フードリンクレポート


ナイト業界に愛され、深夜売上6割。
〜ナイトから一般人へ、「やぶや」から「フライの一八」で客層拡大〜(4−1)
横瀬 武夫氏  株式会社やぶやグループ 代表取締役

2010.4.12
名古屋料理居酒屋「やぶや」を名古屋で13店、東京で6店、仙台で1店展開するやぶやグループ。ナイト業界や芸能人に愛され、深夜に着実に収益を上げている。今年3/11オープンの新業態「フライの一八(イッパチ)」が好調で客層を一気に広げてきた。4回シリーズの第1回目。


「やぶや」六本木店にて、横瀬武夫氏。

ナイト業界に愛され、深夜売上6割

「やぶや」の創業は1994年。名古屋・今池の7坪の店。創業者の横瀬氏は、そこから毎年1〜2店ずつ積み上げて、16年後の今20店のチェーンにまで育て上げた。豚ホルモンの七輪焼き「とんちゃん焼き」、味噌カツ、手羽先といった名古屋メシが中心だが、名古屋料理専門店に拘っている訳ではない。

「名古屋メシを強調するのではなく、名古屋の居酒屋がここにある、こんな感じでやってますよ、と。たまたま入ったら、名古屋から来た居酒屋だからここは味噌料理多いのね、とお客様には思って欲しい。郷土料理店ではありません」と横瀬氏。名古屋メシを特徴としてアピールしている訳ではない。


外装も内装も赤が基調の「やぶや」六本木店。

 実は「やぶや」の人気は、ナイト業界で働く方々に支えられている。横瀬氏の前身は“メンパブ”(女性向けパブ)。その流れで1号店からナイト業界に愛されてきた。

「もともとメンパブを3年間経営していました。バブルの頃、名古屋でホストクラブがブームになって行列が出来た。意中のホストを出待ちする女の子も沢山いました。女の子は毎日ホストの顔を見たいが、お金がないので出待ちです。まめに電話してると顔を見せてくれるんだそうです。そこで、3千円で飲めて出入り自由の店作ったら、儲かるかもしれないと思いメンパブを始めました。先にお金をもらうんです。待ってる女の子達に3千円で飲み放題、出入り自由の店があるけど来る?とキャッチしてました。」

 そして28歳で居酒屋に転向し、「やぶや」を開業。朝型の居酒屋として特定の方々に人気となった。

「名古屋・今池で7坪の店です。当時は24時までと規制がうるさかった。『世界の山ちゃん』も営業時間を17〜24時に変更しました。その中で、ウチは朝4時までやった。どの店も早じまいになって、僕も遊びに行って遅くまでやる店が欲しいと思っていましたから。」


今池本店。

 そして、ナイト業界で働く方々や芸能人の間でなくてはならない店として愛され続けている。深夜また早朝の売上が6割を超える店もざら。名古屋では24時間営業店もある。東京1号店の並木橋店(03年12月開店)、そして溜池の2店ではサラリーマン客が多いが、昨年10月に六本木、12月に歌舞伎町に出店。東京のナイト市場を狙っている。次のターゲットは池袋や錦糸町だ。

 客単価3千円前後ながら、ナイト業界で人気のシャンパン“ドンぺリ”も扱っているのに驚かされる。

「ナイトの方も景気が悪いですが、楽観的な方が多いので、飲む食うは変わりません。売上は12〜3%は落ちましたが、そこからは落ちない。ナイトは同伴がんばろうかとか、いろんな知恵で頑張っているので、それくらいの落ち込みで止まっています。“ドンぺリ”はさすがに出ませんが、“モエ”は今もちょこちょこ出ます。」


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年3月19日取材