フードリンクレポート


中国人に接客させるのがベターだが、身振り手振りでも通用する。
〜不況打開へ真剣に取り組む、歌舞伎町の中国人集客作戦〜(4−3)

2010.3.2
リーマン・ショック以来の世界的な大不況で、海外から来日する観光客も減る中で、力強く成長する中国大陸からの観光客数は伸びている。給料・ボーナスが減って、外食を控える日本人に対して、今や経済力を持った中国人富裕層は欧米人の2倍のお金を海外旅行に使うと言われ、中国からの観光客をいかに取り込むかが、外食産業の課題の一つではないだろうか。この課題に先進的に取り組む歌舞伎町の各店を取材した。4回シリーズの第3回目。


「牛角」歌舞伎町店、店の入口に貼られた中国語の店舗案内。

中国人に接客させるのがベターだが、身振り手振りでも通用する

 歌舞伎町にある個々の飲食店はどういった中国人集客を行っているのだろうか。

 レインズインターナショナルでは、セントラルロードとその近くに、焼肉「牛角」、海鮮居酒屋「居漁屋 かまどか」を有するが、この両ブランドの歌舞伎町店では中国人など外国人の比率は1割ほどとかなり多い。


「牛角」歌舞伎町店 外観。

「特に宣伝はしていないのですが、歌舞伎町のマップに載っているので、それを見て来られる人が多いようです」と同社広報の河井繭さん。

 やはり歌舞伎町商店街振興組合の「歌舞伎町オフィシャルタウンマップ」の効果は絶大なようだ。ホテルで入手して、地図を見てやって来るという。

 宣伝めいたことでは、店の入口に「牛角の受付は地下1階です」と、中国語で張り紙をしているくらいだが、その効果もかなりある。やはり異国で母国語を見ると、ほっとするということはあるのだろう。中国人団体客も多く、添乗員が引率してくるのだが、有名チェーンだけに日本語のできる添乗員にはよく知られた店でもあるようだ。

「牛角」の大久保店では韓国人客が多く、海外でもアジアでは台湾、シンガポールに3店ずつ「牛角」はある。アジアの日本通の人にはかなり名が通っている。

 また、レインズでは中国人など外国人をアルバイトスタッフとして採用しているので、現場でのコミュニケーションは、基本的に彼らに任せている。

 歌舞伎町だけでなく、西新宿の店でも中国人の顧客は多いそうだ。大手のホテルが多い上に、「ヨドバシカメラ」、「ビックカメラ」、「ソフマップ」と家電量販店が多く、買物客が集まるので、デジカメなどを買った帰りに寄っていくわけだ。

 店に中国人スタッフがいない時は、日本人が身振り手振りで説明しているが、今までに際立ったトラブルもなく、最低限のコミュニケーションは通じているそうだ。

「牛角」では特に中国人だから出るメニューはなく、日本人と同じように食べて帰っていくとのこと。但し、居酒屋用途でなく食事をしに来ているので、お酒はあまり出ない。

「かまどか」では、やはり日本料理を象徴するものとして、中国人はすし、刺身は、ほとんどの人が注文するという。串焼も人気があり、中でも焼鳥は日本料理の代表格として、認知度が高く、中国人に好まれている。


セントラルロードの「かまどか」歌舞伎町1号店、中国人に人気の「本マグロのおつまみ握り」。中国人は日本で寿司をぜひ食べたいと考えている。


「かまどか」歌舞伎町1号店「炙り五種盛り」。中国人は焼鳥も好きだ。

 レインズの各店では、中国人のアルバイトスタッフの力を借りて、日本人しかいない時は中国人だからと特別に考えるのでなく普段どおりの丁寧な接客で、中国人観光客の信頼を得ていると言えよう。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年2月18日執筆