フードリンクレポート


均一業態の差別化をどう進めるか。
〜低価格均一居酒屋の行く先は!「株式会社 全品270円」?!(4−4)〜

2010.1.19
低価格化が進む外食業界。居酒屋業態では全メニュー低価格均一化業態への変更が進んで止まらない。一度この路線に入れば戻ることもできず進むだけのようにも受け取れる。その先はいったいどこへ向かうのか?今の業界の勢いと現状に迫る。4回シリーズの第4回目。


「さくら水産」からの3日間で業態変更した「にこにこ屋」。

均一業態の差別化をどう進めるか

 目黒駅東口には昨年11月「さくら水産」が中3日で業態変更し250円(税抜)均一の居酒屋「にこにこ屋」をオープンさせている。同じ東口エリアには「全品270円 金の蔵」が、その2ヶ月前に既にオープンをしている。

 おいしい海産物を提供するのがウリの「さくら水産(株式会社テラケン)」の新業態となればやはり差別化の中で、刺身に期待を寄せてしまう。実際の出卓数は不明だが見渡しても他刺身や寿司はほとんど出ていなく、ピザや揚げ物の注文が多かった。メニュー表ではフードメニューをイラストで表現することで実物とのギャップを埋めているかのようだ。回転寿司での一皿100円台200円台は満足できる時代だから更なるブラッシュアップが必要かもしれない。


メニュー表のイラスト。


握り寿司 250円(税抜)


刺身 250円(税抜)

 料理のオーダーの方法がまたユニーク。「金の蔵」のようなタッチパネル式ではないが、紙に印刷されたメニュー表にチェックをいれスタッフに渡すスタイル。


オーダーの紙。

 しかも、すし屋やおでん屋でチェックを入れるような小さな紙とも違いA4のしっかりした片面印刷の紙に一品だけの追加注文の場合も使い切りで店員に渡す。店舗展開はまだ模索中のようだがスタッフは「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」とせわしなく満席の店内を動いていた。

 低価格均一の居酒屋は、期待の総額内におさまれば、会話のないサービスレベルであっても問題なくひとまず市場に受入れられたと言えるだろう。美味しい料理ときれいな内装、そして優秀なスタッフと三拍子揃っていてもお客様の居ない飲食店ほど冷めたものはない。低価格均一を進めることにより時代の流れに合わせて店は賑わいを取り戻した部分がある。

 定着すればその先には「更なる顧客満足はなにか」「FLコントロールにより利益をどうだすか」が当然次のステップとして問われていく。働くスタッフがそこを意識し始めればまた次の展開が楽しみになってくる。同じ均一価格であっても「100円ショップ」と飲食店は違う。飲食店だけは機械化や均一化をどこまで進めたとしても「人」なしでは成り立たない訳なのだから。


【取材・執筆】 国井 直子(くにい なおこ) 2010年1月12日執筆