・お客様とスタッフら12名が一酸化炭素中毒
「モスバーガー」では7月、立続けに2件の一酸化炭素中毒が起きた。7/21に福岡市・笹丘店で開店直後の11時に2台目のフライヤーに点火したところ、約1時間後に女性スタッフが倒れ、その後、お客様7名と店長と女性スタッフが相次いで倒れ救急車で運ばれた。お客様の中には5歳の子供も。同日中にお客様全7名は退院し、スタッフ2名も翌日に退院。
原因は、フライヤー排気口内に落下していたアップルパイが詰まり、異常燃焼を誘発し2万ppmという高濃度の一酸化炭素が発生したため。一酸化炭素は、1万2千8百ppmで1〜3分間で死亡すると言われている。意識障害の前に運動障害が先に起こり、気が付いた時には退避できない状況に陥っている。詰まっていたアップルパイは前日の閉店直前に落下させたものと判明。物が落ちないようネットが張ってあるが、はずして洗浄している際に落下した。
焼けただれたフライヤーの排気口。
そして、5日後の7/25、福岡県飯塚市・飯塚幸袋店にて一酸化炭素中毒が発生。換気設備が7/18から故障し、7/28に交換の予定だった。代替に窓を開放し、厨房内に扇風機4台を置いた。12時頃、店長を含むスタッフ3名が体調不良となり、店を臨時閉店とした。店に残っていたお客様には体調不良がないことを確認してお帰りいただく。その後、シェイクマシン修理に訪れていた男性1名とスタッフ2名が救急車で運ばれた。同日には退院。
・キャンペーン開始の勝負日に換気扇が故障
原因は、厨房内の換気設備が故障したまま営業を続けていたことと、フライヤーの経年劣化という2つの要素が重なった。
7/18に修理を要請し、7/21に修理業者が訪問するが部品が必要で完全修理にまで至らず。7/23にFC社長(同店はFC)が修理業者と協議し、修理ではなく新しい排風機への交換を決定。その工事日を7/28と決定。その矢先の7/25に事故が発生した。
排風機が壊れた7/18は、キャンペーンのスタート日。前々から準備してきてこれから勝負という日。敢えて営業を行い事故が発生した。しかし、この段階で、1週間店を閉めるという意思決定ができただろうか。オーナー、店長やSVを責める問題ではない、7/21の笹丘店の事故がありながらも無作為だった経営判断上のミスと本部は言う。
・過去調査し、4件の事故を確認
これを機に過去の事故を急遽洗い直した。2004年5月に東京都・恵比寿店、05年12月に熊本県・天草大矢野店、07年11月に北海道・札幌セブン店、09年5月に北海道・恵庭店の4件で一酸化炭素による中毒事故が起きていた。お客様は問題なく、スタッフが救急車で運ばれていた。
これを受け、店舗スタッフによる全国一斉自主点検を7/26から始め、7/30には終了。一酸化炭素警報センサーを8月末までに全店設置。フライヤーの排気口落下防止柵を8月末までに設置。ガス業者による全国一斉点検を11月末までに実施。マニュアルを整備し、事故防止には店舗スタッフ教育が非常に重要で効果的と判断し、全国一万人勉強会を行った。
・記者会見は行わず
7/21の事故発生では、まずはウェブ報道が始まり、その後でTV報道へ広がっていった。対策本部を設置。翌7/22には「定期点検を怠る」という多くの報道がなされた。日本フードサービス協会に報告。過去の一酸化炭素中毒事故の調査を開始。被害者は全員退院。7/24には全国紙5紙と西日本新聞で謝罪の社告。
7/25には2度目の事故発生。土曜のため本部は手薄で、新聞社からの取材で第一報を知った。被害者は同日に退院。7/26には自主点検を開始。7/27には農水省、日本フードサービス協会に2回目の事故を報告。7/28には過去4件の一酸化炭素事故を確認。情報開示の方法について社内検討したが、記者会見は行わないことを決定。HP上で過去の事故と、緊急対策計画を公表。マスコミの報道が止まった。
事故発生時には、情報開示が決め手。全ての情報が出尽くした時にメディアの騒ぎは収まる。記者発表では、話した言葉を本意と違えて捉えられたり、記者の誘導的な質問で主旨と異なる答えをしてしまう場合もある。今回の2社ともに記者会見を行わず、こちらの伝えたい情報が食い違いなく伝えられるHPと、記者との真摯な個別説明でブランドへの傷を最小限に抑えられたようだ。事故はいくら気を付けていても完全に無くなることはない。発生を想定した危機管理体制が重要だ。