フードリンクレポート


ぐるなびは月額3万円以上の有料会員にサービス提供。
〜「ぐるなび」vs「食べログ」、グルメサイトの王者はどっちだ?〜(5−1)

2010.4.28
飲食のポータルサイトとして著名なぐるなびと、最近急速にアクセスを伸ばしてきた食べログ。この2大サイトはぐるなびが飲食業者を支援する立場に立つのに対し、食べログが消費者のクチコミでお店を評価するというように方向性が正反対だ。両サイトの強みはどこで、飲食店としては販売促進にいかに活用できるのか。研究してみた。5回シリーズの第1回目。


ぐるなび本社

ぐるなびは月額3万円以上の有料会員にサービス提供

 ぐるなびの業績が好調だ。

 2010年3月期第3四半期の連結業績は、売上高178億2700万円(23.2%増)、営業利益34億2100万円(22.6%増)、経常利益(22.1%増)となっており、売り上げ、利益とも20%増を上回る高水準で推移している。

 普通は不況ともなれば、企業も店舗も販促費を減らすはずで、広告会社は苦戦を強いられるのだが、ぐるなびは不況知らずなのである。

 これについて、ぐるなび広報の我妻みづき氏は、「飲食店はお客さんが減っているからこそ、自分たちの強みを打ち出したいと考えています。お客さんにお店を選んでもらう選択肢の候補にしてもらいたいという、心理が働いているのではないか」と、ぐるなびのメディアパワーと飲食店からの信頼が、高まっている手ごたえを感じている。


銀座駅通路にある、ぐるなびメディアスポット。PCが置いてあり、飲食店を探せる。

 月間アクセス数は8.4億ページビュー、月間ユニークユーザー数は2000万人、登録ユーザー数は1月15日現在で685万人となっている。

 東京、大阪のような大都市で飲食店をよく使っている人で、ぐるなびを知らない人はいないと言っても過言ではない。

 ただし、地方では情報誌、フリーペーパーのような紙媒体のほうが強く、まだ浸透しきれていない課題もある。

 ぐるなびが、交通広告会社NKBの新規事業として設立されたのは1996年。インターネットの将来性を見込んでのニュービジネスだったという。当時はまだグーグルも設立されておらず、業者とユーザーを結ぶ双方向のネットサービスとして、画期的なものであった。

 それまでにも、駅に設置したタッチパネルでお店を選べるサービスなどを開発しており、蓄積したデータを有効活用できるのも、グルメ情報検索サイトに参入した理由の1つであった。

 現状の掲載店の数は全国約50万店。その中にはユーザーの利便性を考えて、市販のデータを写して載せている店もある。電話番号と住所のみが載っている店が、それに該当する。

 一方で周知のとおり、月額3万円以上、年間36万円以上に消費税を足した金額を支払った飲食店は、加盟店としてより詳しい情報が掲載できるなど、さまざまな優遇措置が取られる。

 その優遇措置の部分が、付加価値として集客にかかわってくるのだ。つまり、加盟店であるのとないのとでは、扱いに差がついてくる。年間36万円以上の負担は高すぎるといった批判はあるが、その差に効果があるから、ぐるなびの業績が伸びているのだ。

 最初にページをつくるのは基本的にぐるなび営業マンであるが、更新は各自の店舗スタッフが管理画面より行う。

 パソコンやホームページづくりの簡単な知識は必要だが、わからない点は、加盟店向けのセミナーである「ぐるなび大学」にて専門の講座があるので、そちらで学んで身につけてもらう仕組みになっている。たとえば、ホームページに掲載する効果的な写真を撮るノウハウが知りたければ、専門の講師に教えてもらえるといった具合だ。

 ぐるなびの場合は、営業マンがつくったホームページで消費者を集客するのはまず第一歩で、どうすればもっと集客が上がるのか、店舗側も「ぐるなび大学」などを通してスキルアップしていくことが重要な側面がある。

「有料である分だけ、本気になって使ってもらって、業績を伸ばしてほしいのです」と、我妻氏は、飲食店をサポートするメディアであるというスタンスを強調した。


【取材・執筆】  長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年4月23日執筆