フードリンクレポート


成長の限界を前提にしたビジネスモデルへと転換の時。
〜2010年、飲食業界はサブプライム不況をどう乗り切ればよいのか!(7−5)〜

2010.1.8
外食に詳しいアナリスト、いちよし経済研究所・鮫島誠一郎主任研究員に状況分析していただくとともに、急成長中のエムグラントフードサービス・井戸実社長にも知恵を出していただき、百年に一度の大不況を乗り切る術を探る。7回シリーズの第5回。


ガールズ居酒屋「はなこ」 店員教育がきっちりしていて追随を許さない。

成長の限界を前提にしたビジネスモデルへと転換の時

 ファミレス関係者と話をしていると、「昔は1店舗で2億、3億売り上げるのが当たり前だった。ところが今は1億売り上げるのも厳しい」と嘆く声をよく聞く。

 それが井戸氏は「1店で2000万〜3000万円利益を出してみよう」となる。このモチベーションの違いは大きい。年商では「1億円売り上げられた」とポジティブに考えられる。

「30代前半以下の年齢の経営者は、社会に出てからバブルを全く経験していません。生まれてからずっと景気が良くなくて、今が不況と言われてもこれで普通だと思うのです。人口は減る、高齢者ばかりが増える中で、ずっと膨張し続けるビジネスモデルなど考えられません。セーフティーネットを張った上で、現実的なビジネスをしていきたい」と井戸氏。

 来期の目標は65〜80億で、M&Aにも打って出たいと意欲を見せている。

 ところで井戸氏によれば、若い世代には新しい発想のクレバーな経営者が出てきている。

 たとえばガールズ居酒屋「はなこ」を経営する、セクションエイトの横山淳司社長。店員教育がきっちりしており、形だけ真似したところはついていけないと見ている。また、「カワラカフェ&ダイニング」などを経営するエスエルディーの青野玄社長は、草食系の感性の代表者で、草食系の人口が増えている今、波に乗っていると考える。


エスエルディー かわらや新宿店の看板。草食系感性が光る。

 確かに30代後半以上なら、日本の特に東京、大阪のような大都会の繁華街が、毎日お祭騒ぎのようだった時代を知っている。少しでも成功体験があれば、限りなく成長する夢を見がちである。また、外食の代表がハンバーガーや牛丼であるように、我々は肉食をずっと志向してきた。

 2010年は成長の限界や、肉食から草食への転換を、これまでよりもいっそう強く意識しなければ、乗り切れない1年と覚悟が必要かもしれない。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2009年12月31日執筆