フードリンクレポート


バリエーション豊富な日本初の本格マッコリバー。
〜「となりの酒は甘い?」クロスボーダー化する国境なきマッコリ事情〜(3−1)

2010.2.16
世界的な和食ブームで着実に輸出量を伸ばしている日本酒。財務省の貿易統計によると2001年の約7000klが、2008年には約1.7倍の1万2151klに増加。アメリカ・欧州はもとより韓国では10年前の約50倍に相当する1529klが輸出。しかし、国内消費量の低迷が続いており、1975年の167万5000klをピークに、2007年には66万4000klと大きく落ち込んでいる。そんな中で、日本で着実に売り上げを伸ばしているのが韓国から輸入されているマッコリ。マッコリとは、日本でいうと「どぶろく」にあたる韓国の醸造酒。原料は米や小麦が多く、酵母によるアルコール発酵に、乳酸菌発酵を伴う。アルコール度数は5〜9度と飲みやすく、口当たりのよい酒として知られている。韓国国税庁の統計データによると、2008年のマッコリ(米や小麦を原料とする韓国のにごり酒)輸出量は年間5457klで、そのうち9割近くが日本への輸出だったという。日本では2004年頃から韓国のテレビドラマをきっかけにした「韓流ブーム」が起こり、その影響で韓国料理店が急増。不況の中でも客足の途絶えない、新宿・新大久保のコリアタウンを取材した。3回シリーズの第1回目。


日本で着実に売り上げを伸ばしているのが韓国から輸入されているマッコリ。

バリエーション豊富な日本初の本格マッコリバー

 韓国全土から仕入れ、約50種類以上を常備するマッコリバー「てじまぅる新宿店」。マッコリの味わいを分類するチャートがあり、自分好みのマッコリをみつけられるようになっている。


「てじまぅる新宿店」 店内。


分かりやすいよう、マッコリ人気ベスト10も表示。

「新大久保の本店に引き続き、新宿店をオープンしたのは2006年4月。当初は、平田牧場の豚をメインにした焼肉店に、プラスアルファでマッコリバーというスタイルを採用しました。開店当初は7種類くらいでしたが、マッコリがメディアで取り上げられ始めると、酒造メーカーや仕入れ業者の方が需要を見込み、市場がどんどん拡大していきましたね。現在、新宿店で50種類ちかく扱っていますが、韓国はもちろん日本酒の蔵元で作られたマッコリもあります」と話すのは島津常幸店長。「米を主原料にしたベーシックなものは老若男女問わずに好まれます。黒豆を原料にしたマッコリや梨やブドウの果汁を加えたフルーティなタイプは特に若い女性に人気です」。


フルーツ果汁を加えたマッコリは女性に人気。


焼肉・韓国料理店の情報サイトがプロデュースした「東京マッコリ」。

 韓国語で“豚の村”を意味する同店の看板メニューは韓国式豚焼肉。品種・飼料に対し徹底したこだわりを持つ山形県にある平田牧場の平牧純粋金華豚・平牧金華豚・平牧三元豚のみを使用している。


「平牧金華豚づくし」(2580円)。

 同店で人気なのが、「平牧純粋金華豚づくし」(2580円)。ヒレ、ロース、バラ、肩ロース、モモ、ウデの中からの4種盛り。サンチュ、ごまの葉、白髪ネギがセットで付く。さらに茹でた豚を山形の農場から仕入れた野菜で包むスタイルの「平牧三元豚ポッサム」(1580円)は、ヘルシーさが男女共に好評。平日は、近隣で働く会社員やOL、週末になると遠方からも客がやってくるという。


「平牧三元豚ポッサム」(2980円)+宮廷王様キムチ。


「平牧金華豚モツづくし」(1980円)。

「テーブル席とカウンター席があり、焼肉居酒屋であり、マッコリバーであるということで、お客様のニーズはさまざまです。26席の小さな店ですが、オペレーションは正直、あまり楽ではありません」と打ち明ける島津店長。ランチは980円、ディナーの客単価は平均4500円。「料理、お酒の種類、価格帯のバランスを考えていますが、ただ安ければいいというものではないと思います。顧客満足度を上げるため、店全体のサービスレベルの向上を目指しています」。


バーカウンター。


「てじまぅる 新宿店」島津店長。

 マッコリにはそれぞれ作り手の思いが込められている。その思いをきちんと伝えることもしていきたい、と島津店長は話す。マッコリの味の違いを楽しんで理解してもらうために、『利きマッコリ会』などのイベントを開くこともあるという。店長自らマッコリバーならではの付加価値を提供し、ブームを先導している店ともいえる。

 日本と韓国の『食』文化交流を加速させているマッコリ。一方では、南北の隠れた『親善酒』としても活躍している。


【取材・執筆】 水口 海(みずぐち うみ) 2010年2月4日執筆