・三井不動産は地域性に合う店を臨機応変にテナント誘致
「三井アウトレットパーク」は全国で8ヶ所あり、その内訳は関東4(横浜市金沢区・横浜ベイサイド、東京都八王子市・多摩南大沢、千葉市美浜区・幕張、埼玉県入間市・入間)、中部1(三重県桑名市・ジャズドリーム長島)、関西2(大阪市鶴見区・大阪鶴見、神戸市垂水区・マリンピア神戸)、東北1(仙台市宮城野区仙台港)。
2010年春には北海道北広島市、同年秋には滋賀県竜王町に立て続けにオープンが予定されており、近々10モール体制になる。
三井不動産が初めてアウトレットモールに進出したのが、1995年の大阪鶴見。98年の横浜ベイサイドはアメリカ東海岸のリゾート地・ナンタケット島をイメージした建物も評判になり、アウトレットブームの火付け役とも言われた。
三井アウトレットパーク横浜ベイサイド。風車が回る。
「この頃がアウトレットの第1回目の波でした。近距離商圏でお客様に日常的に利用していただくために、食事も充実させました」(三井不動産商業施設運営事業部主事・八尋弘憲氏)。
当初は立地に合わせてつくっていったために、個々のモールに名称が付いていた。「三井アウトレットパーク」と統一的に表示したのは2008年4月からと、第2次アウトレットブームとなっているごく最近のことだ。
直近3年の三井不動産のアウトレット売上高は、2006年980億円、07年1092億円、08年1597億円と飛躍的に伸びている。08年は入間と仙台港の新設効果も出ているが、第2次アウトレットブームを如実に示すデータだ。
「アウトレットはレジャーの1つととらえていまして、安いから行くのではなく、食やイベント、場所によっては観覧車を回して、楽しんでいただける仕掛けを考えています。アウトレットを拡張して大きくしていくのが、今の流れです」(八尋氏)。
たとえば、「三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島」は、名古屋から日帰りで行ける最も近いリゾートとして著名な長島温泉「ナガシマスパーランド」の一角に位置する。木曽川と揖斐川の最下流にあり、伊勢湾岸自動車道を使わないと行きにくい場所だ。湾岸長島インターチェンジは目の前にある。
三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島。リゾート気分が演出されている。
飲食は名古屋の名物、ひつまぶし「稲生」、みそかつ「矢場とん」、きしめん「宮きしめん」が揃い、「カフェタナカ ジャズ」では週末はジャズをメインにした音楽の生演奏もあるといったように、名古屋観光のニーズをも満たしつつ、リゾート気分を高める店が並んでいる。
三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島。矢場とんのみそかつ、わらじとんかつ定食(1575円)。
「三井アウトレットパーク マリンピア神戸」では、洋食を充実させて「トゥーストース・パラダイスキッチン」、「神戸洋食屋どれみ軒」のような地元の人気店、あるいは瀬戸内海近海から直送されたネタを使った「とれとれ回転ずし 万太郎」といった店が出店している。なおこの施設は99年の開業で、06年と09年の既に2回増床している。
三井アウトレットパーク マリンピア神戸の外観。
三井アウトレットパーク マリンピア神戸の船の広場。バックに見えるのは明石海峡大橋。
さらに「三井アウトレットパーク仙台港」では、東北の駅弁を丼で食べられる「駅弁工房」、盛岡冷麺「ぴょんぴょん舎 オンマーキッチン」、山形そば・稲庭うどん「神室庵」、岩手・平田牧場の三元豚を使った「豚丼・日本酒 まる家」、仙台味噌煮込みハンバーグ「○亀商店」など、東北のB級グルメが満喫できるラインナップになっている。
三井アウトレットパーク仙台港は観覧車も楽しめる。
三井アウトレットパーク仙台港のフードコート。東北の味覚を中心に9店を集めている。
三井アウトレットパーク仙台港、駅弁工房の網焼き牛タン丼(890円)。仙台駅の人気駅弁を丼にした。
周囲に飲食店が多い駅前立地では、あえてレストランをつくらないケースもある。JR京葉線海浜幕張駅前の「三井アウトレットパーク幕張」では、レストランはスティルフーズのイタリアン「ピスタッキオ」1つしかなく、カフェ中心の展開になっている。
三井アウトレットパーク幕張の内観。レストランは1つだけであとはカフェがある程度。
このように東京のベッドタウンである入間では東京ぽく、名古屋近郊のリゾート長島では名古屋ぽく、神戸の郊外垂水では神戸ぽく、仙台港では東北の味満載といったように、地産地消を考えた“B級よりちょっと上グルメ”が全般に展開されている。