フードリンクレポート


セルフ式うどん、300円以下の均一料金居酒屋に期待。
〜2010年、飲食業界はサブプライム不況をどう乗り切ればよいのか!(7−2)〜

2010.1.5
外食に詳しいアナリスト、いちよし経済研究所・鮫島誠一郎主任研究員に状況分析していただくとともに、急成長中のエムグラントフードサービス・井戸実社長にも知恵を出していただき、百年に一度の大不況を乗り切る術を探る。7回シリーズの第2回。


セルフうどんトップの丸亀製麺。ロードサイドに強く、優良空き物件を次々とさらっていく。

セルフ式うどん、300円以下の均一料金居酒屋に期待

 2010年期待の業態はセルフ式うどん・そばである。特に今は、うどんに当たりが出ている。一時期2000年代前半の讃岐うどんブームは沈静化したが、今度はデフレ対応業態として復活してきた。

 ここまで来れば、讃岐方式のセルフ式うどんは、ファッション的人気から真に大衆のものになったと見ていいだろう。

「うどん・そばのマーケットは1兆円ほどありますが、大手チェーンのシェアはまだ10%くらいしかありません。セルフ式の価格は、素うどん200〜280円ほどで、個人店の半額から3分の1くらいは安いですから、しばらくは各社が個人店のシェアを奪っていく形で、順調に拡大していくと考えています。4、5年後、大手のシェアが20〜30%に近づくまでは、少なくとも上位5社くらいまでは、皆ハッピーな時代が続くでしょう」(鮫島氏)。

 現在、業界トップは300店超あるトリドールの「丸亀製麺」、次いで吉野家グループ・はなまるの「はなまるうどん」で260店超だ。


セルフうどん2位のはなまるうどん。吉野家傘下だ。

 今のところこの2社の実績が抜けていて、上位グループに残るあと2〜4社の枠をめぐって、熾烈な争いが始まるだろう。うどん専門がいいのか、うどんとそば両方が出せるほうがいいのか、そば専門でもいけるのか、考えどころではある。

 これから本格的に打って出ようというチェーンでは、元々手打ちのうどん・そばで業績を伸ばしてきた家族亭の新業態「とくとく」はともかく、09年秋に三光マーケティングフーズが突如「楽釜製麺所」で参入したのには驚いた。「楽釜製麺所」は矢継ぎ早に新宿で3店出店し、江戸川区瑞江の1店を加えて09年末の時点で4店になっている。


歌舞伎町セントラルロード、マクドナルド跡に出店した楽釜製麺所。釜揚げうどん280円。

「東方見聞録」「月の雫」で個室居酒屋ブームを起こした三光マーケティングフーズが、今や「電撃ホルモン」「楽釜製麺所」で低価格路線一直線なのだから、時代は変わったと思う。

 鮫島氏の分析では外食は、ジャンル別のマーケットはそれぞれ1兆円くらい。寿司の場合はまだ回転寿司大手のシェアが20%くらいなので、大手が伸びる余地があるという。

 ところが同じ1兆円市場でも、居酒屋は大手のシェアが60%ほどもあり、既に消耗戦になっている。特に東京近郊は大手の比率が高く、全般にオーバーストアーである。よほどの専門性が高い店以外は、値下げをしていくことになると、鮫島氏は見ている。

 格好良さげな空間にこだわったダイニング、カジュアルダイニングでも、郷土料理、各国料理含めて、多くは2010年中には値下げを余儀なくされるのではないだろうか。

 三光マーケティングフーズは絶対的なブランドである「東方見聞録」「月の雫」ですら、全品270円や290円の居酒屋に変えている。これは極端にしても、ダイニング、カジュアルダイニングの値崩れは、避けられない情勢だ。

 均一低価格にするか、テイストは同じでバイキングを導入するか、食材ルートなど見直してセカンドラインをつくるか、業態変更のやり方は幾つかあるだろう。


三光マーケティングフーズの270円均一居酒屋・金の蔵。系列の楽釜製麺所の隣になんと新春2日オープン。


東方見聞録が270円均一になるとは。新宿にて。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2009年12月31日執筆