・ロードサイドのハイエナは19店から51店へと急成長
ところで、若い世代は、2010年の展望をどう考えているだろうか。
ロードサイドで「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」を展開し、急成長中のエムグラントフードサービス、井戸実社長に聞いてみた。1978年生まれである。
この店は1000円前後からハンバーグ、ステーキをサラダバー、ライス、カレー、スープ、フルーツ食べ放題付きで食べられる。好調業態の特徴である、安くて専門性が高い店の条件を備えている。
「2009年は成長できた1年でした。3期目の2009年3月期決算は19億6000万円でしたが、4期目の2010年3月期42億円は堅い数字として見えています。200%以上の成長です。2009年1月には19店であった店舗が51店にまで増えました」。
サブプライム不況で消費が冷え込む中、多くの外食が苦境に立たされているのに対して、異例の好調ぶりである。
けん国分寺店外観。
けん国分寺店「けんステーキ」(150g ランチ1000円、ディナー1140円)。
けん国分寺店サラダバー ご飯、カレー、スープとともに食べ放題。
好調の要因は、ロードサイドのハイエナともエンジェルとも言われる、ロードサイドに居抜きで出店するという同社の戦略に合致する、物件が多く出たということがある。更地からつくったのは、東京都町田市の町田木曽町店だけであった。
また、本格的に始めたFC店のオープンが相次ぎ、19店にまで増えたのも大きい。
経常利益も2009年11月単月で1250万円に達した。これは過去1〜3期1年を通しての経常利益の合計よりも多いのだという。店舗数が増えて食材調達コストが下がるなど、営業努力の結果である。
今後「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」は、2012年までに200店、200億円を目指し、出店は打ち止めにして、また別の業態を出店していくと井戸氏は明言した。
前出のいちよし経済研究所・鮫島研究員によれば、「チェーン店の限界は300店」ということだから、欲張らずそこそこの認知度がある200店くらいで打ち止めにするのは、劣化しない持続可能なレストランチェーン運営のためには、賢明な選択であるだろう。
居抜きで出店するメリットの1つは、出店コストが非常に安く済むということだ。そのため内装費、工事費を含めても全て1年以内に初期投資を回収できている。
そして、コスト約5分の1と、店舗にお金をかけないで済む分、食材にお金をかけられる。「けん」の原価率は38%ほどにもなり、競合チェーンより8〜10%も高い。たとえ同じ値段でも良いものを提供しているから、良心的チェーンとして顧客に支持されるのである。
ただし、同様なビジネスモデルで、店舗を出すところも出てきている。将来的に競合が激しくなった時は、今は別途料金を取っているドリンクバーや、アイスクリームのバイキングも、メニュー料金に組み込んでいくことも考えるそうだ。特にアイスは、ベルギーから輸入している自信の商品で、「一度食べてもらえれば違いがわかるはず」とのこと。
「ハードルは高いが1000億円企業を目指したい」と、ビジョンを持っている。