フードリンクレポート


新宿西口エリアの270円均一化。
〜低価格均一居酒屋の行く先は!「株式会社 全品270円」?!(4−1)〜

2010.1.14
低価格化が進む外食業界。居酒屋業態では全メニュー低価格均一化業態への変更が進んで止まらない。一度この路線に入れば戻ることもできず進むだけのようにも受け取れる。その先はいったいどこへ向かうのか?今の業界の勢いと現状に迫る。4回シリーズの第1回。


00 年初に続けてオープンした270円業態。

新宿西口エリアの270円均一化

 2010年明けて間もない1月5日、新宿歌舞伎町前では「全品270円居酒屋 東方見聞録(新宿歌舞伎町店)」がオープン。3日前の1月2日には「全品270円居酒屋 金の蔵Jr. (歌舞伎町店」」が隣のビルでオープンしたばかり。運営するのは株式会社三光マーケティングフーズで昨年5月頃から続々価格均一業態をオープンさせ、既存店もそれに転じ始めている。

 これにより来客数、売上げ共に増やし成功に至っている。「全品270円居酒屋 東方見聞録(新宿歌舞伎町店)」がオープン初日を迎えたこの日は店頭でのチラシ配布と店前の花が華やかさもあって入店動機喚起され店内は満席の様子。


「全品270円居酒屋 東方見聞録(新宿歌舞伎町店)」満席の店内。

 入店するとまずはお通しが270円(税抜)で「エビせんべい」が提供された。「270円×人数」分が自動的にチャージ。まずはお通しで稼がなければという感じさえする。しばらくみているとお通しが出された瞬間に断っている常連らしい客も見受けられた。


お通し「えびせん(二人用)」合計540円(税抜)のお通しとオーダー用のタッチパネル。

 メニューオーダーは卓上のタッチパネルを使用。数十店舗以上を運営する大企業ではメニュー作成費用とその工数はばかにならない。タッチパネルを使いこなすのが難しい世代のお客もいるだろうがこのシステムはやはり益々広がりと進化をみせるだろう。タッチパネルがあることによってホールスタッフと会話を交わすことはほぼない。お茶や追加のお絞り、灰皿など全てこれでオーダー可。会話が生じるのはオーダーした商品が30分〜1時間経っても全くでてこない時くらい。

 客席では機械化されているようでもキッチンやデシャップでは、てんやわんやのようだった。更にこのタッチパネルはオーダーテイクだけではなくお客様の会話もバックアップする。カップルにはその相性を占ったり、サラリーマンには仕事運を占ったり客層に合わせたセレクトがある。


タッチパネルで提供される占いツール。

 この店から2分ほど歩いた新宿靖国通りにも同じ三光マーケティングフーズの運営する「全品270円 食楽厨房 月の雫」がある。「月の雫」はもともと豆腐料理をメインに内装も個室メインの居酒屋で落ちつた雰囲気が基軸コンセプト。こちらも270円均一に変更し店前にはノボリを並べて訴求。時代の変化にあわせ次々と変えていける柔軟さとフットワークのよさはまた同社のウリかもしれない。


「全品270円食楽厨房 月の雫(新宿靖国通り店)」の店前。


「全品270円食楽厨房 月の雫(新宿靖国通り店)」の石の敷かれた落ち着きある入口。

 新宿界隈は白木屋などを運営する株式会社モンテローザの店舗も多い。西口大ガード近くでは「月の宴」「笑笑」「福福屋」も一気に価格均一をトライアル中だ。「一部商品」や「一部店舗の一部の客席」を除くと条件を付けながらも店頭では大々的にPRしている。
 
 270円に挟まれた他店や個人店も270円にしなければ入店してもらうこと自体が難しくなり、中身やコンセプトよりもそれが唯一の入店訴求になっていく。「通り」全体が「270円通り」とよばれ、運営するのは「株式会社全品270円」などと「均一化」されていくのかもしれない。


西口大ガード近くでのモンテローザの店前PR ポスター


西口大ガード近くでのモンテローザの店前PR スタッフ。


【取材・執筆】 国井 直子(くにい なおこ) 2010年1月12日執筆