・中国の国民カード「銀聯」導入を街ぐるみで進める試み始まる
観光立国を政策課題の1つとして掲げる日本だが、日本政府観光局によれば、2008年の外国人訪問者数は世界30位の約835万人。シンガポールの約778万人とそう大差なく、香港の約1732万人、タイの約1458万人にも大きく差をつけられている。
1位のフランスは約7930万人と日本の9.5倍も外国人が訪れている。2位米国580万人、3位スペイン573万人。以下、中国、イタリア、英国、ウクライナ、トルコ、ドイツ、ロシアと続く。日本にも魅力的な観光地が幾つもあると思うのだが、PR不足ではないのか。
もし、日本にせめてタイ並の人数が海外旅行に来てくれれば、外食需要ももっと増えて、活性化すると思うのである。日本はこれから人口減、少子高齢化が進んでくるが、外国人観光客が倍増すれば、外食産業の成長は可能ではないだろうか。
2009年の日本への外国人訪問者数は、推計値で約679万人と08年に比べても18.7%減と、世界不況の影響で大幅に落ち込んだ。その中で、中国からの訪問者数は約101万人で8月以降毎月プラスとなっており、トータルでも0.6%増とプラスとなった。
現状、訪日数は韓国が1位で約159万人。続いて台湾、中国、米国、香港、豪州、英国、タイ、カナダ、シンガポールの順になっている。
今まで中国人観光者は団体旅行でしかビザが発行されなかったが、2009年7月より個人にもビザが発行されるようになったのも追い風になった。個人観光ビザは世帯単位で発行され、不法滞在を排除するために年収25万元(約330万円)以上という目安があるが、北京市の約60万円、上海市の約50万円(「2007年上海市平均給与と増加率」による)に対しても、相当高収入の人たちだ。そのレベルのお金持ちが、中国には1億人以上いると言われている。
近いうちに中国人の訪日数が韓国人を抜いて1位になるのは確実だが、うまくリーチできれば巨大な需要を生み出すことができるだろう。いちよし証券経済研究所・鮫島誠一郎主任研究員によれば、「中国人は海外旅行先で欧米人の倍の約16万円を使う」とのことだから、家電製品やブランド品ばかりでなく、飲食も大いにチャンスがあるのだ。
その中国からの観光客の集客に、積極的に取り組んでいるのが歌舞伎町だ。
新宿には、京王プラザホテル、新宿ワシントンホテル、新宿プリンスホテルなど、中国人、台湾人、香港人など中国系の外国人がよく宿泊するホテルが多数ある。新宿には多くの百貨店があり、買物の利便性も高い。また、徒歩圏の大久保界隈にはアジア系の留学生などが多数住んでおり、歌舞伎町は中国人にとって親しみやすい雰囲気がある。
「中国人観光客を増やす手段として、中国人がショッピングでよく使う、銀聯カードの加盟店を増やそうと考えています。家電量販店、デパート、銀座のブランドショップは、銀聯カードを導入して中国人観光客誘致ができています。物販のカードで、飲食店は大きなチェーン店が一部導入しているだけですが、日本で銀聯カードを取り扱っている三井住友銀行に歌舞伎町商店街としてどうかと交渉しました。いろんな紆余曲折はありましたが、結果としてOKを出してもらいました」(歌舞伎町商店街振興組合事務局長・城克氏)。
家電量販店で取り扱いが広がっている銀聯カード。
ただし、店の審査は個々に行うということになった。日本の商店街では2番目の導入だそうだ。
現在のところ試験的に導入している段階だが、これが10店、20店と増えていくと、銀聯の本部のほうでアナウンスしてくれて、中国本土で歌舞伎町で銀聯カードが使えるということが知られてくれば、自然と集客ができてくると考えている。
なお、銀聯カードとは中国の銀行が発行している、デビットカード、クレジットカードで、中国人の国民カードと言われ、約13億枚が発行されているという。
日本でも家電量販店に行けば、多くの店で銀聯カードで決済できるようになっている。中国人を呼び込むには必須のカードと言えるだろう。
「銀聯カードで決済できるということは、日本語がほとんど話せない中国人に対して、ボッタクリのない安心な優良店だとアピールできます。そういった土台をつくるのが組合の役割だと考えています」(城氏)。