・マック参入の喫茶、単価千円以上のファミレスは厳しい
喫茶・カフェは、1兆円市場の中で、大手セルフ式チェーンのシェアが30〜40%となって、飽和感が漂ってきた。
ところがそこに「マクドナルド」が「プレミアムローストコーヒー」(Sサイズ120円)で参入して、にわかに情勢が変わった。
日本における「マクドナルド」の店舗数は4000店近くもあり、「ドトールコーヒー」、「スターバックス」、「タリーズ」、「サンマルクカフェ」の全店を合わせたよりもはるかに多いのである。これらコーヒー専門チェーンだけでなく、個人店の喫茶、カフェも影響を受けるのは必至で、食事の充実、文化的発信力強化、価格の見直しなど、あらゆる営業努力が必要になってくるだろう。
1つのヒントとして、ゼットンが取り組んでいるハワイアンカフェ。この業態は専門性が高く、若者ばかりでなく高齢者にも受けが良い。3世代で行ける店だ。鮫島氏はハワイアンカフェに関しては、堅調に伸びるのではないかと予想している。日本の人口比を考えれば、高齢者が入りやすいかどうかは非常に大切なポイントだ。
ゼットンが本格的に多店舗展開するハワイアンカフェ&ダイニングは、高齢者にも受けがいいのが強み。
ファミレスは1兆円をピークにやや縮小している市場だ。その代わりに回転寿司が伸びていて、寿司の市場は1兆2000億円ほどある。
「ファミレスは利益が出ていなくて、すかいらーくが赤字、『デニーズ』などのセブン&アイ・フードシステムズも赤字、ロイヤルホールディングスがかろうじて黒字という状況で、御三家を足すと赤字でしょう。家賃が高すぎるので、個別に安くしてもらう交渉をしないときついです。一方でサイゼリヤは過去最高の利益を上げていますから、客単価700〜800円のカジュアルな業態ならうまくいくのでしょう」(鮫島氏)。
鮫島氏によれば10年ほど前のファミレスは、月商で1000万円を平均して超えていて、家賃が100万円でも払えていた。ところが今は800万円まで落ちていて、払うのが厳しくなってきたというのだ。家賃が、ファミレスが好調だった頃の値段で設定されている。
それで閉店が増えるとともに、すかいらーくは低価格の「ガスト」へとシフトしている。
すかいらーく1号店の国立店も、今はガストに転換。
また、ファミレスには、チェーンの限界の問題もある。
「単価500円以下の安い店を除けば、テーブルレストランは単一業態で300店を超えると、しんどくなってきます。350店が上限と考えたほうがいい。チムニーの『はなの舞』も、ワタミの『和民』も、300店を超えたあたりからおかしくなってきました」。
なので1000店を超える「ガスト」はなかなか厳しいところである。「サイゼリヤ」は800店以上あるが、安いうえにイタリアンという専門性がある。つまり専門店であって、漠然と何でもあるわけではないことに注意したい。
サイゼリアは中国・上海に進出して人気という。
好調だったチェーンは、「サイゼリヤ」のほか、「餃子の王将」、リーズナブルな国産牛焼肉「あみやき亭」、1皿100円で4大添加物を使わない回転寿司「無添くら寿司」と、専門店で安くてレベルの高い店ばかりで、もうこのレベルでないと成功は難しい。
特に「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは、既存店ベースで28ヶ月連続で売上高対前年同月比100%超を更新中。従来記録であった「スターバックスの30ヶ月」を抜くか注目される。もう達成は目前である。
王将芸人の支持も厚く、絶好調の餃子の王将チェーン。
09年は“王将ブーム”にわいたが、これは元々業態のレベルが高かった上に、雨上がり決死隊、チュートリアル、ブラックマヨネーズ、バナナマンなど、“王将芸人”が、トーク番組「アメトーーク」などで「餃子の王将」について熱く語った効果が大きい。
テレビに映る回数も多く、また店舗改装を進めて清潔感とオープンキッチンの臨場感ある店が増えた効果もあって、関西以外での知名度が上がったのが大きかった。関西の伸び率が2割だったのに対して、関東の伸び率は4割だったそうだ。