フードリンクレポート


松阪牛は狂牛病でもキラーコンテンツ。
〜大阪で“松阪牛”焼肉と言えば「M」、松阪牛ハンバーガー、ビーフサンドとヒット商品を連発〜(5−1)
巽 益章氏  株式会社ライトハウス 代表取締役社長

2010.4.18
「M」など松阪牛一頭買い焼肉店を8店展開するライトハウス。代表の巽氏はファッション業界から外食に参入した。枝肉を使い切るために始めた松阪牛100%「中之島バーガー」が好調で、第2弾「中之島ビーフサンド」は4月からJR新大阪駅でも発売される。5回シリーズの第1回目。


巽 益章氏。松阪肉牛協会員証を持つ。

松阪牛は狂牛病でもキラーコンテンツ

 巽氏はファッションブランドのマーケティングや「神戸コレクション」を手掛けるプロデュース会社を経て、2000年にブランドプロモーションとしてライトハウスを設立。その後2004年10月に飲食業界へと目を向け、松阪牛を武器に大阪福島駅前で「松阪牛焼肉M」1号店を出店した。

 ファッション業界からフード業界に新規参入をしたのは、「デザインも料理も同じくクリエイティブな仕事であると感じたから」と巽氏。とは言いながらも当時は日本でも狂牛病が発生し、食の安全への不安が高まり、飲食業界には逆風が吹き始めていた頃だった。だから「周囲の誰もが反対していました」と笑いながら振返る。


「松阪牛焼肉M」の店内には必ずシャンデリアが吊るされている。

 しかし「松阪牛の知名度と厳格な生産体制はキラーコンテンツになる」との判断から、あとは松阪牛の素材力を活かせるだけのマーケティング力さえあれば「絶対に成功する!」と自分に言い聞かせ、一頭単位で牛肉を仕入れて全量使い切るという大胆な手法を取り入れた焼肉業態を逆境のなかスタートをさせた。

 屋号には焼肉店らしからぬ「M」と名づけ、焼肉店には必須のアイテムのキムチは白菜や大根ではなく空心菜、ナムルはモヤシが成長しすぎたような感じのピーナッツホーンを使うなど大阪焼肉の聖地「鶴橋」では考えられないメニューを揃えるなど「ニンニクに頼らない焼肉店」をコンセプトに、タレではなくワサビと塩で食べる焼肉スタイルで勝負した。

 今ではこの業態を約5年間で大阪に6店舗と東京広尾に1店舗を構えるにまで拡大し、08年には大阪中之島への本社移転に伴い、松阪牛100%ハンバーガーをウリにした「Mデリ&バーガー」をスタートさせた。ご当地ブランドブームとも相まって「中之島」と名づけたハンバーガーはオープンから絶えることなくTVや新聞など多くのメディアで紹介され続けている。

 1年後の09年12月には「中之島ビーフサンド」を開発し、2010年4月からJR新大阪駅での販売がスタートした。これも松阪牛100%にこだわり、赤味肉と霜降りを何層にも重ねたミルフィーユ仕立てのビフカツが懐かしさと新鮮さを感じさせ話題になっている。


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年3月31日取材