フードリンクレポート


物件は築100年以上経つ、忘れるな。
〜ニューヨークでフツーの店を出そう!〜(7−6)

2010.3.25
米国ニューヨークの日本料理店は、リーマンショック後の不景気で滞米日本人が減ったため減少傾向。現在はマンハッタンに7〜8百店。内、日本人が経営する店はおよそ半分。しかし、今、日本で言うフツー店にニューヨーカーが足を運び始めた。小規模企業でも出店のチャンスが来た。7回シリーズの第6回目。


NYタイムズスクエア。

物件は築100年以上経つ、忘れるな

 ニューヨークは100年以上経つビルも多く、不動産を選ぶ際には注意が必要。

「設備は要チェック。ガスの容量が足りない場合があります。ガス会社に頼んでガスを引っ張って来るのに半年くらいかかります。店が出来てもガスが来てないことがよくある。 ガスが来て、認可が下りないと営業できない。前もってアプローチして半年前から準備することが必要です。日本人はそんなことを知らない方が多い。」

「空きテナントになっているが、レストランにしちゃいけない場所もあります。不動産屋はそれを飲食店に貸してしまう。そのまま作ると営業停止になるので、レストランが出来るように改装しなければならない。例えばスプリンクラーを付けるとか。それで通れば営業できる。ただし、それに1〜2年かかります。最初が肝心です。」

「私は個人オーナーが相手なので、彼らの財産を守ってあげたい。だから言いたいことを言います。聞かない人もいるけど。個人オーナーが成功して、2店、3店と増やして欲しい。」

「独立はパトロンがいないと難しいでしょう。初期投資5千万円で店が出来ても、1億円くらい必要です。工事費の倍が目安です。3ヶ月分の家賃や、食材仕入も信用が付くまで現金です。初めての場合は家賃のデポジットも必要になります。『jewel bako』の工事費用はわずか2千万円ですよ。」

「ニューヨークの昔のビルは地下があり、1階とセットで借ります。地下を倉庫にするためにはコンクリート打って冷蔵庫を入れてやり直さないといけない。そうすると、1階がまるまる店に使えます。」


店の前に地下室の入口がある。業者はそこに搬入する。

「役所に申請して工事に入れる訳ですが、申請が通るまで最短で2週間。店に問題がある場合もあるので2ヶ月見といた方が良い。やり直し工事も必要です。クライアントには長めに期間を言っておいて、早い出来た方が喜ばれます(笑)。予算が少なければそれなりに考えますよ。」

「現場が始まると朝から晩まで現場に付きます。いい加減ですから。無駄な動きがないように見張る。サボってるな、と思うと注意します。解体工事が始まると、開けてみてびっくりがあります。天井の支えが折れていたり、シロアリにくわれていたり。100年経っているので、その間ちょこちょこ改装されています。基礎工事にお金がかかる。店が繁盛すればビルの価値が上がるということで、工事費をオーナーに持ってもらったりします。ガスがなければ供給はオーナー持ちにしてもらえとか出来ます。早めにチェックが必要。」


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年3月15日執筆