取り入れながら、日本の会席のような感じで提供できないかと考えました」と庄田社長。

 韓国では食べ切れないほどの量を出すのが、ご馳走とされていて、料理は残して当たり前。しかし、日本人の考え方では残すのは勿体無い。小皿で少しずつ食べたい。そこのバランスを取った、新韓国料理であり、日本の食のトレンドである鍋もしっかり押えてある。

 韓国料理というと一般に辛いイメージが強いが、庄田社長によれば「韓国料理は高級になるほど辛くなくて上品な味になる」とのことで、辛い料理は宮廷料理をベースとするこの店では主流ではない。

 韓国宮廷料理の作法に則って、5色と5つの調理法を織り交ぜている。5色とは白と黒を含み、あとは赤、緑、茶、黄色などのうちから3色を白と黒に絡めるもので、見た目も鮮やかで目でも楽しめる料理になるという韓国伝統の知恵だ。また、5つの調理法とは、煮る、焼く、蒸す、炒める、揚げる、を指す。これらを組み合わせればバラエティに富んだコース料理になる。


メニューの一部は店の前で確認できる。

 コース料理は会席料理が9品3150円から(2名より)。コースの最初に胃を整えるために必ずお粥が出るのが特徴だ。体に優しい野菜を中心とした肉も魚もバランスよく取る、化学調味料を使わない天然調味料の味付けは、現在の韓国料理の先端だという。なので、同店の会席料理では焼肉は出てこない。

 飲み放題付き宴会コース(4000円〜)は、韓流ちりとり鍋、コブチャン鍋、カムジャタン鍋、エゴマ薬膳鍋、プルコキ鍋、海鮮チゲ鍋の6種類から選べる。飲み放題になるのは、瓶ビール、焼酎、韓国酒(マッコリ、チョウムチョロム、鏡月、眞露)、清酒、紹興酒、サワー(各種)、ワイン、ウィスキー、韓国伝統茶(各種)、ソフトドリンクとふんだんにある。

 一品料理では、色彩鮮やかな手の込んだ「シンセンロ鍋」(3990円、要予約)、和牛ミンチをタレでもみ込み照り焼き風に焼き上げた「王様カルビ」(1260円)、黒豚のバラ肉を特製醤油ソースで蒸し上げた「ポサム」(997円)、鶏肉を炭火で焼き上げ辛子ソースで炒めた「火の鶏」(997円)などが人気。メニュー数は150〜160もある。そうした宮廷料理群のほかに、炭火七輪焼きも各種あり、一品では焼肉も楽しめる。


「王様カルビ」1,260円


「火の鶏」997円。


七折坂(チルジョルパン、2980円)は真ん中の黄色い皮に周囲の6つの具材を好きに包んで食べる。3日前から要予約。

 顧客は30代〜50代が中心で男女比は半々くらい。接待は当然男性が多い。大久保に近い新宿にはあるが、日本人が99%で、韓国人はほとんど来ないという。

 客単価は5000円ほど。ランチは800円からと安く提供されている。

 韓国料理の先端に、日本の料理の考え方を融合させたニュータイプの店と言えよう。


ロスで人気沸騰、コギバーベキューが日本に初上陸

 9月11日、帝国ホテル近くの有楽町ガード下にオープンした「カフェ&ダイナー レッドホッパー」は、アメリカ・ロサンゼルスで人気が沸騰している、韓国料理にメキシコ料理を融合させた、KOGI・BBQ(コギバーベキュー)を日本で初めて提供する店だ。

 コギスタイルの焼肉は、アメリカではニューヨークにも人気が飛び火しており、アメリカ最新スタイルのダイニングの1つだ。コギとは、プルコギを略したものである。

 経営する結粋は神田と新丸ビルに店舗を構える和食「神田 新八」を展開してきたが、今回初挑戦の業態だ。なお、「レッドホッパー」の隣の魚串を中心とした「やきや 新八」も同日オープンである。


レッドホッパー外観。


レッドホッパー店内。


店の雰囲気は、アメリカ風でもあり韓国風でもある。


サボテンでメキシコ的なムードも演出。

 テイクアウトも可能な主力のタコスは、韓国風の野菜とともに炒めた焼肉を、韓国人がサンチュで巻いて食べる代わりにメキシコ料理のタコスでくるんだもので、1個300円。牛肉の「プルコギビーフタコス」、豚肉の「サムギョプサルタコス」、鶏肉の「チーズブルダックタコス」と3種類ある。タコスは1日平均して100枚が出ており、上々のスタートだ。


皿に盛られたプルコギビーフタコス。


プルコギビーフタコスを巻いてみた。

 一品料理では「RHチキンウイング」(8本、500円)、「ごろごろ野菜のチーズスペアリブ」(880円)、「赤いおでん」(550円)、「とろ〜り温玉プルコギライス」(780円)などが人気で、隠し味にコチジャンを使うなど、どこかに韓国テイストを入れているコリアンフュージョンとなっている。


RHチキンウイングとマッコリカクテル(グァバ)。


ごろごろ野菜のチーズスペアリブ。

 そうした中でも「ビビンパ・タコライス」(780円)はまさにコリアンとメキシコが融合した、この店らしいメニューである。

 ランチは600円からと安く、タコスのほかにハンバーグ、ビビンパライス、タコライスなどが提供されるが、1日5食限定のイタリア風ヒレカツ「ミラネーゼ」(600円)はサービス品である。

 ドリンクは、ライムジュースで割りペパーミントでアクセントを付けた「有楽町ハイボール」(400円)が売り。黒豆を原料とするヘルシーな「黒マッコリ」(グラス500円)も人気だ。ビール、韓国焼酎を含めた焼酎、各種カクテルもある。

 カクテルではオリジナルのマッコリカクテル(500円)も店の売りの1つで、ブルー、マンゴー、カルピス、カシス、グァバの5種類があって、マッコリが苦手な人も飲めるフルーティな味だ。

 席数は64席あり、内装は、倉庫の中にオープンしたようなモダンな感じで、壁には落書きが書かれている。

「アメリカンダイナーっぽい店ですが、こういう雰囲気は韓国の居酒屋によくあるとも言われています。ロスのコギスタイルの店を研究してつくりました」(大島泰英店長)。

 顧客層は10代から40代までと幅広く、男女比では4:6で、女性がやや多い。顧客単価は3500円となっている。

 ファーストフードや屋台でも広がる可能性がある、コギバーベキュー。どこまで支持を広げられるか、注目したい。


タコスはテイクアウトでも人気。


ある日のおすすめメニュー。


和洋中韓を織り交ぜた季節の生野菜が食べ放題の店

 都内でも大久保、歌舞伎町と並ぶコリアンタウン、赤坂に2007年6月オープンした「やさい村 大地」は、豚のバラ肉を焼いてサンチュなど生の葉野菜に包んで食べる料理、「サムギョプサル」の専門店。


やさい村大地 外観。ビルの2階にある。


やさい村大地 店内。


やさい村大地 テーブル席。

 しかし、この店の売りは常時15種類提供される生野菜の数々で、もし無くなったらどんどん補充してくれる。つまり、食べ放題だ。

 メニューは顧客の9割が注文するという「サンパセット」(3500円)がメインで、日替わりのおかず4品にネギサラダと自家製の味噌が付いてくる。肉は生野菜で包む時に、味噌を絡めて食べる。なお、“サンパ”とは、韓国語で包んだご飯といった意味だ。


豚バラ肉、ネギサラダ、タレ。


おかずと味噌、カクテキ。


ふんだんに盛られた野菜。

 シメは、キムチチゲ、味噌チゲ、おこげ(お茶漬け風)、冷麺、ドンチミックス(韓国そうめん)の5種類から1つを選べる。

 また、単品ではチヂミ、春雨がある。ドリンクは、ウーロンハイやサワー、韓国焼酎の「チャミスル」の人気が高い。

 席数は50席ほどで、顧客単価は4000〜4500円。

「元来の韓国の焼肉屋は野菜のお代わり自由なんです。日本では野菜の値段が高いのでなかなかできなかったのですが、契約農家と直に取引しているから実現できました」と高田喜一郎店長。近郊の農家から毎日新鮮な季節の野菜が届く仕組みが、背景にあったのだ。

 野菜は和洋中韓を織り交ぜて提供。メインは青、赤、黒と3種類あるサンチュだが、ベビーリーフ類、サニーレタス、バジル、大葉、サラダセロリ、デトロイト、ターサイなどバラエティに富んだ野菜が楽しめる。珍しいところでは、山菜のタデ、苦味が少ないサラダケールなんかもある。


壁には野菜図鑑や多くのサインが張ってある。

 高田店長によれば、栽培技術の進歩で、最近は日本でサンチュが栽培できるようになったのが大きいという。エゴマの葉と青トウガラシは、まだ日本ではうまく作れないので韓国から輸入しているそうだ。

 野菜を最良の状態で出すために、野菜専用の冷蔵庫が店内にあるが、傷みやすい野菜とそうでない野菜を段で分ける、水に弱い野菜は洗う時にじゃぶじゃぶと水に漬けないなど、1つ1つの野菜の扱い方を生産者と情報交換しつつ試行錯誤しながら確立していった。そうしたノウハウも、この店の財産だ。

 顧客層はオープン当初は韓国人ばかりだったが、現在は日本人が圧倒的に多い。しかも女性が8割ほどに上り、OLの支持が厚くリピーターも多いそうだ。

 ここまで野菜にこだわって、世界の野菜を提供する韓国料理店は今まで無かった。また、「サムギョプサル」もタレに漬け込んだものでなく、塩と胡椒を振っただけのシンプルな味付けとなっているのも大きな特徴だ。韓国料理のヘルシーさをアピールする「やさい村 大地」もまた、新しいコリアンを代表する店と言えよう。


炭は店内で焼いている。


韓流スター御用達。日本風味付けでトレンドを発信

 同じ赤坂にある「兄夫(ヒョンブ)食堂」は、24時間営業・年中無休を打ち出して、テレビ局やナイト業界の関係者にもファンが多い韓国家庭料理店だ。オープンして9年になるが、2007年2月には渋谷に2号店を出している。

 オープン当初は、赤坂通りの南側はまだ韓国料理の店は無く苦戦したが、歌手のBoAさんが来店して以来おいしいという評判が広がり、韓流スターが多く来店する店になっている。パク・ヨンハさん、リュ・シウォンさん、東方神起のメンバーらが、同店を実際に訪れている。

 それとともに日本人も多く来店するようになり、今では最初はビルの1階だけだった店舗が2階、4階にも拡大している。総席数は250席。


兄夫食堂の外観。


兄夫食堂のエントランス。24時間営業をアピール。


兄夫食堂 店内。


店内には韓流スターのサインがいっぱい。

 現在の顧客は日本人が9割、韓国人が1割で、ほとんどが日本人だ。また、男女比では女性客が多くOL中心に女性客が3分の2を占める。オフィス向けの出前の注文も多い。客単価は3000円。

 メニュー数は約200種類もあるが、味付けは日本人の好みを考慮して、全般に辛さを抑え、甘くしている。韓国人でも甘い味を好む人には、好評という。つまり料理のスタイルは完全な韓国料理だが、味は日本風といった料理だ。

 人気メニューは、鍋料理ではホルモン鍋の「コップチャン鍋」(2〜3人前、3150円)、豚の背骨から取ったスープのジャガイモ鍋「ガムジャタン」(同)、滑らかな豆腐を使った「スン豆腐チゲ」(1570円)など。


「ガムジャタン」2〜3人前、3150円。


「スン豆腐チゲ」1,570円

「ウィジョンブ・ブデ・チゲ」(2〜3人前、4200円)は、朝鮮戦争の時に軍隊が米国からもらったものを鍋に入れて食べたことから発祥した料理で、キムチベースに肉汁、スパム、野菜、インスタントラーメン、豚肉などが入っている。洋風のタッチの新しい韓国料理で、この店の売りの1つだ。ウィジョンブはソウルの北にある町の名で、ブデ・チゲは日本語に訳すると部隊鍋である。


「ウィジョンブ・ブデ・チゲ」2〜3人前、4200円

 鍋とともに人気が高い焼肉は、韓国式の「骨付きカルビ」(2650円)、「生サムギョプサル」(1260円)、「豚カルビ」(醤油・辛口、各2100円)などがよく出る。


「骨付きカルビ」2,650円。

 一品料理は、海鮮の「ヘムルチヂミ」(1280円)、蒸した豚肉を白菜で巻く「ポッサム」(3150円)のほか、韓国人は飲んだ後、おこげのお粥「ヌルンジ粥」で締める人が多い。胃に優しい「あわび粥」、「かぼちゃ粥」を注文する人も多い。


「ポッサム」3,150円

 ランチはまさに格安のワンコイン、500円からの提供となっている。

 お酒は、韓国焼酎「チャミスル」、マッコリ(共にグラス520円)、オリジナルのマッコリサワー(630円)のほか、ビール、ワイン、シッケという甘酒風の韓国酒も出る。韓国ではよく宣伝している、米と10種類のハーブから造った「百歳酒」の「チャミスル」割りである「五十歳酒」を飲めるのもうれしい。

 さらに「兄夫食堂」では、これから来年に向けて日本であまり知られていない、韓国の蒸し餃子「チンマンデゥ」(6個600円)を積極的にPRしていく方針。お酒のツマミとしては非常に口当たりがよく、新たなヒットメニューになるかもしれない。焼き餃子もある。


蒸しあがった蒸し餃子。もっちりした薄い皮が喉越しに良く、幾つでも食べられそう。

 韓国の家庭料理を日本人の口に合うようにうまく提案し、韓流スターの支持も受けた料理センスと、韓国料理の先端をとらえて日本に紹介していく「兄夫食堂」の姿勢は、これまでの焼肉屋や韓国家庭料理店にはない新世代の発想と言えるだろう。


キムチなどはすべて手作り。


「冬のソナタ」をイメージ、新感覚フュージョン料理

 さて、韓流ドラマを代表する名作と言えば「冬のソナタ」。その「冬のソナタ」がアニメ化されて10月17日より、スカパー!で放映されている。アニメでもドラマで主演を務めた、ペ・ヨンジュンさん、チェ・ジウさんが声優に挑戦しているので話題になっている。

 アニメ「冬のソナタ」放映を記念して、「冬のソナタ」の世界を表現したアニソナカフェ「初めて」が銀座松坂屋の屋上に開設している。オープンは10月24日で、来年3月最終週までの期間限定で出店する。

 運営はアニメ制作会社のリアルシングエンタテインメント(東京・渋谷区)。


銀座松坂屋屋上にオープンした、アニソナカフェ。


冬のソナタにまつわる展示コーナー。


店内に展示されているヨン様像。


アニメ化するにあたりヨン様をどう描くか、キャラクターづくりが一番苦労したという。

 店舗スペースには「冬のソナタ」の名シーンを再現した展示などが施されており、屋上なので雨風の強い日はつらいが、天気の良い日は開放感があって雰囲気は良い。夜はライトアップされて、ポラリス(北極星)のロマンチックなイメージが高まるという。

 フードプロデューサーに、料理研究家の鈴木あさみ氏を起用。鈴木氏は、農業を一から学ぶファームマエストロ協会代表理事を務め、野菜ソムリエ、ベジフルビューティーアドバイザーでもあり、特に野菜に造詣が深い。ペ・ヨンジュンさんが野菜好きといったところから、有機産直野菜を中心としたメニューづくりとしたそうだ。

 料理は新鮮野菜に、ソース、ドレッシングなどにコリアンテイストを加えた新感覚のフュージョン料理で、全般に優しい感じの味が多い。体の内から健康&キレイがテーマ。

 人気の「ワンプレートランチ」(1500円)は日替わりメニューで、ライスはビタミン、ミネラルが豊富な十六穀米を使用。色鮮やかに盛り付けられる。「ワンプレートランチ」はアニメ「冬のソナタ」挿入歌を歌うユンジさんがプロデュースした、韓国伝統茶が付くのも魅力になっている。お茶は5種類あり単品で注文すると700円。


韓国伝統健康茶付きワンプレートランチ。カツのソースにコチジャンが入っていたり、サラダのドレッシングが韓国風であったりといったフュージョン料理。

「トウモロコシ茶」は韓国では日本の麦茶のような感覚で、一般的に飲まれるお茶。「メシル茶」は蜂蜜または砂糖に漬けた梅をお湯で溶いて飲む果実茶。「ユルム茶」はハト麦、大豆、くるみ、葛、松の実が入ったデザート茶。「五味子茶」はアセロラジュースのような味がする朝鮮五味子の実でつくる果実茶。「ナツメ・ハチミツ茶」はシナモンスティックでかき混ぜて飲む滋養に良い甘いお茶。といったように、どれも体に良さそうなものばかりだ。


疲労回復に良いという、ナツメハチミツ茶。

 一品料理では、「野菜のフリット」(1200円)は野菜と韓国海苔をコラボさせたフリット。「旬菜サラダビビンパ 温玉のせ」(1600円)は、野菜、雑穀米、温玉を組み合わせたヘルシーなビビンパだ。スイーツでは、おからと米粉でつくった揚げないオリジナルの「ドーナツ」(600円)などが目を引く。冬の寒い時期はトマト鍋、チゲ鍋など鍋料理も順次投入していく。


野菜フリット アニソナスタイル 1,200円。


旬野菜のビューティーサムゲタン 1,800円。


トマトのシャンパンゼリー コンポート添え 800円。


ブラジル原産のアサイーベリーが入った、アサコラバナナジュース(850円)。北極星の光る星空をイメージしたデコレーションが施されてある。

 顧客層は「冬のソナタ」ファンの中高年女性が多いが、近所のサラリーマン、OLも来店している。

 現在の韓流ドラマや映画をイメージした飲食店となると、このような感じになるのだろうか。ソフィスティケートされた、新しいコリアン・フュージョン料理の試みである。

 以上見てきたように、ニューコリアン・キュイジーヌが、従来の日本の韓国料理店にあった、焼肉屋とオモニの家庭料理の枠を打ち破ろうという試みは多彩である。しかし、共通するのは、食のトレンドを意識し、話題を提供する先端の店であろうとする姿勢だ。

 ニューコリアンの世界では、たとえば韓国宮廷料理が和食の考え方を取り入れた創作料理となり、韓国料理とメキシコ料理が融合してアメリカ的なファーストフードになる。あるいは、伝統的な韓国料理が世界の野菜とともに食され、中国の水餃子、日本の焼餃子に対して韓国の蒸し餃子が第3の餃子としてB級グルメに参戦してくる。

 創作料理も伝統的な料理も新たな意味合いを持って、提出されてくるのだ。その意味で韓国風フュージョン料理と韓国伝統茶を売りにした、アニソナカフェ「初めて」はニューコリアン・キュイジーヌの1つの到達点と言って良いのかもしれない。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2009年11月16日執筆