フードリンクレポート


歌舞伎町のバーのメニューから生まれた高級スイーツ。
〜広がる「テキーラボール」。ナイト業態の活性剤となるか!〜(4−1)

2010.3.21
歌舞伎町のバーが開発した、テキーラ入りのゼリー菓子「テキーラボール」が、バー、キャバクラ、ホストクラブ、居酒屋などといった、飲みの業態でジワジワと浸透している。甘くて食べやすい食感から女性客にウケが良く、特に女性の集客に寄与しているという。歌舞伎町のナイト業態に、その導入効果を取材した。


グラスに盛られたテキーラボール。

歌舞伎町のバーのメニューから生まれた高級スイーツ

「テキーラボール」はテキーラ入りのゼリー状スイーツで、プニプニした食感と一口サイズの食べやすさで、特に若い女性に受けている。

 販路として特徴的なのは、バー、キャバクラ、ホストクラブなどといったナイト業態や居酒屋など、飲食店を中心に業務用として拡大していることで、販売元のテキーラボール代表取締役・秦健士氏によれば「代理店を通じて全国2000店にまで拡大している」とのこと。

 しかも、「品切れが続出するほどの人気」と嬉しい悲鳴を上げている。

 女性にウケがいいのは甘いフレーバーで味付けされていて、お酒を飲んでいる感じがしないからだが、調子に乗って幾つも食べていると、胃に達したあとで酔いがまわってくる。男性にとっては、女性を口説くためのカクテルに変わる新しいツールと言えるかもしれない。

 味は、ヨーグルト、オレンジ、カシス、ブルーベリー、イチゴの5種類だ。

 この「テキーラボール」の発祥の店ということで、歌舞伎町のバー「NASUKA(ナスカ)」を訪ねた。


「ナスカ」外観。


「ナスカ」店内。

「NASUKA」のオープンは2008年2月。バリアンテイストの落ち着ける雰囲気の隠れ家的なバーを目指したが、何か店の売りをつくりたいと考えて、08年7月から「テキーラボール」を本格的に出し始めたのだという。


ラブカ店内で手作りしている、最初の頃のレシピを使ったテキーラボール。

 秦氏からは「クラブシーンではテキーラをショットで飲むのがカッコいいとされていますが、強いお酒なので女の子は苦手です。そこで、甘くて口当たりの良い高級スイーツにできないかと試作を繰り返しました」と、開発の経緯が語られた。

 つまり、新しくできたバーの看板メニューをつくろうとしたわけだが、カクテルではなくて、下戸でも楽しめるようにスイーツとして食品で提供した発想が新しい。

「いかに密閉し、アルコールが飛ばないように煮沸消毒するか。そこが非常に難しかった」とのことだ。

 出し始めて3、4ヶ月すると口コミで「テキーラボール」への問い合わせが歌舞伎町の幾つかのお店から来るようになり、注文を受けて配達するようになった。

 さらに改良を重ねて現在のような工場生産に切り替えたのが09年11月から。ここで一気に店舗数が増えてきた。2000年4月からは代理店を通じての販売をスタートし、在庫を抱えるようになっている。

「NASUKA」はキャバクラやホストクラブのアフターで使われることが多い店で、ワイワイととても賑やか。ショットグラスに入った「テキーラボール」(500円)が飛び交うという。当初の狙いだった隠れ家とは違ってはきたが、「テキーラボール」のおかげで繁盛店となった。


ナスカはキャバクラやホストクラブのアフターでよく使われる。


ナスカでは1人でテキーラボールを50個食べたら、オリジナルTシャツプレゼント。

「ジャンケンをして負けた人が罰ゲームで食べるとか、景気付けに乾杯して皆で食べるとか、場を盛り上げるのに使ってもらっています」。

 席数は25席で、時間無制限の飲み放題コースが、男性5000円、女性3000円と料金はリーズナブルだ。営業時間は深夜1時〜朝9時。

 今では系列店として、「ノスカ」、「ワスカ」、「ラブカ」と計4店を1年ほどで展開するようになったが、これも「テキーラボール」が売れた効果の表れであろう。


【取材・執筆】  長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年3月15日執筆