フードリンクレポート


アウトレットのダイニング、“B級よりちょっと上グルメ”の殿堂に進化中。(4−3)

2009.12.21

チェルシーが重視するのは回転処理能力とお値打ち感

「チェルシー・プレミアム・アウトレット」を全国に展開するチェルシージャパンは、三菱地所とアメリカのアウトレット専業ディベロッパーであるチェルシープロパティグループの合弁会社だ。出資比率は三菱地所60%、チェルシープロパティグループ40%。

 現在日本には8箇所あり、2000年7月開業の静岡県御殿場市・御殿場を皮切りに、大阪府泉佐野市・りんくう、栃木県佐野市・佐野、佐賀県鳥栖市・鳥栖、岐阜県土岐市・土岐、兵庫県神戸市北区・神戸三田、宮城県仙台市泉区・仙台泉を次々に開業。現状最も新しい茨城県阿見町・あみは2009年7月のオープンとなっている。

 いずれも大都市郊外に位置しており、「非日常的な空間で、街並みを散策するように1日中ショッピングを楽しんでいただく」という統一的なコンセプトで運営されている。

 好調な集客を反映するように増設を繰り返している施設が目立ち、佐野の3回をはじめ、御殿場、りんくうが2回、鳥栖、土岐、神戸三田が1回と、開業して2〜3年でいずれも規模を拡大している。


御殿場プレミアム・アウトレット。


佐野プレミアム・アウトレット。


鳥栖プレミアム・アウトレット。


土岐プレミアム・アウトレット。

 各プレミアム・アウトレットでは、国内外の人気ブランドメーカー直営店で構成され、毎日オフプライスで販売されている。店舗数も80〜180店と多く、顧客は品質・サービスにおいて安心感ある、ブランド直営店の商品を比較しながら選べる楽しみがある。

 また、施設の雰囲気は、都会の喧騒を離れてゆっくりと快適な買物ができるように、周囲の環境になじませたヴィレッジスタイルの形態を取っている。

 同社広報によれば「非日常空間を演出することにより、何時間滞在しても楽しめる場を提供している」とのことだ。レストランやカフェの目的もまた、食事や休憩が取れることで滞在時間を延ばす効果が見込まれており、現在まではその戦略が当たって、ヒットを連発している。

 レストランは「ランチタイム需要がほとんどを占めるため、非日常空間を演出する高級感があって、回転オペレーション力の高いテナント構成としている。フードコートが必ずあるのもこの理由からである」(同社広報)とのことだ。

2007年に出店した神戸市北区の裏六甲にある「神戸三田プレミアム・アウトレット」は、ロサンゼルス郊外の高級住宅地パサディナをモデルに約180のブランドを集積。


神戸三田プレミアム・アウトレット。

 立地は「イオンモール神戸北」に隣接し、中国自動車道と六甲北有料道路・神戸三田インターチェンジ、六甲北有料道路・大沢インターチェンジ、山陽自動車道と六甲北有料道路・神戸北インターチェンジにほど近い。神戸市立フルーツ・フラワーパーク、北神戸ゴルフ場は徒歩圏、鹿の子温泉も近く、セットで楽しむこともできる。バスも、JR福知山線・神戸電鉄の三田駅、神戸電鉄岡場駅、休日のみ神戸三宮からアクセスしている。休日とバーゲン期間は、大阪梅田から往復利用に限るショッピングバスも出ている。

 インターチェンジの近く、可能ならショッピングセンターなど他の集客力の強い施設との相乗効果を狙うというのは、プレミアム・アウトレットに共通して見られる傾向だ。


神戸三田、あみでは地元の有名店を誘致したのが好評

 さてその「神戸三田プレミアム・アウトレット」では8店が集積したフードコートに、食文化の発達した神戸地元の人気店も出店。ステーキやハンバーグの「三田屋本店〜やすらぎの郷〜」、ナポリピザやパスタの「ターナフォルノ」、インドカレー「アールティ」、ラーメン「神戸南京町 皇蘭」などといった店である。


神戸三田プレミアム・アウトレット フードコートの各店ブースは統一感がある。


神戸三田プレミアム・アウトレット 三田屋本店のステーキ(イメージ)。


神戸三田プレミアム・アウトレット ターナフォルノのパスタ(イメージ)。


神戸三田プレミアム・アウトレット アールティのインド料理(イメージ)。

 2009年12月3日の増床にはレストランも5店が出店。地元の人気店、三宮のオーガニックイタリアン「ターナ・ヴィンティセイ」の姉妹店「ナトゥーラ ターナ」、元町のチーズケーキの名店がプロデュースする「リアルダイニングカフェ観音屋」、明石の海鮮日本料理店「くら蔵」による寿司「明石くら蔵 沖の瀬水産」がラインアップに入った。

 また、「あみプレミアム・アウトレット」は茨城県南部の霞ヶ浦や牛久大仏、牛久シャトー、JRA美浦トレーニング・センターに近い立地で、圏央道阿見東インターチェンジよりすぐの場所だ。アメリカ西海岸をイメージした建物に、約100店のブランドが集積している。バスはJR常磐線荒川沖駅、つくばエキスプレス・関東鉄道の守谷駅からある。


あみプレミアム・アウトレット

 レストランとして、地元土浦の人気寿司店「かね喜」の回転寿司業態、常陸牛やローズポークなど茨城県産食材をふんだんに使ったイタリアン「エノテカドォーロ プレミオ」が出店。

 フードコート8店には、「キハチソフトクリーム」、「ピッツェリア1830」、タイ料理「ゲウチャイ」、讃岐うどん「宮武讃岐製麺所」など、東京発の質の高いナショナルブランドを中心に導入している。

 トピックスとしてはパリのフードブティック「フォション」がアウトレットに初出店し、デパチカで人気の高級食品が3〜5割引で販売されているので、連日賑わっているようだ。食品アウトレットはこれから注目の新分野である。


あみプレミアム・アウトレット、フォションのファサード。食品アウトレットは注目の分野。

 このように「チェルシー・プレミアム・アウトレット」でも、“B級よりもちょっと上グルメ”は貫かれており、「三井アウトレットパーク」と両方に入っている店も多々ある。統一的なイメージづくりではチェルシーに分がある反面、画一的に見えやすいデメリットもあると思われる。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2009年12月8日執筆