フードリンクレポート


アウトレットのダイニング、“B級よりちょっと上グルメ”の殿堂に進化中。(4−4)

2009.12.22

大洗ではファミリー向け企画とアトラクションが充実

 茨城県大洗町の2006年3月にオープンした「大洗リゾートアウトレット」は、雄大な太平洋を望む“自然調和型”のショッピングコート。開放的なモールには、ブランドファッションをはじめ、スポーツ・アウトドア、シューズ、雑貨、レストラン・カフェなど約80のショップが立ち並ぶ。


大洗リゾートアウトレット外観。


大洗リゾートアウトレット 大洗港に隣接する壮観な建物。


リゾート感ある大洗リゾートアウトレット。

 海賊船での太平洋クルーズやサーフィン、カヌー体験教室など、海のアクティビティも充実。子どもの遊び場、毎月開催のキッズ・イベントなどもあり、子供連れにも人気がある施設だ。また、2009年7月には新エリアの「マーケットガーデン」がオープン。アーチェリー、エアースライダーなどのアトラクションもスタートした。

 このように「遊び」の要素が充実しているのが、「大洗リゾートアウトレット」の特徴だ。「大洗マリンタワー」、「大洗マリーナ」に隣接し、夏場は海水浴場「大洗サンビーチ」も徒歩圏にある。町内には「大洗水族館 アクアワールド」もあって、周囲も含めてリゾートの雰囲気が漂っている。大洗の町自体がレジャーランドとなっているので、集客も東京・千葉など首都圏・北関東から福島・宮城といった南東北に及んでいる。

「大洗リゾートアウトレット」のレストランは、大洗港を望む2階に並んで位置しており景色も良い。一部カフェやスイーツの店が1階にもある。ショッピングを楽しむ間に休める空間の提供だけでなく、地元飲食を中心にカフェ、洋食、イタリアン、和食、デザートなど、バラエティに富んだメニューが揃っている。大洗ならでは海鮮物も味わえるような位置づけとなっている。

 また、ファミリー層も多いため、各店にはキッズ用のメニューや椅子などのサービスも満載。さらに、クレープやソフトクリーム、地元特産フルーツを使ったパフェなどスイーツを扱う店も充実している。


地域性を生かした個性的な店ぞろいの大洗のレストラン

 特徴的な店を挙げると、「洋食屋 ビアジェ」は海鮮物を中心に、イカを丸ごと使ったパスタ、ボリュームあるハンバーグやなど豊富なメニューが自慢の洋食レストラン。さらに、ドリンクバーやデザートも付いたセットやプレートメニューも豊富だ。


洋食屋ビアジェ イカを丸ごと使ったパスタ。


洋食屋ビアジェのカニを使った豪快なメニュー。

「海のおもてなし」は、新鮮な海の幸を使った定食メニューが人気のレストラン。一番人気は丼からはみ出すほどの海鮮がのった「海のおもてなし丼」。さらに、うどんと海鮮のフライの乗った季節限定のランチセットなど、地元ならではのメニューが味わえる。ファミリーや40代〜60代の落ち着いて食事を味わいたいという人が主な客層だ。


海のおもてなし 大洗の日野治旅館が経営。


海のおもてなし 海のおもてなし丼(1380円)。

「浜っ子食堂 お魚天国」は、大洗魚市場直送の新鮮な旬の素材をセルフサービスで選べる店。海鮮丼をはじめ、浜焼き(はまぐり・さざえ・海老など)や揚げ物、ドリンク、デザートなど好みに合わせてチョイスできる。リーズナブルな価格で、若い世代やファミリー層にも人気だ。


浜っ子食堂 お魚天国。

「らーめん屋 萬蔵」は種類豊富な餃子やチャーハンも付いたセットメニューは¥1,000以下とお得な価格設定。「岩のりラーメン」は、大洗ならではの磯の香り漂うラーメンだ。スープにマグロ節を使っているのも目を引く。


らーめん萬蔵 ラーメンと餃子・チャーハンのセット。

「うどん茶屋 つるかめ」は、ダシの効いた無添加のうどんと平手打ち麺が自慢の新しいスタイルのうどん専門店。カレーベースの本格的なうどんや、明太子クリームのうどんなど新感覚の味覚が楽しめる。¥1,000以下のランチメニューも充実。

「ラ・カパンナ アルマーレ」は、パスタや本格石釜ピザなどを味わえるカジュアルタイプのイタリアンレストランです。一番人気は、濃厚クリームのカルボナーラ。さらにデザートや大洗産の野菜を使った限定メニューもある。


ラ・カパンナ アルマーレの石釜ピザ。

「ベーカリーカフェ ヴァリエーロ」は、焼きたてパンやコーヒー、さらには地産のフルーツを使用した20種類のソフトクリームなどが人気の店。生クリームがたっぷり入ったパイシュー、イチゴやメロンを使ったパフェもある。


ベーカリーカフェ ヴェリエーロ。


ベーカリーカフェ ヴェリエーロの焼き立てスイーツ。

「パイレーツカフェ」は広いテラス席でティータイムを過ごせるオープンカフェ。豊富な種類のドリンク、ケーキだけでなく焼き立てパニーニなど食事メニューもある。子どもの遊び場に併設しているので、キッズメニューも人気だ。


パイレーツカフェ。


パイレーツカフェのメニュー。キッズメニューもある。

「きらきらクレープ」は地元産のフルーツをたっぷり使用したクレープやかき氷を扱う。キャラメルポップコーンも子供たちに人気。

 このように「大洗リゾートアウトレット」は食だけを見ても、行く価値がありそうな個性的なレストランが揃っており、買物プラスアルファの要素が非常に充実している。

 なお、「大洗リゾートアウトレット」の経営は八ヶ岳モールマネジメント。2001年にオープンした山梨県北杜市の「八ヶ岳リゾートアウトレット」のレストランでも、八ヶ岳の地元の野菜、乳製品、卵、水などを使ったメニューを出す店が多くあり、異彩を放っている。

「大洗リゾートアウトレット」の場合はフードコートが存在せず、カジュアルダイニングに値する店で、東京より2〜3割安く食事ができるといった感じだ。そのプライス的な意味で“B級よりもちょっと上グルメ”にやはり相当する店舗構成と言ってよいのではなだろうか。


今後のアウトレットモールでは飲食の比重が高くなる

 以上、「三井アウトレットパーク」、「チェルシー・プレミアム・アウトレット」、「大洗リゾートアウトレット」の取り組みを見たが、三井が比較的大都市近郊を狙うのに対して、チェルシーは大都市圏を出たすぐ先あたりを狙い、大洗は完全なリゾートといった立地の違いがあった。

 それによって、展開されている店の性格は微妙に異なってくるが、単なるB級グルメではなくて、それにプラスアルファの価値を加えた、あるいは「B-1グランプリ」に出てくるものよりは少し洗練された、“B級よりちょっと上グルメ”が全般に展開されていることは確認できた。

 かつ、既にかなり名の通っているレストランをフードコート業態に変換して出店したり、地元の名店を集めたり、地元の素材を使った地産地消を考慮したりと、チェーン店ばかりが幅を利かすGMSを核店舗としたショッピングセンターのフードコート、レストラン街よりも、全般的に個性的で魅力があるように思えた。

 現在、全国に30、関東で10ほどあるとされるアウトレットモールであるが、「もうだんだんと出店できる場所が限られてきた。正規販売が売れなくて、アウトレットばかりが伸びるのも無理がある」(三井不動産・八尋氏)と、そろそろ限界ではないかとの不安も当事者から聞かれた。

 消費者がアウトレットモールに行く楽しみは、昔はブランド品が安いだけだったが、最近は買物に加えておいしい食事と変わってきた。今後は差別化のために、買物以外のアメニティ、とりわけ飲食のウェイトはさらに高まってくるに相違ない。飲食業のチャンスだ。

 来場者1人がアウトレットの飲食で使える金額は、おそらく全部合わせて上限2000円。できれば1500円以内で収めたいところ。かといって、わざわざはるばる高速道路に乗ってきて、ありきたりなB級以下のものも食べたくはないのだ。だから、“B級よりちょっと上”、B級以上A級未満の100円玉2、3個分のぜいたくで、非日常感を味わいたいのである。

 高速道路の休日ETC車上限1000円の効果で、アウトレットモールの集客はさらに上がっている。どこまで出店が伸びるかは不透明だが、当面市場拡大は続くだろう。しかし、臨界点が意外に早く来るかもしれないリスクがあることは、頭に置いておきたい。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2009年12月8日執筆