フードリンクレポート


20代女性とオジサンが共存するイタリアンでコケる。
〜かっこつけるな! お客様に喜ばれる地域一番店を目指せ〜(7−3)
大山 敏行氏
株式会社イーストン 専務取締役

2010.3.10
米国大好きの大山兄弟は、1986年5月に札幌ススキノに「アルズ・バー」をオープン。前衛的クラブとして一躍注目を浴びた。しかしもっとたくさんのお客様に喜んでもらいたいと業態を転換。現在、イーストンは「イタリア居酒屋 クッチーナ」「焼鳥ダイニング いただきコッコちゃん」など大衆向け31店舗を札幌、仙台、首都圏で展開している。弟で専務の大山敏行氏にインタビューした。7回シリーズの3回目。


「リストランテ ディ ホッカイドウ ミア・アンジェラ」(東京・霞ヶ関)。北海道食材を使ったリストランテ。

20代女性とオジサンが共存するイタリアンでコケる

「その内、イタリア料理がやりたくなり、たまたま銀座の名店で友人がコックとして8年間働いていました。戻ってこいよと口説いて辞めてもらい、3ヶ月イタリアに行き、トスカーナのリストランテで修行です。」

 そして、友人を料理長として、1991年9月に3店目「リストランテ チャチャチャ」をオープン。

「当時はイタリアレストランがなかった。ピザ店とスパゲティ店だけ。珍しくて、20代の女性が来てくれました。ところが、50代位のお客さまもいらっしゃる。友達と高いワインをバンバン開ける。20代から小さなお店だったので客層がちぐはぐで居心地がよくないと思われ、お客が遠のいていきました。内装は若い女の子向けに壁はピンクに、原色のお花畑の絵が描いてある。そんな店でオジサンが騒いでるので、若い子が来なくなる訳です。」

「最初は月400万円あった売上がどんどん落ちて、3ヶ月で150万円にまで。ある日、夜の売上ゼロです。頭にきて、料理長にどうなってるんだ、来ないならなんとかしろよと怒ったら、そんなこと言ったって来ないものは来ない、変てこな内装の店作ってよ、と言い返された。昨日は自分の存在がなくても誰も困らなかった、そんな思いをしたことがあるか、ずっと店の前で立ってた、と彼に言われました。」

「喧嘩は収まって、じゃあどうしようか、オヤジを取るか、若い人を取るか。実は客単価3500円と謳っているのに、コースが3800円からでした。それまでは自信があった。今までは自分の好きなことをやって儲かっていました。札幌では有名人だった。ところが3軒目は入らない。「まだこのスパゲティ屋あるんだ、よく潰れないね」と女の子が話すのを聞いて、悔しかった。自分たちがやりたいことで上手くいかないなら、お客さんから聞こう。プロダクトアウトからマーケットインに考え方が変わった瞬間です。」

「業界誌に2800円コースで起死回生という記事を目にしたので、そのまま導入。料理長はプライドが高いけど作ってくれた。グラスワインも350円にして2杯飲んでコースで3500円。チラシを作って皆で配りに行ったら、行列が出来て5百万円超えた。」


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年2月3日取材