フードリンクレポート


7坪のバーから始まった。
〜バーテンダーの強みは人脈。活かせば広い世界に羽ばたける〜(5−1)
小林 信秀氏  有限会社アズザクロウフライ 代表取締役

2010.4.25
東京・吉祥寺を中心に「Vision」などバー9店を直営するアズザクロウフライ。社名の“As the crow fly”とは、英作家ジェフリー・アーチャーの著書名。行商人から百貨店経営者に至る立身出世伝だ。小林氏はバーテンダーの人脈を活かせば世界に羽ばたける、バーテンダーは次のステップへのドアを開けてくれる職業だと言う。5回シリーズの第1回目。


小林 信秀氏。「Vin Santo」(恵比寿)にて。

7坪のバーから始まった

 小林氏は生まれた吉祥寺で15歳からバーテンダーとして働いた。現在35歳だが、既に外食経験は20年になる。20歳の時に起業。1号店「Vision」は吉祥寺のビル5階。開業資金250万円で7坪のバーを始めた。


吉祥寺の看板のない隠れ家 singlemalt bar vision。

「1Fに飲食店が入っているビルに交渉して無理やり入ったんです。本当は飲食店は不可の物件でしたが。バーは火を使わないし、音も出さないし、女の子も使わない。2号店『Vane』も西武新宿線武蔵関駅前の事務所ビル。6坪で家賃9万円。売上は120〜150万円ですが、40〜50万円は利益です」と小林氏。現在もこの技を活用している。

「今、バーの開業コンサルをやっていますが、この技をよく使っています。10件に1件はOKが出ますね。事務所なので敷金2ヶ月、礼金1ヶ月で入れます。開業コストを落とす技の1つです。カフェも使える手です」と小林氏。

 昨年1年間で10件以上のバーをプロデュースした。

「バーをやりたいとウチに来る4割は金を持ってない20代です。ノウハウがあって300〜400万円で作ってあげます。また、普段はサラリーマンで週末企業の方もいます。リーシング会社からバーを誘致したいという話も来ます。」

「バーを作るなら2パターン。成功確率の観点から、開業者が2000万以上用意できるなら、通常の個人出店の多くと、差別化が図れるので、イニシャルに可能な限り大きく突っ込ませる。それ以下なら、ボリュームゾーンに入ってしまうので、少しでも開業時はコストダウンをさせて、運転資金にまわすほうがベターという事ですね。」

 小林氏のバーが繁盛する理由の1つは、モルトウイスキーを全て1杯1千円で提供していること。全店ではない。

「モルトウイスキーが流行る前からですが、自分がモルトにハマって何でもかんでも1000円で売り始めました。他所のバーに行って、これ美味しいんですよと言われても高いものを売り付けようとしているようで凄く厭だったんです。じゃあ、ウチは一律1千円にしちゃえと。高いものを注文されるとウチは損をするシステムです。スタッフには原価率200%までOKにしています。だから、価格を気にしないでお勧めをしています。」

 吉祥寺visionだけで800種のモルトウイスキーを扱っている。「全店舗のモルトの数を数えたことは無いですが、千数百種類は所有していると思います」と小林氏。原価率は30%強、FLで50%台を維持している。


【取材・執筆】  安田 正明(やすだ まさあき) 2010年3月29日取材