フードリンクレポート


地域の人を呼び込んで交流を重視する豚組・中村流活用術。
〜大ブーム!!「ツイッター」のつぶやき活用で集客する方法〜(5−5)

2010.2.15
アメリカ大統領選で現大統領のオバマ候補らが活用したことで、全米で人気が沸騰した「ツイッター」などのミニブログ。上限140字までで、自分の好きなことをつぶやく、このユニークなサービスは、実は飲食店に行った顧客がよく飲み食いしているものを投稿しているという。飲食店の側から見れば、販促ツールに向いている可能性がある。集客ツールとしての使い方を考えていこう。5回シリーズの第5回目。


グレイス社長、中村仁氏はツイッター界では有名人。

地域の人を呼び込んで交流を重視する豚組・中村流活用術

 さて、外食の世界にも「ツイッター」をもう2007年から始めていた、斯界の有名人がいる。グレイス社長の中村仁氏だ。グレイスの店舗では「ツイッター」経由の売り上げが1割以上にもなるという。

「『豚組 しゃぶ庵』は昨年の11月以降、ツイッターで月に200万円以上を売りますから、ぐるなびのクーポンよりもずっと効果があります。思ったよりもお客さんが来てくれますね」と中村社長は「ツイッター」の効用を強調した。

 グレイスは2000年に設立され、スタンディングバーの西麻布と赤坂の「壌」、とんかつ「西麻布 豚組」、焼きトン「豚組 やきや」、豚しゃぶ「豚組 しゃぶ庵」の5店を西麻布、六本木、赤坂エリアで展開している。中村氏は「壌」では立ち飲みブーム、「豚組」では「イベリコ豚」などのブランド豚ブームに火を付けた、仕掛け人でもある。


「豚組 しゃぶ庵」のエントランス。


「豚組 しゃぶ庵」 店内。


豚組 しゃぶ庵はツイッター経由の顧客が1割を超える。

 同社の各店は元々レベルの高い店で、高感度な街にある。「ツイッター」のユーザーは全国に200万人とも300万人とも言われるが、30代、40代以上の男性が多く、しかも高収入・高学歴な経営者、会社役員、個人事業者、マスコミ関係者、IT企業関係者あたりが多い。同様なターゲットを持つ店は、「ツイッター」による販売促進が効く可能性が高い。

 しかし、中村氏の集客術は、普通考えそうな割引クーポンサービスではなく、店の宣伝をしないことが肝要なのだという。どう理解すればいいのだろうか。

「ツイッターがアメリカで話題になり始めた2007年にアカウントを取って、ずっと使わずに放置していました。ちゃんと使うようになったのは、1年半くらい前、iPhoneを買ってからです。しばらくプライベートの遊びで使っているうちに、お店の集客にも使えるとわかった」。

 つまり元々中村氏は趣味で使っていたのであって、商売用途ではなかったのだ。iPhoneで「トゥインクル」という、位置情報と連動していて、近くにいる人のつぶやきが見れて、自分からもつぶやきを送れるアプリを使って、つながりを作っていった。そのつながりの中で、顧客として来る人が増えていったというわけだ。

「ツイッターでつぶやくのは僕が興味を持ったこと。こんな料理の美味しいお店に行きましたとか。またはまかないの話のような自分のお店の裏話ですね。ただし、僕のやっているお店のイメージと矛盾しないように気をつけています。たとえばいつもキャバクラに行った話ばかりしている店主が、突然硬い政治の話をしたら変ですよね。そういうことです。宣伝めいたことは、『美味しいトンカツと豚しゃぶを食べたかったら連絡下さい』とプロフィールに書いているくらいで、連絡が来たら詳細を打ち合わせします」。

 つまり、基本雑談だというのだ。感覚としては街の飲食店が、かつて近所の人たちが集まる溜まり場だった頃のような、顧客に対する密な接し方である。外食産業ぽくはない。

 それがクーポン中心のつぶやきとなると、いかにも売らんかなという感じを持たれ、「ツイッター」のユーザーからは引かれてしまうのではないかと、中村氏は危惧している。またクーポンというものは安いかどうかが判断基準であって、それを連発している限りは、飲食店は値下げ合戦から脱却できず、自分たちの首を絞め合う消耗戦になるだけだと、中村氏は強い危機感を持っている。

 特に「ツイッター」にはロボットを略した「bot」と言って、情報を機械的に投稿する仕組みを使うつぶやきがある。東京・日本橋界隈のランチ情報を延々とつぶやくbotなどが存在しているが、「人間は機械に愛を感じません。ツイッター上の飲食店のつぶやきがbotだらけになれば、せっかくの有益な販売促進ツールが壊されてしまうのではないか」と中村氏。「ツイッター」も使い方を間違えば、さらなるデフレ促進ツールになりかねないのだ。


日本橋のランチを延々とつぶやくbot。人間味を感じない。

 もっとも、グレイスでは中村氏の個人アカウントのほかに、「豚組」3店のアカウントも1年ほど前に取り、並行して運用している。「豚組」オフィシャルのつぶやきでは、豚肉のトリビア、予約情報、今月のサービス情報などをつぶやいて、いわば表玄関になっている。しかし、オーナー個人のつぶやきである勝手口からの予約のほうが多いのが、グレイスの特徴だ。 

「アメリカでデルコンピュータがツイッターを使って、売り上げアップに成功した事例などありますが、飲食店は他の業種とは全く違ったやり方があると思っています。そもそも、東京の六本木にあるお店が、北海道や九州に住んでいる人にいくらつぶやいても意味ないのです。近くに居て、来れる範囲でないと。フォローしている人の質が大事です。それに今日のランチが何かをつぶやいても、自分のお店のお客さんに届くだけで、新規に増えるわけではありません。フォロワーを増やす努力が必要です」。

 中村氏もフォローされているフォロワーの数が1000人を超えるまでは、顧客増にはまるでつながらなかったという。フォロワーを増やすには、つぶやいてどんどんフォローして、フォローされたらし返して、といった努力と忍耐がいる。そこをクリアーできるかも鍵だ。現在中村氏は3000超のフォロワーを持っている。

 前出、DGインキュベーションの枝氏は、「フォロワーを増やすには、最初はお店に来た人にツイッターのホームページを書いたチラシを渡すことから始めたらどうか」と提案している。ホームページやブログがあるなら、リンクを張るのもいいだろう。

「ツイッター」などインターネットを使ったマーケティング研修に取り組んでいる、教材ドットコム代表・吉田喜彦氏は「ツイッターにはリツイート機能がありますから、多くのフォロワーを持っている人をフォロワーにすることが大事です」と語る。


埼玉県蕨市、蕨商工会議所でツイッターマーケティングセミナー開催後の教材ドットコム代表・吉田喜彦氏。

 最初の100フォローくらいまでは、「#followmejp」と本文のあとに半角をあけて入力して、相互フォローできる人にフォローしてもらうなどの工夫も必要だろう。吉田氏の感覚では300のフォロワーが最低限ないと、おそらく効果は薄いとのことだ。

 外部のサービスに、登録すれば機械的に7人ずつフォローしあえるサイトなどもあるが、吉田氏は「スパムが混じっている危険性があるので、やめておいたほうがいい」と忠告する。

「ツイッター」の良さはブログのコメント欄で時々起こる、炎上するケースがほとんどないこと。しかし、素性が確かな人ばかりのはずの「ミクシィ」のブログですらも炎上するのである。しつこく絡まないのが「ツイッター」文化だったのだが、今後はそういった文化を解さないユーザーが、大量に流れ込んでくる可能性がある。いかに良質のフォロワーを多く獲得できるかは、大きな課題だろう。

「ツイッターは確かにマーケティングに有効ですが、顧客層によってはアメーバーなうやミクシィボイスを使ったほうがいいケースもあります。しっかりお客さんを見てください」と吉田氏は強調した。

 1つ言えることはアメリカを始め海外では、日本のような携帯からネットにつながるiモードも写メールも普及していない。iPhoneが普及していく際に、それ向きのコンテンツとして「ツイッター」に注目が集まった面がある。

 パソコンや携帯電話からも利用できるが、iPhoneもしくはアンドロイドのような、スマートフォンでつぶやくのが現状ベターなのだろう。ただし、ハマってしまうと電池の消耗が激しいので、電源の確保はお忘れなく。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年2月1日取材